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第二章
夜の世界 3
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屋根の上は、時計塔になっていた。
コチコチと大きな音を立てて木でできた歯車が回り、時を刻む。時間になれば自動的に鐘を鳴らす。
周りを見渡したけれど、歯車以外に動くものを見つけることはできなかった。少し軋む木製の床が、歩く度にキュッキュッと鳴る。
時間になったら……自動的に鳴る鐘……。
でもこんな時間に。
ぼんやりと、嫌なことを思いついてしまい、そんな考えを振り払う。
そんなわけない。
時計塔からは外が見える。外はやはり夜で、星が瞬いている。遠くまで見渡せる。どこまでいっても、夜に見える。
でもまさか。
まさか、今が鐘が鳴るべき時間だなんて。
いつもと同じ時間に鳴っただなんて。
朝が来ないなんて。
そんなこと、ありえない。
階段を降りる。
少女が段を一段ずつ降りるのに合わせて、ランタンが揺れた。
もし、本当にそんなことになったのだとしたら、街が大騒ぎになるはずだ。
まだ、外は静かだ。
ありえない。ありえない。
目の前が真っ白になる。
嫌な考えはどこにも行ってくれない。頭の中がグルグルとして、涙に変わって溢れてきそうだ。
教会を出て、広場へと向かう。
誰もいない街。もちろん夜だからだ。
夜には、皆が寝ているのだから、静かで当然だ。
でも。
少女は、本物の夜の街の日常など知りはしなかった。そんな夜遅くに街へ出たことなんてない。
バーだってあるのに、こんなに静かなのは本当にあり得るのだろうか。
怖くて怖くて仕方がない。
だって、あの魔女は、皆のことを*美味しそう*だと言っていた。
いくら魔女だって、人間を食べるだなんて。本当に食べるだなんて。
「…………」
少女は、一軒の家の前に居た。その家は店舗になっており、入口は広い。その入口からずっと、色とりどりの花が飾られている。
そう、ここは花屋だ。
ここは少女がよくお使いを頼まれていた花屋で、アクセサリーを注文していた花屋で、大切な花冠を作ってくれた花屋で、……友達のロベリアが住む家だ。
少女がドアをノックすると、コンコンと小気味良い音がした。暖かな木でできた、皆を優しく受け入れてくれるドア。
ドアに手をかけると、ロベリアが言っていた通り、開いていた。いつでも開いていると言ってくれた、ロベリア。
「……お邪魔します」
緊張しながら、家の中に声をかける。
「お邪魔します!」
今度は出来るだけ大きな声を出した。
今にも、階段を降りて来たロベリアが「どうしたの?」と声をかけてきそうな空気だったが、実際には物音ひとつもない。
恐る恐る、部屋を一つずつ見ていく。1階には、リビング、台所、両親のベッド、小さな温室。ここの花屋は郊外に大きな温室を持っていたが、小さな花はここで育てていたらしい。2階には、3部屋あり、一つは勉強部屋のような大きなテーブルのある部屋、一つはベッドが2つある小さな兄妹の部屋のようだった。そして、最後の一つ。
ドアを開ける。
コチコチと大きな音を立てて木でできた歯車が回り、時を刻む。時間になれば自動的に鐘を鳴らす。
周りを見渡したけれど、歯車以外に動くものを見つけることはできなかった。少し軋む木製の床が、歩く度にキュッキュッと鳴る。
時間になったら……自動的に鳴る鐘……。
でもこんな時間に。
ぼんやりと、嫌なことを思いついてしまい、そんな考えを振り払う。
そんなわけない。
時計塔からは外が見える。外はやはり夜で、星が瞬いている。遠くまで見渡せる。どこまでいっても、夜に見える。
でもまさか。
まさか、今が鐘が鳴るべき時間だなんて。
いつもと同じ時間に鳴っただなんて。
朝が来ないなんて。
そんなこと、ありえない。
階段を降りる。
少女が段を一段ずつ降りるのに合わせて、ランタンが揺れた。
もし、本当にそんなことになったのだとしたら、街が大騒ぎになるはずだ。
まだ、外は静かだ。
ありえない。ありえない。
目の前が真っ白になる。
嫌な考えはどこにも行ってくれない。頭の中がグルグルとして、涙に変わって溢れてきそうだ。
教会を出て、広場へと向かう。
誰もいない街。もちろん夜だからだ。
夜には、皆が寝ているのだから、静かで当然だ。
でも。
少女は、本物の夜の街の日常など知りはしなかった。そんな夜遅くに街へ出たことなんてない。
バーだってあるのに、こんなに静かなのは本当にあり得るのだろうか。
怖くて怖くて仕方がない。
だって、あの魔女は、皆のことを*美味しそう*だと言っていた。
いくら魔女だって、人間を食べるだなんて。本当に食べるだなんて。
「…………」
少女は、一軒の家の前に居た。その家は店舗になっており、入口は広い。その入口からずっと、色とりどりの花が飾られている。
そう、ここは花屋だ。
ここは少女がよくお使いを頼まれていた花屋で、アクセサリーを注文していた花屋で、大切な花冠を作ってくれた花屋で、……友達のロベリアが住む家だ。
少女がドアをノックすると、コンコンと小気味良い音がした。暖かな木でできた、皆を優しく受け入れてくれるドア。
ドアに手をかけると、ロベリアが言っていた通り、開いていた。いつでも開いていると言ってくれた、ロベリア。
「……お邪魔します」
緊張しながら、家の中に声をかける。
「お邪魔します!」
今度は出来るだけ大きな声を出した。
今にも、階段を降りて来たロベリアが「どうしたの?」と声をかけてきそうな空気だったが、実際には物音ひとつもない。
恐る恐る、部屋を一つずつ見ていく。1階には、リビング、台所、両親のベッド、小さな温室。ここの花屋は郊外に大きな温室を持っていたが、小さな花はここで育てていたらしい。2階には、3部屋あり、一つは勉強部屋のような大きなテーブルのある部屋、一つはベッドが2つある小さな兄妹の部屋のようだった。そして、最後の一つ。
ドアを開ける。
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