転生少女は過去の英雄に恋をする

大天使ミコエル

文字の大きさ
170 / 239

170 水面に浮かぶ(1)

しおりを挟む
 その夜、エマは眠ることが出来なかった。

 デート?
 デートじゃない?

 枕を抱え、天井を見上げる。

 エマは、デートとして誘ったつもりだった。

 恋人になりたいなんて、考えたことがないのは本当だった。
 普通に友達として楽しければ、それでいいと思っていた。
 それで大丈夫だって。
 それ以上はいらないって。

 でも、『メモアーレン』をすることで、それだけじゃ済まなくなってしまった。
 ヴァルが他の人の隣にいるのは嫌だと思ってしまった。
 自分がヒロインになっているのを見て、期待してしまった。

 そういう未来が欲しいと思ってしまった。

 頑張りたいと、思ってしまった。

 けど、デートとして誘うなら、ちょっと言葉が少なかったかもしれない。
 相談事みたいに聞こえたかもしれない。

 とはいえ……突然の告白もないだろうし。

 告白するっていうのは、関係とか、雰囲気とか、きっと色々な準備が必要なんじゃないかと思う。わかんないけど。

「むーん……」

 こうして、一人悶々としていても仕方がない。
 今は眠ることが最善のはずなんだ。

 目をぎゅっとつむる。
 それでもしばらく、エマはその夜を眠れずに過ごした。

 そして、あっという間に翌朝がやってきた。
 ……思ったより眠れたし、ぼんやりしないように気をつけないと。

 せっかくデートにこぎつけたのだから、昨日みたいにみんなに心配などさせるわけにはいかない。

 なんとか午前中の授業を乗り越える。
 王都に来てからの授業は、王都ならではといった感じだった。
 主に、王都の生活について、王都の構造について、魔術師の塔についてなどで、外へ出かけることもあった。
 今日は、王都の城壁へ上がって、町を一望した。

「塀に囲まれてて怖い場所かと思ってたけど、中は普通の町だよね」
 チュチュが、笑顔のまま話す。
「こんなに平和なのに、ここだけ城壁があるもんね」
 頑丈な石造りの城壁。
 確かに外からの攻撃もなさそうなこの国で、高すぎるほどの城壁は違和感が湧いてしまうが、これも翼竜対策だということだった。
 町があれば、翼竜は民家を踏み潰しながら歩く。
 これだけ大きな建物が所狭しと並んでいる王都では、それも被害が甚大なのだ。
 そんな町で、このような城壁があると、止まり木のように、まずこの城壁へ降りるのだそうだ。
 以前の翼竜戦では、ここにシエロくんが立っていた。
 少し……ゾッとする。
 その惨劇が、実際にあったのだと思うと。

 ほど近くに王城が見える。
 広い城壁の中、4分の1ほどは城が占めているんじゃないかと思うほどの大きさだ。
 灰色の城の近くに建つ、煤けて見える背の高い塔が、魔術師の塔。
 煤けているような、霧に包まれているような、怪しげな黒い塔だ。
 きっと、中では魔女が大鍋をかき混ぜているんだろうと思わせる塔だった。
 実際のところ、魔術師が鍋をかき混ぜているところなんて、カレーの鍋ぐらいでしか見たことはないけれど。

 そして塔から、城壁側に、大きな湖はあった。
「あの湖も、災害対策なんだ。翼竜を含めての、ね」
 説明をしてくれたのは、例によってシエロだった。
 この国は、水の精霊が宿る国だ。湧水も多く、水の魔術師も多い。水に困る事はないけれど、これほど国外から来る人間が多い王都ともなれば、こういった対策もあったほうがいいらしい。
「綺麗な湖だね」
 上から眺めてさえ、そんなありきたりな感想を口にすると、隣にいたヴァルも、
「いい場所だよな」
 と相槌を打った。



◇◇◇◇◇



王都の授業風景は、修学旅行みたいで楽しそうですね!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

【長編版】孤独な少女が異世界転生した結果

下菊みこと
恋愛
身体は大人、頭脳は子供になっちゃった元悪役令嬢のお話の長編版です。 一話は短編そのまんまです。二話目から新しいお話が始まります。 純粋無垢な主人公テレーズが、年上の旦那様ボーモンと無自覚にイチャイチャしたり様々な問題を解決して活躍したりするお話です。 小説家になろう様でも投稿しています。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...