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首都へ戻っても、ナーナの状況は変わる事がなかった。
ナーナは落ち着いたようで自宅に戻っていたけれど、自室から出てこない日々が続いていた。
サラはそんなナーナが心配なのか、いつも以上にナーナに付き添っているようだった。
火の教会に顔を出すと、
「何か方法はあったか!?」
飛びかかって来たのはルヴァだった。
その期待の顔を曇らせるのが心苦しい。
「いや……何も」
「そうか……」
ルヴァも、ナーナとサラが心配なのだろう。
「やっぱり、このまま心臓を潰した方がいいんじゃないか?」
そう言うのも、無理はなかった。
バン!
そこで、扉を開けて入って来たのは、サラだった。
「ダメよ!」
精霊はやつれたりしない。
食事を栄養源としないこともあり、弱る事がないのだ。
けれど、その火の精霊はどうしても疲れて見えた。
「調べれば調べるほど……、ナーナの中に魔女の細胞を飛び散らせるのはまずいってわかる。それは……やっぱり出来ない」
「けど、このままだと心臓がナーナの中に食い込んで、結局同じ事になる」
「けどそれまでは!」
バン!とサラが扉を叩くと、その手から炎が舞った。
「時間があるはずよ……」
そこからは、誰も何も言えなかった。
街は、半壊していた。
精霊達の力で火は出なかったものの、家々を壊しながら歩かれた事には変わりない。
ただ、あの祭りの時間を取り戻すかのように、壊れた店の前には出店が出揃い、客引きの声がこだましていた。
「ここは、賑やかなんだな」
ユキナリは、久しぶりにほっと息をつけた気がした。実際に、あの事件以来、気を張ることばかりだった。
「おう!兄ちゃん!」
「へ?」
突然、親しげな声に呼び止められて振り向く。
そこにあったのは、魚のフライの出店だった。
店にいるのは、どこかで見たことのある料理人だ。
「ヤス、さん?」
それは、山香派の料亭を営んでいる料理人、ヤスだった。
確か、港町で店を営んでいたはずだが?
「祭りに来たんですか?」
「ああ、年に一度の祭り、首都に店を出しにくるやつも多いんだぜ。まあ、今年はこんな事になっちまったから、いつもみたいには売れないけどな」
ニカッと笑う料理人は、やはり頼りになる笑顔だった。
こちらが何も言わずとも、ヤスさんは串に刺さった魚のフライを出してくれる。
それを受け取ると、通りの向かいにある出店の店主達から、ギン!と睨まれる気配がした。チラリと見ると、向こうも魚のフライの出店だ。海塩派の出店らしい。なるほど?
「美味しそうですね。いくら……」
「いやぁ、やるよやるよ」
「え、でも」
問答の間にも、マルとハニトラはそれぞれすでに魚のフライを口に入れてしまっている。
マルの「ワフワフ!」と熱そうに頬張る姿と、ハニトラの身体へと取り込む姿で魚のフライは跡形もなく消え去ってしまった。
「とまあ、こんな風にな、タダ同然で配り歩いてるってわけよ。状況が状況だからなぁ」
ユキナリはへへっと笑う。
「ありがとうございます」
そういえば、あの時は海で溺れて……、ハニトラの髪で気道確保してもらったんだったな。
ユキナリは、味を噛み締めるようにムニュムニュしているスライム状態のハニトラを眺めるのだった。
◇◇◇◇◇
懐かしの人登場、ですね。
ナーナは落ち着いたようで自宅に戻っていたけれど、自室から出てこない日々が続いていた。
サラはそんなナーナが心配なのか、いつも以上にナーナに付き添っているようだった。
火の教会に顔を出すと、
「何か方法はあったか!?」
飛びかかって来たのはルヴァだった。
その期待の顔を曇らせるのが心苦しい。
「いや……何も」
「そうか……」
ルヴァも、ナーナとサラが心配なのだろう。
「やっぱり、このまま心臓を潰した方がいいんじゃないか?」
そう言うのも、無理はなかった。
バン!
そこで、扉を開けて入って来たのは、サラだった。
「ダメよ!」
精霊はやつれたりしない。
食事を栄養源としないこともあり、弱る事がないのだ。
けれど、その火の精霊はどうしても疲れて見えた。
「調べれば調べるほど……、ナーナの中に魔女の細胞を飛び散らせるのはまずいってわかる。それは……やっぱり出来ない」
「けど、このままだと心臓がナーナの中に食い込んで、結局同じ事になる」
「けどそれまでは!」
バン!とサラが扉を叩くと、その手から炎が舞った。
「時間があるはずよ……」
そこからは、誰も何も言えなかった。
街は、半壊していた。
精霊達の力で火は出なかったものの、家々を壊しながら歩かれた事には変わりない。
ただ、あの祭りの時間を取り戻すかのように、壊れた店の前には出店が出揃い、客引きの声がこだましていた。
「ここは、賑やかなんだな」
ユキナリは、久しぶりにほっと息をつけた気がした。実際に、あの事件以来、気を張ることばかりだった。
「おう!兄ちゃん!」
「へ?」
突然、親しげな声に呼び止められて振り向く。
そこにあったのは、魚のフライの出店だった。
店にいるのは、どこかで見たことのある料理人だ。
「ヤス、さん?」
それは、山香派の料亭を営んでいる料理人、ヤスだった。
確か、港町で店を営んでいたはずだが?
「祭りに来たんですか?」
「ああ、年に一度の祭り、首都に店を出しにくるやつも多いんだぜ。まあ、今年はこんな事になっちまったから、いつもみたいには売れないけどな」
ニカッと笑う料理人は、やはり頼りになる笑顔だった。
こちらが何も言わずとも、ヤスさんは串に刺さった魚のフライを出してくれる。
それを受け取ると、通りの向かいにある出店の店主達から、ギン!と睨まれる気配がした。チラリと見ると、向こうも魚のフライの出店だ。海塩派の出店らしい。なるほど?
「美味しそうですね。いくら……」
「いやぁ、やるよやるよ」
「え、でも」
問答の間にも、マルとハニトラはそれぞれすでに魚のフライを口に入れてしまっている。
マルの「ワフワフ!」と熱そうに頬張る姿と、ハニトラの身体へと取り込む姿で魚のフライは跡形もなく消え去ってしまった。
「とまあ、こんな風にな、タダ同然で配り歩いてるってわけよ。状況が状況だからなぁ」
ユキナリはへへっと笑う。
「ありがとうございます」
そういえば、あの時は海で溺れて……、ハニトラの髪で気道確保してもらったんだったな。
ユキナリは、味を噛み締めるようにムニュムニュしているスライム状態のハニトラを眺めるのだった。
◇◇◇◇◇
懐かしの人登場、ですね。
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