同級生で美少女の巫女さんが、陰キャの俺に興味を持って追いかけてくるのは何故なのか?

波瀾 紡

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【12:わが校の叶姉妹とゲーセン】

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「天心くーん、帰りませんかぁ?」

 神凪と叶姉妹が連れだって教室を出るのを眺めてたら、相変わらずの舌っ足らずな声が聞こえた。

「あ、ごめん日和。今日はちょっと寄りたいとこがあるんだ。先に帰ってくれ」
「え~? 最近天心君が冷たいですゥ」

 やばい。まだ教室には何人かの男子が残ってる。そんな日和のセリフを聞かれたら、また『陰キャのくせに天使様と仲良くするな』って恨みを買う。

 俺は声をひそめて日和に話しかけた。

「おい日和。教室では親しげに関わってくるなって言ってるだろ」

 日和は頰を膨らませて不満そうに「はぁい」と小声で呟いた。
 日和には何の罪もないから悪いんだけど、仕方がない。

 そうだ、少しはお詫びをしとくかと考えて、俺も小声で返した。

「そうだ日和。今度の休みにたい焼き買ってやるよ」
「え~っ、ホント? やったぁ。全然許しますぅ」

 日和はあっという間に、にこにこ笑顔になった。
 日和の大好物、たい焼きの効果は、最終ウエポン並みの威力だな。

 嬉しそうな顔のまま、日和はいそいそと下校していった。

◆◇◆

 私と叶姉妹は、駅前のゲーセンに着いた。

 実は私はゲーセンが大好きなんだけど、清楚な巫女さんイメージを通している以上、自分から誘って行くなんてことはできない。

 ましてや一人で行くなんて考えられない。だから乃絵瑠《のえる》ちゃんと茶亜羅《さあら》ちゃんから誘われて、思わず「ラッキー!」って、心の中のリトル神凪が小躍りしてしまった。

「ねぇ神凪。UFOキャッチャーやる? それとも先にプリクラ?」
 のえるちゃんのセリフに、いつも通りさあらちゃんが復唱する。
「UFO? プリクラ?」

 この二人は、なんでいちいち輪唱のようにしゃべるんだろ。変なの。

「えっと……ゲームセンターと言えばあれでしょ。えっと格《かく》ゲー?」
「格ゲーって格闘ゲーム?」
「格ゲーって格闘ゲーム?」

 二人は目を丸くしてる。私、何か変なことを言ったかしら?

「うん、そう。おかしい?」
「おかしい!」
「おかしくない!」

 あっ、意見が分かれた。なんだか変なの。

「ねぇ、さあら。優等生の女の子が格ゲーっておかしくない?」
「おかしくないよ、のえる。好き好きじゃん」

 優等生の女の子が格ゲーっておかしいって思う子もいるんだ。今まで周りの子は何も言わなかったから、気づかなかった。




「凄いね、神凪! 4連勝じゃん!」
「うん、凄い凄い! 相手の男の人、半泣きだったよ」

 のえるちゃんとさあらちゃんが驚いて褒めてくれてるけど、そんなことはない。このゲーセンの人達が弱すぎ。

 相手がいなくなって、ゲームはやめにした。

「じゃあさ神凪。そろそろプリクラ撮らない?」
「三人でプリクラ撮ろー」

 この二人。派手好きだし、今まで私とは合わないのかと思っていたけれど、案外いい子だ。




「じゃあそろそろ帰ろっか」
「そろそろ帰ろうー」

 三人でプリクラ撮ってUFOキャッチャーして、帰ることになった。

「マックでなんか飲んで帰ろうよ」
「マック、マック。何飲もっかなぁ」


 二人の提案でマックに行って、四人がけテーブルでアイス紅茶を飲んでたら、向かい側に座るのえるちゃんが、少し言いにくそうに口を開いた。

「あのさぁ神凪。ちょっと会ってほしい人がいるんだよねぇ」
「えっ? 誰?」

 のえるちゃんの横に座ってるさあらちゃんが今度は喋る。

「あのね、いい人なんだよ。神凪に話したいことがあるんだって」

 私に話したいこと?
 私が知ってる人?


