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17 武器がないと始まらない(5)
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「ぜぇ……はぁ……」
試験だけのつもりだったのだけれど、結局空が真っ暗になる夜まで、ユキナリはその修練場に居た。
昼食は、マンドラゴラのスープだった。
正直、あの叫び声を聞けば食欲も失せるというものだし、おっさんの言うところにはあまり美味くはないという話だったが、妙なクセに目をつむれば、食べて食べられない事もなかった。
正直腹が減っていたのだ。
この町に来てから2日目。
昨夜は、宿のおかみさんが用意してくれた晩御飯をいただいたのだけれど、今朝の朝食は食べずに出てきていた。
そして、昼食後は世話をしてくれるだとかなんとかで、試験項目が終わった後も短剣片手に訓練を受けていた。
素振りはもちろん、人型の丸太に斬りかかったするわけだ。
こんなファンタジーな世界にしかないと思っていた事が、今、自分の目の前で繰り広げられている。……つまるところ、今、ファンタジーな世界に自分が居るという事だ。
「おう!剣の扱いにも慣れてきたなぁ!」
短剣を構えた先にいるおっさんが、嬉しそうに大きな口で笑う。
「まあ、素質があるって事だろうな!」
強気な事を言うと、おっさんの剣が飛んできた。
「怯むな!隙を見せたらお終いだ!」
どう見ても力の3割も出していないだろうに、剣越しに受け止めた俺の手が痺れるほどの強さの剣が降って来る。
「手応えが有ればそのまま押せ!そこで止まると剣を取られるからな!」
残念ながら数回目の剣で、バランスを崩す。
体力には自信がある方だと思ってたのに……。
「うあっ」
ズザザ、と転んでしまう。
「いてて」
目を開けると、おっさんが見下ろすのが見えた。
数回しか持たなかったというのに、なんだか満足そうだ。
「いいじゃないか」
けど確かに、このおっさんみたいな人に剣を習えば、どうにかなりそうな気がした。
「おっさん」
見上げたまま言う。
おっさんは返事もせず、こちらを見ただけだった。
「ここって、戦い方を習うとこ?」
聞くと、おっさんの眉が下がる。
「いや」
ドヤドヤと修練場に晩飯の支度をしている何人かの人間を見ながらおっさんが言う。
「ここは道場じゃない」
「え?」
入れ替わり誰かが武器の練習や武器の手入れをしている場所で、すっかり武器の練習場なのかと思っていた。
「ここは、魔物研究所だ」
「魔物……研究所……」
どうりで、魔物の切れ端なんて山のように置いてあるわけだ。
「じゃあ、魔物と戦う為の?」
「ああ、そうだ」
そう言ったおっさんは、俺の考えを読んだようだった。
「まあ、あの鍛冶屋の坊主の知り合いならしょうがねぇ。練習したいならくるといい」
めんどくさそうに言う。
「ありがと、おっさん」
晩飯までご馳走になって、鍛冶屋へと向かった。
魔物の被害を減らす為なのか、目の前に弱い奴が居たら我慢できなくなるのか、異様に世話になってしまった。
「や~~~、ありがとうありがとう」
鍛冶屋が、目を輝かせて巻物を眺めた。
びっしりと文字で埋められた巻物は、かなり感謝されてもいいと思えるくらいの出来栄えだ。
「じゃあ、これから、この短剣を任せてもいいかな」
「あ、ああ……」
その勢いに圧されてはいたけれど、正直、取り上げられたくはないくらいには愛着は湧いていた。
「ありがたく貰うよ」
そんなわけで、晴れてその短剣は俺のものとなった。
明日……ダンジョンに行ってみるか。
丹念に拭われた短剣の輝きを眺めた。
……子供のお使いでも使うくらいだそうだし、大丈夫、だよな。
◇◇◇◇◇
そしてプロローグのダンジョンへ向かいます。
試験だけのつもりだったのだけれど、結局空が真っ暗になる夜まで、ユキナリはその修練場に居た。
昼食は、マンドラゴラのスープだった。
正直、あの叫び声を聞けば食欲も失せるというものだし、おっさんの言うところにはあまり美味くはないという話だったが、妙なクセに目をつむれば、食べて食べられない事もなかった。
正直腹が減っていたのだ。
この町に来てから2日目。
昨夜は、宿のおかみさんが用意してくれた晩御飯をいただいたのだけれど、今朝の朝食は食べずに出てきていた。
そして、昼食後は世話をしてくれるだとかなんとかで、試験項目が終わった後も短剣片手に訓練を受けていた。
素振りはもちろん、人型の丸太に斬りかかったするわけだ。
こんなファンタジーな世界にしかないと思っていた事が、今、自分の目の前で繰り広げられている。……つまるところ、今、ファンタジーな世界に自分が居るという事だ。
「おう!剣の扱いにも慣れてきたなぁ!」
短剣を構えた先にいるおっさんが、嬉しそうに大きな口で笑う。
「まあ、素質があるって事だろうな!」
強気な事を言うと、おっさんの剣が飛んできた。
「怯むな!隙を見せたらお終いだ!」
どう見ても力の3割も出していないだろうに、剣越しに受け止めた俺の手が痺れるほどの強さの剣が降って来る。
「手応えが有ればそのまま押せ!そこで止まると剣を取られるからな!」
残念ながら数回目の剣で、バランスを崩す。
体力には自信がある方だと思ってたのに……。
「うあっ」
ズザザ、と転んでしまう。
「いてて」
目を開けると、おっさんが見下ろすのが見えた。
数回しか持たなかったというのに、なんだか満足そうだ。
「いいじゃないか」
けど確かに、このおっさんみたいな人に剣を習えば、どうにかなりそうな気がした。
「おっさん」
見上げたまま言う。
おっさんは返事もせず、こちらを見ただけだった。
「ここって、戦い方を習うとこ?」
聞くと、おっさんの眉が下がる。
「いや」
ドヤドヤと修練場に晩飯の支度をしている何人かの人間を見ながらおっさんが言う。
「ここは道場じゃない」
「え?」
入れ替わり誰かが武器の練習や武器の手入れをしている場所で、すっかり武器の練習場なのかと思っていた。
「ここは、魔物研究所だ」
「魔物……研究所……」
どうりで、魔物の切れ端なんて山のように置いてあるわけだ。
「じゃあ、魔物と戦う為の?」
「ああ、そうだ」
そう言ったおっさんは、俺の考えを読んだようだった。
「まあ、あの鍛冶屋の坊主の知り合いならしょうがねぇ。練習したいならくるといい」
めんどくさそうに言う。
「ありがと、おっさん」
晩飯までご馳走になって、鍛冶屋へと向かった。
魔物の被害を減らす為なのか、目の前に弱い奴が居たら我慢できなくなるのか、異様に世話になってしまった。
「や~~~、ありがとうありがとう」
鍛冶屋が、目を輝かせて巻物を眺めた。
びっしりと文字で埋められた巻物は、かなり感謝されてもいいと思えるくらいの出来栄えだ。
「じゃあ、これから、この短剣を任せてもいいかな」
「あ、ああ……」
その勢いに圧されてはいたけれど、正直、取り上げられたくはないくらいには愛着は湧いていた。
「ありがたく貰うよ」
そんなわけで、晴れてその短剣は俺のものとなった。
明日……ダンジョンに行ってみるか。
丹念に拭われた短剣の輝きを眺めた。
……子供のお使いでも使うくらいだそうだし、大丈夫、だよな。
◇◇◇◇◇
そしてプロローグのダンジョンへ向かいます。
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