リーンカーネーション 小学4年に戻ったおれ

Seabolt

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悲しいけど

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沢田さんが入院して数日が過ぎた。ある日、沢田さんが学校へやって来た。無事に退院できたらしい。だけど、彼女の異変に俺は気づいてしまった。

「沢田さん。おはよう」

隣に座った沢田さんに挨拶をした。

「おはよう」

ほとんど聞き取れないかすかな声…その声はかすれていた。そして、彼女の髪の毛はカツラだということがすぐにわかった。しかし、俺はそのことを気付かないふりをした。授業中、先生も何か知っているようで、沢田さんを当てることはなかった。その代わりに俺に集中砲火がやってきていた。

「佐藤、ちょっとくらい間違えろよ」

「先生、ここまで出来たらよくやったとほめるのが普通だと思うのですが」

「俺に逆らうとはいい根性だ。これを解いてみろ!!日本で二番目に高い山は」

「へ?」

「間違えたらケツバットだ」

「そんな~」

「覚悟はいいな」

「できてます。答えは北岳です」

「くそーー!!きさまー、日本で一番低い山は」

「そっち?」

3番目の山は奥穂高岳と分かっているのに、低い山ねぇ?

「えっと・・・・」

「わかるまい」

「うーん!!高安山」

「残念!!天保山でした」

「天保山?どこの山?」

「大阪にあるれっきとした山だ。人工だけと」

「はい?それてっ反則じゃないの?」

「残念でした。地図帳の大阪のページを見ろ!!」

「先生!!大阪にそんな山はありません」

「違う。大阪湾の方を見ろ」

「え?」

「ここだ」

そこには小さく海抜4.53mの山の記号があった。そして、先生は注目といって、一枚の紙を配り始めた。

「因みにこの地図にはちゃんと天保山とかいてあるだろ。佐藤、負けを認めろ」

「負けました」

先生は、授業を再開すると三宅が手を挙げた。彼は、俺がケツバットになっていないことを気にしている。更にケツバットの刑にされるのを楽しみにしているに違いない。

「先生!!」

「どうした三宅」

当てられた三宅は嬉々として勢いよく立ち上がった。その勢いがすごいものだったから、机ががたんと大きく揺れて、教科書や筆箱が前に座っていた沢田さんの方へ飛んだ。そして、彼女の髪に当たって、かつらが外れた。

一斉に沸き上がる驚愕の声に彼女は頭をおさている。俺は、あわてて彼女の頭を隠すように抱きしめいていた。

近くの女の子が慌ててカツラをひろって、沢田さんへかぶせるが髪の毛を整えることもできない状況。

「先生!!保健室に行きます」

「ああ…」

彼女は泣き崩れている。山田さん、岡田さん、井上さん、太田さんが俺を囲むようにサポートしている。泣き崩れている彼女に肩を貸して、教室を出た。みんなが

「沢田さん、大丈夫?」

と声を掛けている中、俺は、

「沢田さん。嫌いになったりしないから心配しないで」

俺の言葉は彼女の耳に届かなかった。保健室に着くと彼女は完全に泣いて、どうすることもできない。

「こんな私を見て失望したでしょう!!」

「失望なんかしない」

「うそよ!!髪の毛ないのよ!!え?」

俺は彼女を抱きしめた。

「俺を好きになった人を嫌いになんかならない」

「うそよ!!」

「俺はみんなと約束した。みんなを平等で好きになるとだから、髪の毛が抜けたくらいで嫌いになんかならない」

「うう・・うそよ。だったら、好きという証拠を…うっ…」

反論する彼女の唇を奪った。その瞬間、彼女は硬直した。

「わかった?」

「あ…うん」

こんなことをしてみんなの視線は痛いと思ったら、後ろでみんな泣いていた。そして、全員で俺と沢田さんを取り囲んで抱きしめてきた。

しばらくして、髪の毛を元に戻した沢田さんは笑顔を取り戻した。そして、数日後、彼女は亡くなった。

肌を刺す寒さがが体に凍みる日だった。寒空の下、彼女の葬式が執り行われた。そして、出棺の時、粉雪が舞い散っていた。

数日後、彼女のお母さんが学校にやってきてみんなにお礼を言っていた。

「このクラスのみんなに出会えて、彩子は幸せでした。本当にありがとうございました」

この日の放課後、俺は職員室へ呼び出された。それは、沢田さんのお母さんのたっての望みだった。

「彩子のことを好きになってくれてありがとうございました。再入院した時、彩子は佐藤君へありがとうと伝えてと言ってました。だから、そのことを伝えに来ました」

俺は、お母さんの前で泣いていた。涙を隠すことなく。悲しさに素直に従うしかなかった。
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