「あ、お待たせ」

 声がした方を向いたら、見覚えのある男性が立ってる。

「横、失礼するよ」

 ええっ!? 爽やかに笑いながら私の隣の席に腰かけたのは、カラオケ屋のタカヤさんだ。
 なんでこの人が私に話があるの? 何を企んでるの?

「な、なぜあなたがここに?」
「あれ? のえるとさあらから聞いてない?」

 はぁ? いったい何の話?

「どうしてもさくらちゃんと話したいことがあってさ、この二人に無理を言って、さくらちゃんを呼び出してもらったんだ」

 な~に~!?

 二人を睨むと、二人とも苦笑いを浮かべてる。

 せっかくいい子達だと見直してたのに。
 はめられたっ! こいつら~!

「じゃあ私たちはこれで」
「じゃあ私たちは帰るね」
「ちょっ、ちょっと待って!」

 二人はあたふたと立ち上がって、店を出て行く。私も立ち上がりかけたけど、タカヤさんに腕を掴まれて、無理矢理座らされた。

「まあそう急がずに」
「話ってなんですか?」
「さくらちゃんに謝りたいんだ」

 はっ? 何を言いたいのよ?

「この前ウチの店で、竜二が君らに酷いことをしたらしいね。俺は全然知らなかったんだけど、君らが急に帰ったもんだから、後で竜二に聞いたら全部白状した」
「そ、そうなんですか……」
「あのバカ野郎が、人の店で犯罪まがいのことをしやがって」

 高柳君は、ホントに全部正直に言ったみたいだ。で、なんでタカヤさんがなんで謝るの?

「アイツの兄貴分として、さくらちゃん達に迷惑をかけたのを、直接謝りたいと思ってね。申し訳ない!」

 タカヤさんがペコっと頭を下げてる。
 あれ? もしかして、この人案外いい人なのかも?

 茶髪のロン毛とか、日焼けした顔とか、女遊びしてそうなイケメン顔とか。見た目でちゃらちゃらした人って決めつけてた。

「いえ、顔を上げてください。タカヤさんのせいではないし」
「じゃあ許してくれるの?」

 タカヤさんは、はにかむような笑顔で頭を掻いてる。ちょっと可愛い感じ。やっぱりいい人なんだな。

「はい。そういうことなら、許すも何もタカヤさんは何も悪くないから、全然いいですよ」
「ありがとう。さくらちゃんは、やっぱり素晴らしい人だ」
「いえいえ、そんな……」
「じゃあ店を出ようか」
「あ、はい」

 タカヤさんが立ち上がって、私も席を立った。


 慌てて後を追って店を出ると、タカヤさんは「ちょっと行こうか」と微笑む。

 え? どこに?

「さくらちゃんと二人で、ゆっくり話したいなぁ」

 なんだこれ? なんだか急にナンパな雰囲気をかもし出してるし。
 やっぱりちょっとヤバい男かもしれない。

 ん? 今見えたのは何?

 微笑むタカヤさんの背後で、今、何か黒い影がゆらりと見えたような気が。

「あ、いえ。今日は帰らないといけないので、残念ですけど……」
「そんなこと言わずにさ。ちょっとだけだから、行こうよ」

 いや、これは危険な予感がする。
 付いて行ってはいけない。

 その時突然、タカヤさんが私の手首をがっしりつかんだ。つかまれた手首が痺れるような感じがする。

 そしてその痺れが、全身にぞわっと広がる。不快というより、気持ちいい。この感覚は何?

「いいでしょ? 行こうよ」
「は、はい」

 えっ? 付いて行く気なんてないのに。なぜか意志とは別に、私の身体が勝手に返事してる。身体も思うように動かない。

 これはいったい、どういうこと?
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