機動戦記 バイソン

Seabolt

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歓迎会

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 先の戦闘で思うようにならなかったことが、腹立たしいはるか、それを見越しているかのようなディカッシュの視線が気に食わない、無機質な船室で一人こもっていると、嫌味のように彼が呼んでいると、パイロットのアシュナーからドア越しに声をかけられた。
 アシュナー・・・彼は、国連の熟練パイロットだったが、彼自身は、バイソンには、乗ることが出来なかった。それは、連合の人手不足もあったのだが、適性検査の段階で、落ちという事実が、彼にはあった。それは、バイソンの機動力に対するテストと彼の年齢によるGへの限界があったと言うしかなかった。
 さらに、Gテストだけでなく、彼を苦しめてのは、イミテーションシステムだった。それは、直接脳へアクセスする仕組みだった。それに彼は耐えることが出来なかった。
 彼の忠告通りにディカッシュの元を訪れたはるか・・・嫌味を言われる完全にそう思っていた。それは、今までの仕官がそうだった。これでもかと体育会系の教練を振りかざしていたのだ!!そんな想像しか出来なかった彼女にディカッシュの日とことは、意外だった。

 「お疲れ様、大丈夫だったか?」

 言葉を失うはるか・・・これまでの戦闘で疲れきっていた心を打ちのめす一言が来る層思っていた彼女にとって、蓮の華が開いたといっていいほどの、快感が彼女を襲った。

 「だ・・・・大丈夫であります」

 「そうか・・・しばらく戦闘はないから、ゆっくりと休みなさい」

 さらに言葉を失うはるか・・・そんな様子を見てか・・・ディカッシュは、彼女が想像できない言葉をいった。

 「あと・・・歓迎会があるから」


ディカッシュ主催の歓迎会

当然、彼が戦艦フェルナンデスの艦長だったから、行ったもの。

 しかし、それは、地球連合の人々、特に難民になっている人々にとっては、これまで合ったことがないくらいの、もてなし、となっていた。それは、彼らがフェルナンデスに乗船した当初から感じていたことだったのだが、その歓迎会にまさっては、彼らを驚愕するような内容になっていた。
 それは、何よりも食事だった。これまでは、宇宙食で制限食といわれる最低限の人口食しか与えられていなかったのだった。人口食、それは、味気のないものだった。基本的には、満腹感を得られる炭酸入り(と言っても粉炭酸)と味のついた粉末の小麦、そして、人工肉とビタミンなどの補助食品といった粗末なものを避難コロニーの頃から当たり前として、食べてきたのだった。
 そんな彼らの前に現れた鶏肉や果物は、贅沢そのものだった。むさぼりつく彼ら・・・そんな中、冷ややかな眼で、目の前のものに手をつけない人物がいた。それこそ、バイソンのパイロットはるかだった・。
 
 「こんな虚言にだまされない・・・」

こんなわけの和からないことを言っているはるかを見つけたディカッシュ・・・

 「しっかり食べないと」

 やさしい言葉を言われるとは思っても見なかったはるかだった。しかし、時代は、更に難しい方向へ流れていくことになる。

目の前にご馳走・・・

 しかも、主催者であるディカッシュが自ら手渡された食材・・・だまされない・・・そう思っていたはるか・・・しかし、その味は、想像を超えるものだった・・・

 うますぎる・・・


 はじめて食べる鶏肉・・・それ自体だけで・・・うますぎる・・・これだけで・・人工肉だけで、生きている地球の全国民を見方にできるのでは?というくらいうまい・・・

 その衝撃に・・・はるかも・・・何もいえないでいた・・・

 そして・・・つい・・


 この食事で勝てますよ・・

 とディカッシュに言ってしまった・・けど。彼には何のことかわからないままだった・・・
  

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