積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

文字の大きさ
51 / 51

36

しおりを挟む
考えないようにしていたって事実がなくなるわけじゃない。

みんなが普通に受け入れてくれて、蓮くんが優しく僕が辛い目にあった事考えなくていいように包んでくれていて。
だから僕も極力考えないように、何もなかったかのように過ごしていたけど、体は覚えている。

ヒートが始まった時は、欲しい、気持ちいい、イキたい、噛んでほしいだけ頭にあって蓮くんのフェロモンに満たされてた。


でも
いつからか蓮くんが遠くて分からなくて、得体の知れないほどの快楽が怖くなった。

気持ちよくて怖くて頭の中がぐちゃぐちゃで、誰といるのかもよく分からなくて怖い。
何からくる震えなのか、体がガクガクと震えて意識がどこかに行ってしまいそうで必死に何かを握りしめる。


カチカチと首輪が噛まれる感覚が伝わる。
拒否したいのに、体はうまく動かず、喋れもしない。

快楽から漏れる喘ぎで息も上手くできなくて苦しい。

急にナカで何かが弾ける感覚に鳥肌を覚える。


今日の相手は誰だったんだっけ…
僕って薬飲んだ…?

αの精を受けたからか少し冷静になった頭が動き出すけど、怖いのと強制的な快楽による痙攣で体が動かない。

怖くてぎゅっと閉じた目を開けることもできない。
固まったまま荒い呼吸を繰り返していると、そっと手が体に触れて優しい声がした。
「ごめん、澪…大丈夫?」
あぁ、蓮くんだと思ったけれど、体の力が抜けず、反応ができない。

「ごめんね、ごめん澪。俺本当に…ごめん。」

蓮くんのフェロモンに包まれて、ぎゅっと抱き寄せられる。
どれくらいの時間そうしていたか、徐々に落ち着きを取り戻して体の力が抜けていく。

「…澪?」
ゆっくり目を開けると、心配そうに顔を覗き込む蓮くんと目があった。

「良かった。澪、ごめん俺、我慢できなくて…怖かったよね?」
「…途中から、よく分からなくなって…ごめんね、混乱しちゃった。」
「澪は悪くない。ちゃんと話しておかなかったのに急にこんな風になって、本当にごめん。」
蓮くんがぎゅっと抱きしめてくれるのを、手肩を押すように体を離した。

「ごめんね、僕、、、汚い。」
蓮くんの相手に見合うような綺麗な体だったら良かったのに。
抱かれていたって他の人とのことを思い出してしまうような汚れた記憶が染み付いた体なんて、蓮くんに相応しくない。

「汚くなんてないよ。澪はいつも真っ直ぐで綺麗だよ。澪は悪くないし、汚くもない。おれが悪いの。」
蓮くんがそう言って一寸の迷いもなくなくぎゅっと抱きしめてくれて、安心したのか、意識が遠のいていった。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

起きたらオメガバースの世界になっていました

さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。 しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...