静かにしろよ、ハニー・トラップ!

大天使ミコエル

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「全てを焼き尽くす火の精霊サラ」

「う~ん」
 サラが頬杖をつく。
「そんな呼びかけじゃ、全力を出せないかもしれないわ」
 そう言いながら微笑む。

 ユキナリが知る限り、サラが精霊の中でそういう事に一番細かい。
 ルヴァだって、「いいねいいね」なんて言ってくれたのに。

「じゃあ……、燃え上がる赤い火の精霊サラ」

「もっと、美しく」

「美しく……」
 ユキナリは腕組みをして考え込む。
 まさか、こんなところでダメ出しされるとは思ってなかったからな……。

「じゃあ……、美しく燃える火の精霊サラ」

「う~ん」
 サラが目を閉じる。
 その間、やめてくれ。
「まあ、及第点ってところかしら」

「やった~!」
 ユキナリが小躍りする。

「じゃあ、改めまして」
 短剣を構える。
「美しく燃える火の精霊サラ」
「ええ。いいわ」
 高貴な笑みだった。
 全ての存在の頂点に立つような笑みだ。

「俺達に、魔女を仕留める力を貸してくれ……!」

 ブオォ!

「!?」

 目の前には、炎があった。
 盛大に燃えている。
 いや、燃えているのは短剣だ。
 短剣の刃が、炎を纏っている。

 遠く後ろから、仲間達がはしゃぐ声が聞こえた。

「すっげぇ……」
 なんて言いつつ、両手をしっかりと握った。これを落としてしまっては、そこら一体火の海になりそうだった。

「よかったわね、ユキナリ」
 サラは、澄まして笑っている。
「それが水竜の鱗で。普通の鋼だったら、炎に負けているところよ」

 やっぱり、そのまま炎なんだな……。

「これ……やっぱり燃えてるんだな」

 そう呟くと、
「当たり前でしょう?」
 とサラが不満顔だ。

 そりゃそうか。
 土も水も風も、そのまま出て来たもんな。
 火も例外じゃないって事だ。



 火の精霊の力について、使い勝手の良さを考えながら、また全員である馬車に揺られた。

 首都にどんどん近づいていく。
 人々の笑い声が、近づいて来る。

 遠く、大きな鐘の音や建物が見えた。

「あれが首都……?」

「ええ。あれが、我らの誇り、精霊の要塞。この国の首都ソルよ」

「あれ何!?」
 ハニトラの声が響く。
 指し示す方角を見てみれば、目の前にオーロラのようなものがそびえていた。
 ただ、オーロラと違うのは、その緩やかなキラキラとしたプラズマのようなものが、地面まではっきりと続いているという事。

「なんだ……あれ……」

 さながら、緩やかな壁といったところだろうか。

「あれが、俺達の壁だ」
 ルヴァが乗り出す。

「モスが作ったっていう、あの?」

「そうだよ。あそこから先には、魔女は足を踏み入れる事はできない」

「祭りは、あの壁を補強する為に精霊4人が儀式をする為のものなの」

「じゃあ、今回も精霊達は儀式を行なっているのですわね?」

「そういうことね」

 壁を通り抜ける時は、呆気ないほど何もなかった。
 この目で見えなければ、本当に、何かあるとは感知できない。

 俺達はその大きな壁を抜けて、首都ソルへ入ったのだった。




◇◇◇◇◇


さて、いよいよ首都到着です!
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