転生少女は過去の英雄に恋をする

大天使ミコエル

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217 対峙

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 外殻が、それほど強いんだ。



 エマは、腕をかざし、光を避けながら、翼竜の動向を探る。



 けど。

 ランドルフは言っていた。

 ジークが、炎の魔術で翼竜を追いやった、と。

 炎に弱い、わけじゃない。今、炎の魔術も当たったけれど、なんの効果もなさそうだった。



 じゃあ……。



 つまり……。



 まさか、と思う。



 外殻じゃないところを狙えばいい。

 例えば、防具の隙間のような。

 例えば……、口の、中……。



 そうだ。

 ジークは咥えられていたから、口の中に攻撃することができたんだ。



 じゃあ、この場合はどうすればいい?



 太陽の光を反射して白く輝く、直接見ることのできない翼竜と対峙する。



「飛べ」



 見えないながらも、唱えると、エマの左手の腕輪の前に魔法陣が現れ、消える。

 光の矢を引き、力一杯飛ばした。

 やはり、手応えはない。



 しっかりと相手を見ようとするけれど、眩しい太陽の光の反射のせいで、真っ直ぐ見ることができない。

 目が痛い……。

 姿形もまともに見られないのに、口を探すなんて至難の技だ。



「…………」



 キィィ。



 チカチカと、翼竜が動く。

 目の前に、目が痛いほどの点滅。



 こっち……見てる……?



「ララ……っ」



 一旦退こうと、手綱を引く。

 みんなが一瞬たじろいだその時、ドウッ……!と大きな音がした。

 大量の水が翼竜を襲っていた。



 振り返ると、そこに居たのは、ランドルフとアステールだった。

 谷の強風に煽られて、ランドルフの前髪がなびく。

 切れ長の目が、眩しそうに、けれど、強い力で相手を見据えていた。



「深淵の王」



 ヴァルの声が響く。

 ヴァルが右手に構えた短剣の前に、魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 辺りが真っ暗になった。

 どっ……と微かに地鳴りがした。

 突然暗くなったので、翼竜も混乱したに違いなかった。



 けど、これじゃ見えない。



 もちろん、翼竜はそれ自身が発光しているわけじゃない。太陽の光を反射させているだけだ。

 光源がなければ、見ることはできない。



 どこにいるの……。



 しん、と静まり返った暗闇の中。



 エマは、口を開いた。



「輝け」



 エマが差し出した左手の腕輪の前に魔法陣が現れ、弾けるように消える。

 沢山の星のような煌めきが、暗闇の中で輝く。

 まるで星空のような世界だった。



 出来るだけ弱い光で、輝け。



 小さな光を反射して、何かが見えた。



 あれが……翼竜?



 チラチラと光りながら、何かが動いていた。

 ドンッと強い衝撃が来る。

 飛ん……っ!



 翼竜が飛び上がった衝撃で、エマは馬から投げ出された。



「きゃあっ!」

「エマ!」



 薄明かりの中、ヴァルがエマを庇うように抱きとめる。

 遠くで、馬のいななきが聞こえた。

 ララもどうやら無事らしい。



 すっと立ち上がり、エマは翼竜と対峙した。



 冷静に、形をなぞる。

 あれが、翼。

 その向こうに見えるのは、しっぽだろうか。長く垂れ下がっている。

 すっとした滑らかな形の手前には、尖った顔が見える。……くちばしだ。

 くちばしがあるんだ。



 あの場所に、攻撃が出来れば……。



 地に足をしっかりとつけ、エマは息を吸った。



◇◇◇◇◇


水の精霊が住むセラストリア王国では、水の精霊の加護を持つ人間が多いです。王家も基本的に水の魔術。国王であるランドルフと、王家の血を引くシエロくんは水の精霊の加護を受けています。
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