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226 翼竜(3)
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「…………」
黙って、立ち尽くすレーヴをじっと見ていた。
力無く立っているのに、目は輝いている。
誰も声も聞こえないみたいに、ただ、一点だけを見つめていた。
映画のワンシーンみたいだ、と思う。
例えば、この世界に一つの宝を見つけた冒険家のような。
この世界に……ひとつの……?
ゆっくりと、首を、翼竜の方へ動かす。
「あ……れ……」
震える声を出したのは、ヴァルだった。
そりゃあ、そうだろう。
自分を殺した翼竜を、やっと倒したと思っていたのに、その身体のあたりがずもももも……と動いていたのだから。
「え……」
レーヴは驚愕の瞳で、けれど、期待の眼差しでその動く何かを見ていた。
「まさか……本当に復活するのですか……」
そこにいる全員が、その動きに気付き、見守っていた。
ヴァルが、短剣を持ち、構える。
「んぴゅーい」
みんなが見守る中、声がした。
それは、今までの翼竜とは違う。
小さく、確かに鳴き声だと言えるような声だった。
もぞもぞと、そこにいた全員の予想とは裏腹に、すっかり砂になってしまった翼竜の身体があったその場所で起き上がったのは、想像以上に小さな生き物だった。
「何……」
それは、エマの手のひらの上にぽすんと乗っかりそうな、白く、丸い、ふわふわした毛玉のような生き物だ。
よちよちと2、3歩歩くと、翼をバタつかせ、バタバタと飛ぶ。
飛ぶこと自体はできているが、あまり上手いとは言い難く、どこかバタバタと騒がしい飛び方だった。
「鳥……?」
そう呟いた瞬間、その鳥らしきものがこちらへ飛んでくる。
その瞬間、エマがビクッとした。
鳥のようだった。けれど、どこか鳥とは違う。
羽の形も、尾の形も。
ドラゴン……というよりは、毛で覆われたワイバーンといった感じだ。
見覚えが、ある気がする。
くちばし、尾、翼…………。
「もしか……して……。よくりゅ……」
それは、確かに翼竜だった。
身体のサイズが小さく、声も小さく、まるで鳥の子供のようだったけれど。
「んぴゅーい!」
飛んできた翼竜から守るようにヴァルがエマを庇う。
翼竜はそのままヴァルの腕に取り付いた。
ばっちーん!
ヴァルの腕に取り付いた翼竜を平手で叩き落としたのは、エマだ。
「ヴァルを食べないで!!!!」
翼竜の方は、後ろへ叩き落とされたものの、空中でなんとか堪える。
どちらかと言えば、エマの手の方がダメージが大きい。
小さくても翼竜は翼竜なだけあって、ふわふわとしているけれど、外殻は見た目よりも硬い。
「んぴゅー!」
懲りずに向かってくる翼竜を、エマは手で叩き続けた。
「だめーーーー」
周りの騎士や魔術師達が、翼竜に向かって行こうとしたけれど、それを止めたのはレーヴだった。
「エマ……」
半泣きで翼竜を叩き続けるエマの腕を、ヴァルが掴む。
「大丈夫だから。エマの手の方が痛いだろ」
「でも、こいつ、ヴァルのこと、食料だと思ってるかもしれないんだよ」
「こんな口で食べられるものなんてたかが知れてるよ。大丈夫」
確かに、その翼竜はエマの手のひらサイズで、くちばしはどれだけ開いても小指の爪ほどだ。
エマが黙って手を離すと、翼竜はヴァルの肩に乗り、ヴァルの服をくちばしで摘みながら、嬉しそうに「んぴゅい」と鳴いた。
◇◇◇◇◇
翼竜は全ての精霊を味方につけた自然現象。可視化された「不変」です。
性別はありません。
黙って、立ち尽くすレーヴをじっと見ていた。
力無く立っているのに、目は輝いている。
誰も声も聞こえないみたいに、ただ、一点だけを見つめていた。
映画のワンシーンみたいだ、と思う。
例えば、この世界に一つの宝を見つけた冒険家のような。
この世界に……ひとつの……?
ゆっくりと、首を、翼竜の方へ動かす。
「あ……れ……」
震える声を出したのは、ヴァルだった。
そりゃあ、そうだろう。
自分を殺した翼竜を、やっと倒したと思っていたのに、その身体のあたりがずもももも……と動いていたのだから。
「え……」
レーヴは驚愕の瞳で、けれど、期待の眼差しでその動く何かを見ていた。
「まさか……本当に復活するのですか……」
そこにいる全員が、その動きに気付き、見守っていた。
ヴァルが、短剣を持ち、構える。
「んぴゅーい」
みんなが見守る中、声がした。
それは、今までの翼竜とは違う。
小さく、確かに鳴き声だと言えるような声だった。
もぞもぞと、そこにいた全員の予想とは裏腹に、すっかり砂になってしまった翼竜の身体があったその場所で起き上がったのは、想像以上に小さな生き物だった。
「何……」
それは、エマの手のひらの上にぽすんと乗っかりそうな、白く、丸い、ふわふわした毛玉のような生き物だ。
よちよちと2、3歩歩くと、翼をバタつかせ、バタバタと飛ぶ。
飛ぶこと自体はできているが、あまり上手いとは言い難く、どこかバタバタと騒がしい飛び方だった。
「鳥……?」
そう呟いた瞬間、その鳥らしきものがこちらへ飛んでくる。
その瞬間、エマがビクッとした。
鳥のようだった。けれど、どこか鳥とは違う。
羽の形も、尾の形も。
ドラゴン……というよりは、毛で覆われたワイバーンといった感じだ。
見覚えが、ある気がする。
くちばし、尾、翼…………。
「もしか……して……。よくりゅ……」
それは、確かに翼竜だった。
身体のサイズが小さく、声も小さく、まるで鳥の子供のようだったけれど。
「んぴゅーい!」
飛んできた翼竜から守るようにヴァルがエマを庇う。
翼竜はそのままヴァルの腕に取り付いた。
ばっちーん!
ヴァルの腕に取り付いた翼竜を平手で叩き落としたのは、エマだ。
「ヴァルを食べないで!!!!」
翼竜の方は、後ろへ叩き落とされたものの、空中でなんとか堪える。
どちらかと言えば、エマの手の方がダメージが大きい。
小さくても翼竜は翼竜なだけあって、ふわふわとしているけれど、外殻は見た目よりも硬い。
「んぴゅー!」
懲りずに向かってくる翼竜を、エマは手で叩き続けた。
「だめーーーー」
周りの騎士や魔術師達が、翼竜に向かって行こうとしたけれど、それを止めたのはレーヴだった。
「エマ……」
半泣きで翼竜を叩き続けるエマの腕を、ヴァルが掴む。
「大丈夫だから。エマの手の方が痛いだろ」
「でも、こいつ、ヴァルのこと、食料だと思ってるかもしれないんだよ」
「こんな口で食べられるものなんてたかが知れてるよ。大丈夫」
確かに、その翼竜はエマの手のひらサイズで、くちばしはどれだけ開いても小指の爪ほどだ。
エマが黙って手を離すと、翼竜はヴァルの肩に乗り、ヴァルの服をくちばしで摘みながら、嬉しそうに「んぴゅい」と鳴いた。
◇◇◇◇◇
翼竜は全ての精霊を味方につけた自然現象。可視化された「不変」です。
性別はありません。
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