転生少女は過去の英雄に恋をする

大天使ミコエル

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221 月の下で(2)

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 ふっとヴァルが振り返った。

 その姿を見て、目が潤むのを感じた。

 どれだけ手を伸ばしても届かないはずだった画面の中の好きな人が、今、目の前にいる。
 ひとりぼっちのあの場面と同じ場所で。ひとりぼっちだったあの人。
 それが、手を伸ばせば、届くところにいる。
 やっとここまで来た。
 ひとりぼっちだったあの人の所まで。

「エマ」

 愛おしそうに呼ぶその声に、ぽろぽろと涙がこぼれる。

 どれだけ心配をかけてしまったんだろう。

 少しふらついたエマの元に、ヴァルが手を貸しに近付いてきた。
 抱き止めるように、捕まえられる。
 ヴァルが元いた場所まで屋根伝いに歩き、屋根の上に座り込む。
 両腕で、支えられているような格好で、すぐそばにヴァルがいた。
 ヴァルが、少し困った顔で、けれど、少し嬉しそうな顔で、袖でエマの涙を拭う。

「やっと起きたんだな。医者は大丈夫だって言うものの、さすがに2日もほとんど眠ったままで心配したよ」
「うん、ごめん」

 ぼろぼろとエマの頬を伝う涙は、拭っても拭っても、溢れてきてしまう。
 そんなエマの涙を、ヴァルは世話を焼くように拭い続けた。
 エマは、ぼろぼろと泣きながら、涙を拭われながら、なんとか口を開いた。

「ヴァル」

「ん?」

「ヴァル」

「……どうした?」

「あのね」

 ヴァルのマントを、きゅっと掴んだ。

「私……、いつも、ずっと……ヴァルを見てた。当たり前みたいにいつもそばに居てくれて。いつも優しくて。いつも楽しくて。そばに居ると安心したの」

「…………」

 ヴァルは、黙って、エマの話を聞いた。

「あのゲームのジークが、ヴァルだってわかった時も、びっくりしたけど、納得した。……当たり前だけど、私が知ってるジークと、そのまんま同じだったから」

 ヴァルのキョトンとした瞳が見えた。

「同じ……?」
 ヴァルが、ぼそりと呟く。
「同じ、だよ。だって、同じ人だから。だって、国王様にカップケーキをあげたのはヴァルでしょう?」
「…………ああ」
「ここで一人で歌ってたのだって」
「……そうだ」

「私、ずっと、ジークのこと大好きなんだけど。つまり……、それは……、あんな、過去があったことも、ひっくるめて、つまり、」

 目の前で、ヴァルがじっと、私の話を聞いてくれていた。
 少しでも伝わるだろうか。
 こんな拙い言葉で。

 もし、少しでも伝わるなら。
 もしこれが、ヴァルの自信の一欠片になるなら。

 後のことは考えない。
 今、伝えたいから伝えるんだ。

「つまり……、私、」

 心臓が、バクバクする。
 かああああっと頭に血が上るように、顔が熱くなるのを感じた。

「ヴァルのことが…………、大好き、なの」

「………………」

 そして、沈黙が訪れた。



◇◇◇◇◇



そうだ!!ここがハッピーエンドだ!!
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