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3月も半ばを過ぎた頃、おじいさまと蓮くんのご両親と蓮くんと5人でお茶をしていると、蓮くんが少し緊張した面持ちで口を開いた。
「澪、澪は今後どうしたい?大学に行きたいとか、将来こういう職業に就きたいとかある?」
「え、っと………」
将来のことなんて考えるだけ悲しくなるから考えないようにしていたため、何も出てこないことが恥ずかしくて思わず俯いた。
肩を蓮くんに抱き寄せられて、
「ごめんねまだ万全の体調じゃないのにこんなこと聞いて。でも、もうすぐ四月で、もし澪が高校卒業して、大学に行きたいなら高校3年生をやり直すとか、そういうのを決める時間がもうあまりないんだ。もしやりたいことがあるなら応援したいだけなんだよ。」と優しく言われた。
「俺としては結婚してこのままお家に入ってもらいたい気持ちなんだけどね。」
「蓮。」
嗜めるような声がして蓮くんがお父さまの方を向く。
「まだ澪音くんだってやりたい事が決まってないだけなんだから、その道を閉ざしちゃダメだろう。…高卒認定試験を受けたとしてもどのみち大学入るのは来年になってしまうし、それなら国立高校で3年生をやり直したらどうかと私達は考えていたんだけれど、澪音くんはどうかな?」
「国立、高校ですか…?」
「うん。そこならちゃんとαもしっかり教育をされているし、今まであまり同じ性別の子と関わりもなかっただろうけど、同じ性別の友達もできるし、蓮の大学からも近いから登下校は一緒に行けると思うよ。」
登下校は一緒と聞いて少しホッとするが、こんな状態で蓮くんのいない所で過ごせるのか不安になる。
でもどのみち4月から蓮くんは大学に行ってしまうし、と考えてうまく言葉にできずにいると、
「今すぐじゃなくていいんだよ。いずれこうしたいとか、目標とか夢みたいでいい。高校だって行くって言っておいて少し休んだっていいんだ。」
お父さまが優しく言葉を足してくれる。
「……僕、国立高校はずっと憧れていた場所で、行ってみたい気持ちはあるのですが、、ちょっと今は、怖いです。」
「わかった。じゃあ元気になったらにしようか。無理しなくていいからね、学校にはαが怖いこととか身体が丈夫じゃないことはちゃんと伝えておくから大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。」
お父さまの方を向いてお礼を言うと、お母さまが近づいてきた。
「触っても大丈夫?」
と聞いてくれた。
「はい。」
と答えると、そっと伸ばされた手が髪の毛を解くように頭を撫でられる。
「私たちの事、本当のお父さん、お母さんのように頼っていいのよ。それでいつか蓮と結婚してあげてくれたらもちろんとっても嬉しいけど、澪音くんが蓮のことが嫌だったら断ってもいいのよ。」
勿体無いほど優しい言葉がかけられてふるふると首を振った。
「そんな、僕なんて、、」
そう言いかけると蓮くんの抱き寄せる力が少し強くなった。
「俺が澪と結婚したいんだよ。」
「そうよ。自分を卑下しないで。あなたはとっても優しくてひたむきな子だってお兄さんからも聞いているわ。」
兄がそんな風に僕のことを表現してくれているなんて知らなかった。
「、ありごとう、ございます。」
と言うと、お母さまは微笑んで僕の頭から手を離した。
「じゃあ国立高校に通う方向で連絡しておくから、澪音くんのペースで通ってみなさい。」
とおじいさまが締めて話し合いは終わった。
部屋に戻ると蓮くんが急にぎゅっと抱きついてきた。
蓮くんから抱きついてくるのが珍しくておずおずと背中に手を回す。
「ねえ、澪、俺本気で結婚したいんだけど、、籍だけ入れよう?…指輪はちょっと高いもの買えないけど、働いたら必ずちゃんとしたもの買いに行くから。」
「…僕、高価な指輪は要らないけど、、蓮くんは後悔しない?蓮くんは優しいから、可哀想な僕を放っておけなかっただけかもしれない。」
「違うよ。澪が好きなんだ。今までこんなにも手に入れたいって思う人は居なかったんだ。…こんなこと言うと恥ずかしいけど、俺、不安なんだ。」
蓮くんから不安なんて言葉が出てくると思わなくて首を傾げる。
「不安?」
「うん。澪と日中離れるのも不安だし、ちゃんと管理されてるってわかっててもαの居るところに澪を送り込むのが不安なんだ。結婚して苗字変えて、指輪して行ったら少し牽制できるかなと思って……だから、お願い。」
蓮くんの熱意に負けてつい、
「わかった。」と答えてしまった。
どう説得したのか婚姻届の証人欄にお父さまと兄のサインをもらってきて、あとは澪だけだからと言われて名前を記入した。
そのまま蓮くんは役所に提出し、指輪を買って帰ってきた。
いつの間に測ったのかサイズはぴったりだった。
調子も戻ってきたし、田中先生にも学校に行ってもいいよとお墨付きをもらったので、とりあえず4月から通ってみることになった。
大学より先に高校の入学式兼始業式があるので蓮くんは付き添いに来てくれるらしい。
