150 / 239
150 それぞれ心の内側で
しおりを挟む
昼前、食堂でクッションに埋れているのはヴァルだ。
「何処に行ったのかと思ったら」
声をかけられたけれど、それを無視して魔術書を読み耽る。
無視されたにも関わらず、シエロはヴァルの顔を覗きこんだ。
「珍しい。最近は、仕事のない日は授業出てたのにね」
「……そうだったかな」
ヴァルは素知らぬ顔で返事をした。
今までずっとエマに過去を知られていたわけだけれど、いざそれを知らされると、あまりにも居心地が悪かった。
会いたくないわけじゃない。
シエロが笑いながら見下ろす。
「じゃあ、僕がエマをもらっていこうかな」
「は?」
そこでやっと、ヴァルはシエロを見上げた。
シエロの顔には、エマが欲しいという意思は見えない。
「……思ってもいないことを」
冗談でも、聞きたくない言葉がある。
ヴァルは、顔を歪めた。
「本心だよ」
その言葉を聞き、ヴァルが嫌悪感を露わにする。
「まあ、確かに、恋愛的な意味じゃないけど」
「はっきり言え」
「実は……」
シエロは、からかうような微笑みで言う。
「師匠がね、あのゲームの絵師に会わせてくれるって言うんだ。それも、学園全員で」
「…………」
ヴァルの顔が複雑な表情になる。
絵師、というと、俺達をあんなイラストに仕立て上げた奴だ。そりゃあ、エマは嬉しいかもしれないが。
「君は……あまり会いたくないだろ」
ヴァルが眉を寄せた。
「俺も行くよ」
当たり前だ。
いくら会いたくない人間でも、ここで留守番をするつもりはない。
「そうなると……」
シエロが勿体ぶって言う。
「みんなに、このゲームのことを言わないといけないんだ」
「…………」
シエロがその話をしたのは、その日の午後だった。
みんなは実習室に集められ、床に輪になって座った。
教室だと堅苦しくなってしまうからという、シエロの配慮なんだろう。
「実は、みんなを集めたのは、この間、学園長が落としたゲームの話だ」
いかにも嫌な表情のヴァルがふと隣を見ると、エマも妙な固まった顔をしていた。
「私が話します」
エマが、心細い顔で、ちらりとヴァルの方を見た。その視線を受け止める。
「私ね、……転生者なんだ。生まれ変わる前の、記憶があるの」
部屋が騒つく。
リナリだけはちょっと目がキラキラしていた。何を考えているのか想像がついた。
「そしてこれは、」エマは、スマホを取り出した。「私が前世にいた世界の道具。そしてここに入っているのは、学園長が作った、ゲームなんだ。私は前世で、これをやってたの」
みんなが寄ってきて画面を覗き込む。
「これが、恋愛シミュレーションゲーム『メモアーレン』」
「え、これ、先生!?」
チュチュが驚いた声を上げた。
「おおぉぉぉぉぉ」
チュチュが口を手で抑え、目をパチパチしている。ふとリナリを見ると、チュチュと似たり寄ったりな顔をしていた。
……女子には何か響くものがあるんだろうか。
そこでシエロが、スマホを3台取り出した。
「みんなにもやってもらえるように、学園長からスマホを預かっているよ」
と、それぞれチュチュとメンテ、リナリに渡していく。
それぞれ、スマホの画面をつけて、オープニングを食い入るように見ていた。
◇◇◇◇◇
シエロくんは、ヴァルに対してだけは年下だし、ヴァルに対してだけはヤンデレの素質があると思う。
「何処に行ったのかと思ったら」
声をかけられたけれど、それを無視して魔術書を読み耽る。
無視されたにも関わらず、シエロはヴァルの顔を覗きこんだ。
「珍しい。最近は、仕事のない日は授業出てたのにね」
「……そうだったかな」
ヴァルは素知らぬ顔で返事をした。
今までずっとエマに過去を知られていたわけだけれど、いざそれを知らされると、あまりにも居心地が悪かった。
会いたくないわけじゃない。
シエロが笑いながら見下ろす。
「じゃあ、僕がエマをもらっていこうかな」
「は?」
そこでやっと、ヴァルはシエロを見上げた。
シエロの顔には、エマが欲しいという意思は見えない。
「……思ってもいないことを」
冗談でも、聞きたくない言葉がある。
ヴァルは、顔を歪めた。
「本心だよ」
その言葉を聞き、ヴァルが嫌悪感を露わにする。
「まあ、確かに、恋愛的な意味じゃないけど」
「はっきり言え」
「実は……」
シエロは、からかうような微笑みで言う。
「師匠がね、あのゲームの絵師に会わせてくれるって言うんだ。それも、学園全員で」
「…………」
ヴァルの顔が複雑な表情になる。
絵師、というと、俺達をあんなイラストに仕立て上げた奴だ。そりゃあ、エマは嬉しいかもしれないが。
「君は……あまり会いたくないだろ」
ヴァルが眉を寄せた。
「俺も行くよ」
当たり前だ。
いくら会いたくない人間でも、ここで留守番をするつもりはない。
「そうなると……」
シエロが勿体ぶって言う。
「みんなに、このゲームのことを言わないといけないんだ」
「…………」
シエロがその話をしたのは、その日の午後だった。
みんなは実習室に集められ、床に輪になって座った。
教室だと堅苦しくなってしまうからという、シエロの配慮なんだろう。
「実は、みんなを集めたのは、この間、学園長が落としたゲームの話だ」
いかにも嫌な表情のヴァルがふと隣を見ると、エマも妙な固まった顔をしていた。
「私が話します」
エマが、心細い顔で、ちらりとヴァルの方を見た。その視線を受け止める。
「私ね、……転生者なんだ。生まれ変わる前の、記憶があるの」
部屋が騒つく。
リナリだけはちょっと目がキラキラしていた。何を考えているのか想像がついた。
「そしてこれは、」エマは、スマホを取り出した。「私が前世にいた世界の道具。そしてここに入っているのは、学園長が作った、ゲームなんだ。私は前世で、これをやってたの」
みんなが寄ってきて画面を覗き込む。
「これが、恋愛シミュレーションゲーム『メモアーレン』」
「え、これ、先生!?」
チュチュが驚いた声を上げた。
「おおぉぉぉぉぉ」
チュチュが口を手で抑え、目をパチパチしている。ふとリナリを見ると、チュチュと似たり寄ったりな顔をしていた。
……女子には何か響くものがあるんだろうか。
そこでシエロが、スマホを3台取り出した。
「みんなにもやってもらえるように、学園長からスマホを預かっているよ」
と、それぞれチュチュとメンテ、リナリに渡していく。
それぞれ、スマホの画面をつけて、オープニングを食い入るように見ていた。
◇◇◇◇◇
シエロくんは、ヴァルに対してだけは年下だし、ヴァルに対してだけはヤンデレの素質があると思う。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
【長編版】孤独な少女が異世界転生した結果
下菊みこと
恋愛
身体は大人、頭脳は子供になっちゃった元悪役令嬢のお話の長編版です。
一話は短編そのまんまです。二話目から新しいお話が始まります。
純粋無垢な主人公テレーズが、年上の旦那様ボーモンと無自覚にイチャイチャしたり様々な問題を解決して活躍したりするお話です。
小説家になろう様でも投稿しています。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる