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205 絶望の宴(6)
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ナーナはハッと気がついた。
そこで気づく。どうやら、私は気を失っていたらしい。
全てが夢だったらいいのに。
そう思って起き上がったけれど、見知らぬ場所で愕然とする。
夢ではなかった。
あの心臓を、口に押し込められた事も。その心臓が、私の中に収まっている事も。
胸の辺りをギュッと掴む。
私だって、伊達に司祭の娘なんてしているわけじゃない。
知っている。
魔女の命が落ちる場所に、どう巣食うと言われているのか。
勝手に出てくるものではない。
魔女の命は徐々に私の体内に巣食うのだ。
根を広げ、一体化する。
時間が経てば経つほど、どうにも出来なくなるものなのだ。
……かと言って、口の中に手を入れるわけにはいかない。
ナーナは一つ息を吐いた。
これでも司祭の娘。
この世界を魔女から守る為ならば、多少の犠牲も厭わない。
私は、死ななければいけない。
思った途端、頬を涙がこぼれ落ちた。
頭の中を巡っていく。父、母の姿。そして、教会のみんな。……サラ。
サラは私の事で泣かせてしまった。
このまま私が死んだら、サラはこの先どこまでもある人生を、何を思って生きていくのだろう。
けれど。
この身を犠牲にすれば。
この世界は救われる。
決心したからには、怖くならないうちに行動に移してしまおうと周りを見渡す。
何もない部屋だ。
ベッドと窓だけの簡素な部屋。
部屋はせいぜい2階だろうか。
ここから落ちたところで、魔女の命をどうこう出来るとは思えない。
私は、責任を持って魔女の命を貫かなくてはならないのに。
そこでふと気付く。
自死させない為の部屋なのだ。
ペーパーナイフも、花瓶もポットもない。
刃物となり得る物は何も。
だから、自室に運ばれなかった。
サラの配慮なのだ。
それに思い当たると、余計に苦しくなった。
腹の辺りを抑える。
わかる。
自分の身の中に、自分ではない誰かの鼓動がある。
少しでも気を抜いてしまえば、こちらが飲み込まれてしまいそうな鼓動。
恐怖の塊。
怖い。
怖い。
怖い。
早く死んでしまいたい。
そこへ、カチャリとドアが開く。
パッと顔を上げると、サラが顔を覗かせた。
「体調はどう?」
いつもと同じ口調。
けれど、声はどことなく強張っている。緊張しているのがわかる。
「大丈夫よ」
こちらも、出来るだけ装おう。
ちゃんと、この身にナイフを突き立てるチャンスが来るまで。
そんな、演技まがいのものが始まった瞬間、サラが膝からくずおれた。
「サラ……?」
「ひ……っ、ぐ……っ」
サラは泣いていた。
「私がなんとかするわ……!必ずなんとかする。……だから諦めないで」
ナーナは、ぎゅっと布団を掴んだ。
目をつむる。
必死で涙を堪えたけれど、その頬には止まらない涙が流れた。
ずるいわ。
そんなこと言われたら……死ぬのがもっと、もっと怖くなるじゃない。
「サ……ラ…………」
やっと絞り出したのは、名前ただひとつ。
「ひ……っ」
ナーナは布団に顔を埋め、声を殺して泣く事しか、もう出来そうにはなかった。
◇◇◇◇◇
こちらの二人も希望は持てそうにないですね……。
そこで気づく。どうやら、私は気を失っていたらしい。
全てが夢だったらいいのに。
そう思って起き上がったけれど、見知らぬ場所で愕然とする。
夢ではなかった。
あの心臓を、口に押し込められた事も。その心臓が、私の中に収まっている事も。
胸の辺りをギュッと掴む。
私だって、伊達に司祭の娘なんてしているわけじゃない。
知っている。
魔女の命が落ちる場所に、どう巣食うと言われているのか。
勝手に出てくるものではない。
魔女の命は徐々に私の体内に巣食うのだ。
根を広げ、一体化する。
時間が経てば経つほど、どうにも出来なくなるものなのだ。
……かと言って、口の中に手を入れるわけにはいかない。
ナーナは一つ息を吐いた。
これでも司祭の娘。
この世界を魔女から守る為ならば、多少の犠牲も厭わない。
私は、死ななければいけない。
思った途端、頬を涙がこぼれ落ちた。
頭の中を巡っていく。父、母の姿。そして、教会のみんな。……サラ。
サラは私の事で泣かせてしまった。
このまま私が死んだら、サラはこの先どこまでもある人生を、何を思って生きていくのだろう。
けれど。
この身を犠牲にすれば。
この世界は救われる。
決心したからには、怖くならないうちに行動に移してしまおうと周りを見渡す。
何もない部屋だ。
ベッドと窓だけの簡素な部屋。
部屋はせいぜい2階だろうか。
ここから落ちたところで、魔女の命をどうこう出来るとは思えない。
私は、責任を持って魔女の命を貫かなくてはならないのに。
そこでふと気付く。
自死させない為の部屋なのだ。
ペーパーナイフも、花瓶もポットもない。
刃物となり得る物は何も。
だから、自室に運ばれなかった。
サラの配慮なのだ。
それに思い当たると、余計に苦しくなった。
腹の辺りを抑える。
わかる。
自分の身の中に、自分ではない誰かの鼓動がある。
少しでも気を抜いてしまえば、こちらが飲み込まれてしまいそうな鼓動。
恐怖の塊。
怖い。
怖い。
怖い。
早く死んでしまいたい。
そこへ、カチャリとドアが開く。
パッと顔を上げると、サラが顔を覗かせた。
「体調はどう?」
いつもと同じ口調。
けれど、声はどことなく強張っている。緊張しているのがわかる。
「大丈夫よ」
こちらも、出来るだけ装おう。
ちゃんと、この身にナイフを突き立てるチャンスが来るまで。
そんな、演技まがいのものが始まった瞬間、サラが膝からくずおれた。
「サラ……?」
「ひ……っ、ぐ……っ」
サラは泣いていた。
「私がなんとかするわ……!必ずなんとかする。……だから諦めないで」
ナーナは、ぎゅっと布団を掴んだ。
目をつむる。
必死で涙を堪えたけれど、その頬には止まらない涙が流れた。
ずるいわ。
そんなこと言われたら……死ぬのがもっと、もっと怖くなるじゃない。
「サ……ラ…………」
やっと絞り出したのは、名前ただひとつ。
「ひ……っ」
ナーナは布団に顔を埋め、声を殺して泣く事しか、もう出来そうにはなかった。
◇◇◇◇◇
こちらの二人も希望は持てそうにないですね……。
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