最初から1人でっていうのはちょっと怖いなと思っていたから少し安心した。
「澪、澪は今後どうしたい?大学に行きたいとか、将来こういう職業に就きたいとかある?」
「え、っと………」
将来のことなんて考えるだけ悲しくなるから考えないようにしていたため、何も出てこないことが恥ずかしくて思わず俯いた。
肩を蓮くんに抱き寄せられて、
「ごめんねまだ万全の体調じゃないのにこんなこと聞いて。でも、もうすぐ四月で、もし澪が高校卒業して、大学に行きたいなら高校3年生をやり直すとか、そういうのを決める時間がもうあまりないんだ。もしやりたいことがあるなら応援したいだけなんだよ。」と優しく言われた。
「俺としては結婚してこのままお家に入ってもらいたい気持ちなんだけどね。」
「蓮。」
嗜めるような声がして蓮くんがお父さまの方を向く。
「まだ澪音くんだってやりたい事が決まってないだけなんだから、その道を閉ざしちゃダメだろう。…高卒認定試験を受けたとしてもどのみち大学入るのは来年になってしまうし、それなら国立高校で3年生をやり直したらどうかと私達は考えていたんだけれど、澪音くんはどうかな?」
「国立、高校ですか…?」
「うん。そこならちゃんとαもしっかり教育をされているし、今まであまり同じ性別の子と関わりもなかっただろうけど、同じ性別の友達もできるし、蓮の大学からも近いから登下校は一緒に行けると思うよ。」
登下校は一緒と聞いて少しホッとするが、こんな状態で蓮くんのいない所で過ごせるのか不安になる。
でもどのみち4月から蓮くんは大学に行ってしまうし、と考えてうまく言葉にできずにいると、
「今すぐじゃなくていいんだよ。いずれこうしたいとか、目標とか夢みたいでいい。高校だって行くって言っておいて少し休んだっていいんだ。」
お父さまが優しく言葉を足してくれる。
「……僕、国立高校はずっと憧れていた場所で、行ってみたい気持ちはあるのですが、、ちょっと今は、怖いです。」
「わかった。じゃあ元気になったらにしようか。無理しなくていいからね、学校にはαが怖いこととか身体が丈夫じゃないことはちゃんと伝えておくから大丈夫だよ。」
「ありがとうございます。」
お父さまの方を向いてお礼を言うと、お母さまが近づいてきた。
「触っても大丈夫?」
と聞いてくれた。
「はい。」
と答えると、そっと伸ばされた手が髪の毛を解くように頭を撫でられる。
「私たちの事、本当のお父さん、お母さんのように頼っていいのよ。それでいつか蓮と結婚してあげてくれたらもちろんとっても嬉しいけど、澪音くんが蓮のことが嫌だったら断ってもいいのよ。」
勿体無いほど優しい言葉がかけられてふるふると首を振った。
「そんな、僕なんて、、」
そう言いかけると蓮くんの抱き寄せる力が少し強くなった。
「俺が澪と結婚したいんだよ。」
「そうよ。自分を卑下しないで。あなたはとっても優しくてひたむきな子だってお兄さんからも聞いているわ。」
兄がそんな風に僕のことを表現してくれているなんて知らなかった。
「、ありごとう、ございます。」
と言うと、お母さまは微笑んで僕の頭から手を離した。
「じゃあ国立高校に通う方向で連絡しておくから、澪音くんのペースで通ってみなさい。」
とおじいさまが締めて話し合いは終わった。
部屋に戻ると蓮くんが急にぎゅっと抱きついてきた。
蓮くんから抱きついてくるのが珍しくておずおずと背中に手を回す。
「ねえ、澪、俺本気で結婚したいんだけど、、籍だけ入れよう?…指輪はちょっと高いもの買えないけど、働いたら必ずちゃんとしたもの買いに行くから。」
「…僕、高価な指輪は要らないけど、、蓮くんは後悔しない?蓮くんは優しいから、可哀想な僕を放っておけなかっただけかもしれない。」
「違うよ。澪が好きなんだ。今までこんなにも手に入れたいって思う人は居なかったんだ。…こんなこと言うと恥ずかしいけど、俺、不安なんだ。」
蓮くんから不安なんて言葉が出てくると思わなくて首を傾げる。
「不安?」
「うん。澪と日中離れるのも不安だし、ちゃんと管理されてるってわかっててもαの居るところに澪を送り込むのが不安なんだ。結婚して苗字変えて、指輪して行ったら少し牽制できるかなと思って……だから、お願い。」
蓮くんの熱意に負けてつい、
「わかった。」と答えてしまった。
どう説得したのか婚姻届の証人欄にお父さまと兄のサインをもらってきて、あとは澪だけだからと言われて名前を記入した。
そのまま蓮くんは役所に提出し、指輪を買って帰ってきた。
いつの間に測ったのかサイズはぴったりだった。
調子も戻ってきたし、田中先生にも学校に行ってもいいよとお墨付きをもらったので、とりあえず4月から通ってみることになった。
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最初から1人でっていうのはちょっと怖いなと思っていたから少し安心した。
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