静かにしろよ、ハニー・トラップ!

大天使ミコエル

文字の大きさ
3 / 230

3 俺が異世界に落ちる事になったワケ(2)

しおりを挟む
「えっ?」

 ゴッ……!

 耳が痛くなる程の大きな音がして、次の瞬間、
 ドォン……!
 爆発が起こる。

「何が起きて……」

「あなたは、玄関を出たところで、トラックに轢かれて死にました」

「何言って!?そんなの無理だろ。アパートの2階だぞ?」

「トラックは、2階まで飛んで来たの」

 振り向くと、アパートが目に入った。
 そして確かに、歪んで見えてはいたものの、トラックが今出てきたばかりの玄関に向かって頭から突っ込んでいるのが分かった。
 ドアのサイズにトラックが収まるわけもなく、周りの壁を突き破っている。

「こ……こんなの、ダメだろ。どかせよ」

 身体が、震える。
 トラックと壁の隙間から、黒い煙の筋が出ているのが見えた。

 アパートは燃えていた。

「これは……やり過ぎだろ?なあ、俺以外に用はないんだったら……」

 そう言う間にも、アパートはもう一度ドォン……!という爆発音をさせ、黒い煙に包まれていく。
 赤い炎が上がる。

 他にどんな住人が住んでいるのかは知らなかった。
 けれど、だからといって、燃えてしまっていいわけがない。
 あのトラックだって、人は乗ってなかったのか?
 青ざめた顔のまま見ていると、ある部屋の窓が開き、黒い煙が上がるのが見えた。
 人が、居る。

「あーあ、たーいへん。もう、あなたに帰る場所はないわね」
 女がニッコリと笑う。

 ゾッとした。

「やめろよ……!」

 そう言葉にした瞬間、足下の床が消えた感覚がした。
 女の顔が、ブレながら上へ動く。

 落ちる……!

 そう思った瞬間、記憶は途切れた。



 次に目を覚ましたのは、森の中だった。

「え…………?」

 頬に土の感触を感じながら、目を開ける。

 怪我……はないか。

 学校に行こうとした時の服を着て。
 スマホとCD1枚と財布程度が入っているだけのリュックを持って。

 ユキナリは一人、見たこともない森の中で倒れていた。
 あの女が居ない事は少しホッとしたものの。

「嘘だろ…………」

 少し期待していた。
 あれは夢なんじゃないかと。
 もしくは、バーチャル映像のような何かで誰かが騙そうとしているんじゃないかと。

 けど。

 靴の裏で、土の感触を確かめる。
 こんなリアルな夢、あってたまるか。

 他の可能性があるとすれば、誰かが俺の気を失わせてこの場所へ運んだ、なんて事。
 けど、こんな森の中に運ぶなんて可能なのか?
 車なんて到底通れそうにない森の中だ。

 明るい森ではあるけれど……。

 周りでは、ガサガサと音がする。
 虫か。動物か。

 いずれにしろ、たかだかマムシ程度でも、このTシャツ姿で会うのは心許ないというものだ。

 食料もない。
 まだ、空は明るいが、いつ暗くなるかわからない。

 これが、夢だなんて前提で動くのは危ないな……。

 靴を確かめる。幸いな事に、スニーカーの調子は悪くはない。
 人の手が入っているのか、森も地面が綺麗に見えていて、歩きづらくはなさそうだ。

 仕方ない。
 キョロキョロと辺りを見回し、出来る限り明るい方角へ向かって、歩いて行く事にした。



 圏外、か。

 歩く。
 時々スマホを確認して、そして歩く。

 こんな森の中ではよくある事なのかもしれないが、スマホの電波は一度も入ってはこないまま、2時間が経過していた。
 ……それにしても、GPSも機能しないなんて。森の木が邪魔しているのだろうか。
 バッテリーは7割ほど残っている。温存しなければ。

 やっともうすぐ森を抜けられそうだ。

「ふぅ……」

 最後の木に手を突く。

 空が見えた。
 草原が見えた。

 それに……、家がいくつか並んでいるのが見えた。

 助かった……。

 と思ったのも束の間。

「ここ……どこだよ」

 日本の何処かなら、どんな田舎にでも、道があって、車があって、家があったりするもんだろ。

 けれど目の前に見えるのは、何処の外国かと思える集落だった。
 家がいくつかある。
 馬の様な動物も見える。
 そして、木や漆喰の様なものでできた家が10軒ほど見える。

 庭はなくて、看板もなくて、車もなくて、道もない。

 嘘だろ……?

 本当にあの女……、俺を異世界に落としたのかよ……。



◇◇◇◇◇



そんなわけで、異世界に落とされたユキナリくんなのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...