乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい

ゆの

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襲撃の理由は

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「黙って笑ってないで何でこんなことしたのか、納得する理由をお願いします。」

語気を強めてノア先生を糾弾すると、彼は深く息をつき立ち上がり、床に着いた方の膝を軽く払う。

「…その前に、アリーチェはいつから襲撃者は僕だと気づいたのかな?」
「2度目の攻撃が来た時に薄らと。この屋敷の警備はとても厳重ですし、透明化の魔法が使える上に別の魔法も同時に使える実力を持つ人はそんなにいないです。確信を得たのは訓練場の中央まで行き、魔力によって索敵をした時です。ノア先生の魔力を感じました。」
「完璧だね、予想以上。先程アリーチェが言ったことが私が君を襲撃した理由だよ。魔力による周辺の索敵はなかなか出来るものではなくて、大体1年ほど練習をするか、実戦で身につけるかなんだ。それと、先程使っていた身体強化もすぐに身につくものじゃない。素晴らしいよ。」
「…つまり、魔力による索敵や身体強化を実戦で身につけるために襲撃したと?」
「正解♡」

その言葉に私は一気に脱力した。足にも力が入らなくなり、崩れ落ちる寸前で身体がフワリと風によって宙に浮き、ノア先生の元へ運ばれた。すると彼は私をお姫様だっこして歩き出した。恥ずかしさと戸惑いから涙目で睨みつけそうになり、前回の出来事を思い出し唇をぐっと噛んで堪える。そして私はそっぽを向いて口を尖らせた。

「…わざわざ運んで頂かなくても結構ですが?それにかなりの魔力を込めた雷撃をお見舞いしたはずなのになぜ立てるのですか?あなたは本当に人間ですか?」
「ふふっ、ひどい言いようだね。これでもかなりダメージを受けてるよ?誰かと戦って片膝を着くなんて初めてだし、まだ手足が痺れてる。本当にかなりの魔力を込めたみたいだね、僕じゃなかったら死んじゃってるかもよ?」

そう小首をかしげながら、ダメージを受けている様子を全く見せず微笑む姿に少し頭にきてフンッとさらにそっぽを向く。

「ノア先生じゃなかったらやってません。少しは痛い目を見ればいいと思ってやりましたの。」

私がぶっきらぼうに言い捨てると、彼が急に立ち止まった。そして小刻みに揺れ始め、何事かと見上げると彼が大声を上げて笑いだした。私をお姫様だっこしていなかったら確実に腹を抱えて笑っていたであろうほどの大笑いに、私は呆気に取られて目を点にした。どのくらい経っただろうか、彼が息を整えると、笑い涙を浮かべた瞳を細めて私へ向かって微笑んできた。なかなか見れない涙(笑い涙だが)と蕩けるような微笑みを至近距離で向けられて思わずドギマギしてしまう。思わず目をそらすとフッと微笑んだ声が聞こえた。

「アリーチェは本当に僕を楽しませてくれるよね。…そういう強気な子ほど虐めたくなるんだよね」

聞こえてはいけない言葉が聞こえた気がした。逸らした目を戻せない。私は何度この人の地雷を踏むんだろうか、と気が遠くなっていくのを感じた。

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