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170 水面に浮かぶ(1)
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その夜、エマは眠ることが出来なかった。
デート?
デートじゃない?
枕を抱え、天井を見上げる。
エマは、デートとして誘ったつもりだった。
恋人になりたいなんて、考えたことがないのは本当だった。
普通に友達として楽しければ、それでいいと思っていた。
それで大丈夫だって。
それ以上はいらないって。
でも、『メモアーレン』をすることで、それだけじゃ済まなくなってしまった。
ヴァルが他の人の隣にいるのは嫌だと思ってしまった。
自分がヒロインになっているのを見て、期待してしまった。
そういう未来が欲しいと思ってしまった。
頑張りたいと、思ってしまった。
けど、デートとして誘うなら、ちょっと言葉が少なかったかもしれない。
相談事みたいに聞こえたかもしれない。
とはいえ……突然の告白もないだろうし。
告白するっていうのは、関係とか、雰囲気とか、きっと色々な準備が必要なんじゃないかと思う。わかんないけど。
「むーん……」
こうして、一人悶々としていても仕方がない。
今は眠ることが最善のはずなんだ。
目をぎゅっとつむる。
それでもしばらく、エマはその夜を眠れずに過ごした。
そして、あっという間に翌朝がやってきた。
……思ったより眠れたし、ぼんやりしないように気をつけないと。
せっかくデートにこぎつけたのだから、昨日みたいにみんなに心配などさせるわけにはいかない。
なんとか午前中の授業を乗り越える。
王都に来てからの授業は、王都ならではといった感じだった。
主に、王都の生活について、王都の構造について、魔術師の塔についてなどで、外へ出かけることもあった。
今日は、王都の城壁へ上がって、町を一望した。
「塀に囲まれてて怖い場所かと思ってたけど、中は普通の町だよね」
チュチュが、笑顔のまま話す。
「こんなに平和なのに、ここだけ城壁があるもんね」
頑丈な石造りの城壁。
確かに外からの攻撃もなさそうなこの国で、高すぎるほどの城壁は違和感が湧いてしまうが、これも翼竜対策だということだった。
町があれば、翼竜は民家を踏み潰しながら歩く。
これだけ大きな建物が所狭しと並んでいる王都では、それも被害が甚大なのだ。
そんな町で、このような城壁があると、止まり木のように、まずこの城壁へ降りるのだそうだ。
以前の翼竜戦では、ここにシエロくんが立っていた。
少し……ゾッとする。
その惨劇が、実際にあったのだと思うと。
ほど近くに王城が見える。
広い城壁の中、4分の1ほどは城が占めているんじゃないかと思うほどの大きさだ。
灰色の城の近くに建つ、煤けて見える背の高い塔が、魔術師の塔。
煤けているような、霧に包まれているような、怪しげな黒い塔だ。
きっと、中では魔女が大鍋をかき混ぜているんだろうと思わせる塔だった。
実際のところ、魔術師が鍋をかき混ぜているところなんて、カレーの鍋ぐらいでしか見たことはないけれど。
そして塔から、城壁側に、大きな湖はあった。
「あの湖も、災害対策なんだ。翼竜を含めての、ね」
説明をしてくれたのは、例によってシエロだった。
この国は、水の精霊が宿る国だ。湧水も多く、水の魔術師も多い。水に困る事はないけれど、これほど国外から来る人間が多い王都ともなれば、こういった対策もあったほうがいいらしい。
「綺麗な湖だね」
上から眺めてさえ、そんなありきたりな感想を口にすると、隣にいたヴァルも、
「いい場所だよな」
と相槌を打った。
◇◇◇◇◇
王都の授業風景は、修学旅行みたいで楽しそうですね!
デート?
デートじゃない?
枕を抱え、天井を見上げる。
エマは、デートとして誘ったつもりだった。
恋人になりたいなんて、考えたことがないのは本当だった。
普通に友達として楽しければ、それでいいと思っていた。
それで大丈夫だって。
それ以上はいらないって。
でも、『メモアーレン』をすることで、それだけじゃ済まなくなってしまった。
ヴァルが他の人の隣にいるのは嫌だと思ってしまった。
自分がヒロインになっているのを見て、期待してしまった。
そういう未来が欲しいと思ってしまった。
頑張りたいと、思ってしまった。
けど、デートとして誘うなら、ちょっと言葉が少なかったかもしれない。
相談事みたいに聞こえたかもしれない。
とはいえ……突然の告白もないだろうし。
告白するっていうのは、関係とか、雰囲気とか、きっと色々な準備が必要なんじゃないかと思う。わかんないけど。
「むーん……」
こうして、一人悶々としていても仕方がない。
今は眠ることが最善のはずなんだ。
目をぎゅっとつむる。
それでもしばらく、エマはその夜を眠れずに過ごした。
そして、あっという間に翌朝がやってきた。
……思ったより眠れたし、ぼんやりしないように気をつけないと。
せっかくデートにこぎつけたのだから、昨日みたいにみんなに心配などさせるわけにはいかない。
なんとか午前中の授業を乗り越える。
王都に来てからの授業は、王都ならではといった感じだった。
主に、王都の生活について、王都の構造について、魔術師の塔についてなどで、外へ出かけることもあった。
今日は、王都の城壁へ上がって、町を一望した。
「塀に囲まれてて怖い場所かと思ってたけど、中は普通の町だよね」
チュチュが、笑顔のまま話す。
「こんなに平和なのに、ここだけ城壁があるもんね」
頑丈な石造りの城壁。
確かに外からの攻撃もなさそうなこの国で、高すぎるほどの城壁は違和感が湧いてしまうが、これも翼竜対策だということだった。
町があれば、翼竜は民家を踏み潰しながら歩く。
これだけ大きな建物が所狭しと並んでいる王都では、それも被害が甚大なのだ。
そんな町で、このような城壁があると、止まり木のように、まずこの城壁へ降りるのだそうだ。
以前の翼竜戦では、ここにシエロくんが立っていた。
少し……ゾッとする。
その惨劇が、実際にあったのだと思うと。
ほど近くに王城が見える。
広い城壁の中、4分の1ほどは城が占めているんじゃないかと思うほどの大きさだ。
灰色の城の近くに建つ、煤けて見える背の高い塔が、魔術師の塔。
煤けているような、霧に包まれているような、怪しげな黒い塔だ。
きっと、中では魔女が大鍋をかき混ぜているんだろうと思わせる塔だった。
実際のところ、魔術師が鍋をかき混ぜているところなんて、カレーの鍋ぐらいでしか見たことはないけれど。
そして塔から、城壁側に、大きな湖はあった。
「あの湖も、災害対策なんだ。翼竜を含めての、ね」
説明をしてくれたのは、例によってシエロだった。
この国は、水の精霊が宿る国だ。湧水も多く、水の魔術師も多い。水に困る事はないけれど、これほど国外から来る人間が多い王都ともなれば、こういった対策もあったほうがいいらしい。
「綺麗な湖だね」
上から眺めてさえ、そんなありきたりな感想を口にすると、隣にいたヴァルも、
「いい場所だよな」
と相槌を打った。
◇◇◇◇◇
王都の授業風景は、修学旅行みたいで楽しそうですね!
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