40 / 101
40 緊張なんて忘れてしまえ(3)
しおりを挟む
「シューーーーーーーート!」
2組のシュートが決まる。
ケントの声に合わせて、わっと勝利を祝う言葉が、観客席を飛び交う。
なんだ、これ……。
こんな……高揚感…………。
そっか。
みんなを楽しませられなかったらどうしようって、ずっと思ってたけど……そうじゃないな。
みんなと楽しむんだ。
俺が。
礼央と二人、舞台でゲームをしたことを思い出す。
あれも楽しかった。
まず自分が楽しまないと、みんなが楽しめない。
俺は、楽しんでいいんだ。
そう、普通で。
「2年2組に2ポイントー!これは幸先いいゾロ目ですね」
「そうですね。1組には空気に呑まれず頑張ってほしいところです」
「さて、またボールを取ったのは、1組、パティシエ田中だー!」
ケントが言うと、その声に合わせて「きゃー」という黄色い声援が上がった。
田中先輩にはもうファンがついたらしい。
「またもや鋭いパス!的確にパスで繋いでいきますが、ここで!」
「また新田先輩ですね」
「巨体サックス!巨体サックスが来ました!」
「ちょ……っ、ケント、それもう名前入ってない」
ツッコむと、観客席から笑いが起こった。
「新田先輩だから。俺らシメられる前に名前入れて、名前」
「おう!」
いい返事だったにも関わらず、
「巨体サックス先輩!巨体サックス先輩が取っ……」
「先輩付ければいいってもんじゃないぞ」
再度ツッコんで笑いが起こったところで。
「…………っ!」
ケントが、息を呑む。
「!!」
目の前で、新田先輩の巨体から、ボールを叩き落とす姿が見えた。
「1組、ボール取ったああああああ!あれは、名塚先輩だ!」
「バド部の名塚先輩です」
そこからは、まるで時間が止まったみたいだった。
コートの丁度真ん中の辺り。
キュッとしゃがみ込んだ名塚先輩は、そのままその場で飛び上がって、ボールを投げた。
ザンッ!
まるでそれ以外の軌道なんて無いというように、弧を描いたボールは、ゴールの中へ落ちた。
「きゃああああああああああ」
周りの歓声でハッとしたケントが、観客と一緒になって叫ぶ。
「すっげえええええええええ!」
亮太も、解説として実況を取り戻さないとなんて思うこともなく、
「うわああああああああああ」
すっかり夢中になって叫んでいた。
二人同時にハッとする。
最初に声を出したのはケントだった。
「3ポイントシュート決まったぁぁぁぁぁ!」
「今のは驚きましたね!!観客席もすごい歓声でした!!」
「まるで絵画を見ているようでした!世界がすろぉぉぉぉぉもーしょん!!!!」
「バド部の1年達からも一目置かれているという話でした。なんでもシャトルが上からビシィっと降って来るとか」
そして最後にケントがため息を吐くような声で、
「ほんと、すげぇ……」
と感嘆の声を上げた。
◇◇◇◇◇
バド部の名塚先輩……イケメンに違いない。
2組のシュートが決まる。
ケントの声に合わせて、わっと勝利を祝う言葉が、観客席を飛び交う。
なんだ、これ……。
こんな……高揚感…………。
そっか。
みんなを楽しませられなかったらどうしようって、ずっと思ってたけど……そうじゃないな。
みんなと楽しむんだ。
俺が。
礼央と二人、舞台でゲームをしたことを思い出す。
あれも楽しかった。
まず自分が楽しまないと、みんなが楽しめない。
俺は、楽しんでいいんだ。
そう、普通で。
「2年2組に2ポイントー!これは幸先いいゾロ目ですね」
「そうですね。1組には空気に呑まれず頑張ってほしいところです」
「さて、またボールを取ったのは、1組、パティシエ田中だー!」
ケントが言うと、その声に合わせて「きゃー」という黄色い声援が上がった。
田中先輩にはもうファンがついたらしい。
「またもや鋭いパス!的確にパスで繋いでいきますが、ここで!」
「また新田先輩ですね」
「巨体サックス!巨体サックスが来ました!」
「ちょ……っ、ケント、それもう名前入ってない」
ツッコむと、観客席から笑いが起こった。
「新田先輩だから。俺らシメられる前に名前入れて、名前」
「おう!」
いい返事だったにも関わらず、
「巨体サックス先輩!巨体サックス先輩が取っ……」
「先輩付ければいいってもんじゃないぞ」
再度ツッコんで笑いが起こったところで。
「…………っ!」
ケントが、息を呑む。
「!!」
目の前で、新田先輩の巨体から、ボールを叩き落とす姿が見えた。
「1組、ボール取ったああああああ!あれは、名塚先輩だ!」
「バド部の名塚先輩です」
そこからは、まるで時間が止まったみたいだった。
コートの丁度真ん中の辺り。
キュッとしゃがみ込んだ名塚先輩は、そのままその場で飛び上がって、ボールを投げた。
ザンッ!
まるでそれ以外の軌道なんて無いというように、弧を描いたボールは、ゴールの中へ落ちた。
「きゃああああああああああ」
周りの歓声でハッとしたケントが、観客と一緒になって叫ぶ。
「すっげえええええええええ!」
亮太も、解説として実況を取り戻さないとなんて思うこともなく、
「うわああああああああああ」
すっかり夢中になって叫んでいた。
二人同時にハッとする。
最初に声を出したのはケントだった。
「3ポイントシュート決まったぁぁぁぁぁ!」
「今のは驚きましたね!!観客席もすごい歓声でした!!」
「まるで絵画を見ているようでした!世界がすろぉぉぉぉぉもーしょん!!!!」
「バド部の1年達からも一目置かれているという話でした。なんでもシャトルが上からビシィっと降って来るとか」
そして最後にケントがため息を吐くような声で、
「ほんと、すげぇ……」
と感嘆の声を上げた。
◇◇◇◇◇
バド部の名塚先輩……イケメンに違いない。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
【完結】それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる