70 / 230
70 その本が言うには(3)
しおりを挟む
「う~ん」
夜。
ユキナリは、一人、宿の食堂に居た。
宿の食堂は、24時間開いており、酒が飲めるようになっているのだ。
もう晩御飯を食べるような時間でもない夜遅くに、ざわざわとした食堂の中で、また日記と対峙していた。
日記や本のどこかから、このゴーレム博士が魔女の手下なのか、それともこちらの仲間なのか見極めようとしての事だった。
思い出話の中に。もしくは、ゴーレム作りの話の中に。
それにしても……、時々出てくる『山香』ってのは何だ?
出てくる頻度が高すぎる。
何処かの地図と一緒に出てくる事が多い所を見ると、やはり何かの薬品か……?それとも薬草の類…………。
視線をその本に落とし、集中していると。
「おお?」
と、後ろから声がかかった。
ビクゥ!とつい驚いてしまう。
「なんだぁ?怪しい奴が居るから見てくれとか言ってたが、何かと思えば兄ちゃん」
後ろを振り向くと、痩せた小柄な爺さんがこちらを覗き込んでいた。
やば……。見られると悪いものの可能性だって十分あったのに。
爆弾とか毒とか、やばい言葉の可能性だって、捨ててはいけなかった。
慎重に、逃げる道を探す。
今はハニトラも居ない。
俺が一人でどうにかしなくては。
その小柄な爺さんを凝視する。
「山香派か?」
ドキリとする。
それはあれか?精霊派か魔女派か、みたいな奴か?
いよいよどう逃げようかと視線を巡らせていると、爺さんは続けてこう言った。
「俺は断然、海塩派だねぇ。海のモノは海のモノで調理するのが一番さぁ。まあ、見る目はいいけどな。それ、ヤスさんとこの料亭の場所だろ?山香派の中では歴史ある店ではあるもんなぁ」
「…………へ?」
なんだ?どういうことだ……?
「山……香、派」
どうやらそれは、食べ物の話であるらしかった。
よくよく聞いてみれば、それは魚のフライの料理の仕方の話だった。
何で味をつけるか。何をつけて食べるか。つまり、そういう事だ。
ゴーレム博士は、この港の魚フライ(山香派)が好物だったのだ。
その爺さんは話好きだった。
結局それから2時間も、この港の事や美味しい店、好みの店員や幼馴染との思い出話など、あっちへこっちへ話は飛びつつ、色々な話を聞く羽目になった。
愛想笑いを浮かべつつ、ちびちびとだが酒も飲む。そんな時間だった。
爺さんが酔っ払った末に机に突っ伏してガーガー眠ってしまったのが、最後だった。
「ふぅ……」
一息つくと、宿のおっちゃんがガハハと笑いかけてきた。
やめてくれ。爺さんが起きるだろうが。
「大変だろ、この爺さんの相手すんのは」
「いや、こっちも楽しかったから」
言いながら、ジョッキを口にする。
そう、なかなかに楽しかったのだ。
そんなフワフワした気持ちで、部屋へと戻る。
ガチャリと開けた扉の向こうは、窓の外からの明かりしかない、暗い室内だ。
ベッドの上にはマルが一人、丸くなって眠っていた。
◇◇◇◇◇
マルは犬ではなく獣人なので、一人、と数えています。
夜。
ユキナリは、一人、宿の食堂に居た。
宿の食堂は、24時間開いており、酒が飲めるようになっているのだ。
もう晩御飯を食べるような時間でもない夜遅くに、ざわざわとした食堂の中で、また日記と対峙していた。
日記や本のどこかから、このゴーレム博士が魔女の手下なのか、それともこちらの仲間なのか見極めようとしての事だった。
思い出話の中に。もしくは、ゴーレム作りの話の中に。
それにしても……、時々出てくる『山香』ってのは何だ?
出てくる頻度が高すぎる。
何処かの地図と一緒に出てくる事が多い所を見ると、やはり何かの薬品か……?それとも薬草の類…………。
視線をその本に落とし、集中していると。
「おお?」
と、後ろから声がかかった。
ビクゥ!とつい驚いてしまう。
「なんだぁ?怪しい奴が居るから見てくれとか言ってたが、何かと思えば兄ちゃん」
後ろを振り向くと、痩せた小柄な爺さんがこちらを覗き込んでいた。
やば……。見られると悪いものの可能性だって十分あったのに。
爆弾とか毒とか、やばい言葉の可能性だって、捨ててはいけなかった。
慎重に、逃げる道を探す。
今はハニトラも居ない。
俺が一人でどうにかしなくては。
その小柄な爺さんを凝視する。
「山香派か?」
ドキリとする。
それはあれか?精霊派か魔女派か、みたいな奴か?
いよいよどう逃げようかと視線を巡らせていると、爺さんは続けてこう言った。
「俺は断然、海塩派だねぇ。海のモノは海のモノで調理するのが一番さぁ。まあ、見る目はいいけどな。それ、ヤスさんとこの料亭の場所だろ?山香派の中では歴史ある店ではあるもんなぁ」
「…………へ?」
なんだ?どういうことだ……?
「山……香、派」
どうやらそれは、食べ物の話であるらしかった。
よくよく聞いてみれば、それは魚のフライの料理の仕方の話だった。
何で味をつけるか。何をつけて食べるか。つまり、そういう事だ。
ゴーレム博士は、この港の魚フライ(山香派)が好物だったのだ。
その爺さんは話好きだった。
結局それから2時間も、この港の事や美味しい店、好みの店員や幼馴染との思い出話など、あっちへこっちへ話は飛びつつ、色々な話を聞く羽目になった。
愛想笑いを浮かべつつ、ちびちびとだが酒も飲む。そんな時間だった。
爺さんが酔っ払った末に机に突っ伏してガーガー眠ってしまったのが、最後だった。
「ふぅ……」
一息つくと、宿のおっちゃんがガハハと笑いかけてきた。
やめてくれ。爺さんが起きるだろうが。
「大変だろ、この爺さんの相手すんのは」
「いや、こっちも楽しかったから」
言いながら、ジョッキを口にする。
そう、なかなかに楽しかったのだ。
そんなフワフワした気持ちで、部屋へと戻る。
ガチャリと開けた扉の向こうは、窓の外からの明かりしかない、暗い室内だ。
ベッドの上にはマルが一人、丸くなって眠っていた。
◇◇◇◇◇
マルは犬ではなく獣人なので、一人、と数えています。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる