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三章
07. 沖縄旅行編:定食屋と最後の買い物
3日目の朝、幾分のっそりと起き出した二人は、最後の温泉とプールを満喫した。
昨晩のカレーとチーズナンを大量摂取していた鳴成と月落は、用意された極めて軽めの中華朝食に心なしか安堵した。
運んできたスタッフ曰く、カレーの翌日は朝食を抜くかあまり食べない宿泊客が多いとのことで、ヴィラ側も諸々を察して量を調整しているらしい。
足りなさそうな客には別途追加の皿が出されるようで、鳴成と月落にもその提案はされた。
ネギ、ザーサイ、松の実、パクチー、ゆで卵などを好きにトッピングした帆立貝柱の出汁が効いた中華粥に、サラダと野菜たっぷりの点心で十分に満足した二人は、それを断った。
「忘れ物はないですか?」
「はい、大丈夫だと思います」
「アメリカンビレッジのお土産は?」
「僕のスーツケースの中に入ってます」
「水族館のお土産?」
「それもスーツケースの中に」
「シーサーは、私が大事に持って帰ります」
元々荷物の少ない男旅のため、昨晩の夕食前に大体のパッキングは終わらせていた。
初めて一緒に手作りしたからか、その愛らしい造形からか、いたく気に入られたペアの白黒シーサーは、鳴成がその箱を最後の最後にそっとバッグに仕舞った。
その尊すぎる光景に、月落が気づかれぬようにスマホで写真を撮ったのはここだけの秘密だ。
「何か置き忘れたとしてもすぐ宅配で送ってもらえるので、心配はいりません」
「それは安心です。でも、スタッフの方のお手を煩わせるのは、なるべく避けたいです」
「それはお気遣いをありがとうございます。代表者に変わりまして御礼申し上げます」
「あはは。そういうのも様になりますね?」
「若干バカンス仕様なので、締まりはないですが」
そう言う月落は、彼にしては珍しくアースカラーのボタニカル柄のシャツを羽織っている。
下は黒のパンツと同色のサンダル。
対する鳴成は、ブルーグレーの麻とシルクの混紡サマーニットにベージュのコットンパンツ、白いスニーカーだ。
「きみは柄の入った洋服はあまり着ないですが、得意ではないですか?」
「特別意識したことはないんですが、がちゃがちゃしてる服はそう言えばそれほど持ってないですね。色もモノトーンがほとんどですし。先生も柄物はあまり着ないですよね?」
「普段ネクタイで柄を着ているからかもしれません。あと、春夏よりも秋冬の方が、私服のジャケットやセーターで着る機会が多いですね」
昨年の9月に出会い、付き合い始めたのは今年の5月。
私服を見る機会は、衣替えをした春以降が断然に多かった。
見逃した秋冬仕様の鳴成に心を馳せると共に、月落は固く心に誓った。
「先生、僕と今年の後半も沢山デートしてください」
錬鉄製の玄関扉を開ける前、すこぶる真面目な顔で可愛いことを言う年下の恋人に目を細めながら、鳴成はすぐに了承した。
「ええ、私服で沢山デートしましょうね」
―――――――――――――――
レセプションにてチェックアウトをしていると、初日のデジャヴの如く、従叔母とその秘書が現れた。
ヤンバルクイナ柄の赤いワンピースの後ろに、クマノミが散りばめられたネイビーのかりゆしウェア。
「渉ちゃん!」
チェックアウトの手続きをしていた男性スタッフがすぐさま空けた席に、実咲が座る。
「実咲叔母さん、三田山さん、おはようございます」
「おはよう。思ったよりも早いけど、もう帰るの?」
時刻は10時前。
チェックアウト時間に制限のない特別待遇を受けているにしては早い出立だ。
「うん、お昼で寄りたい店が11時30分開店だから、それに並ぶためにもう行こうかなって」
「暑さ対策は持った?」
「ハンディファン2個持ちで先生を急速冷蔵する予定」
「表現の仕方がいくぶん物騒だけど、熱中症にならないためには効果的ね。水分もきちんと摂りなさい」
「うん、ありがとう」
実咲の後ろに控えていた三田山に、冷えたペットボトルと常温のペットボトルを数本渡される。
礼を言って受け取った。
「それで、羽根は伸ばせた?」
「うん、お陰様で存分に伸ばせた」
「鳴成准教授も、お寛ぎになれた?」
「はい、とても居心地の良いヴィラでした。料理も美味しかったですし、何より温泉は持って帰りたいほどに気に入ってしまって」
「解放感溢れる温泉、気持ち良かったでしょう?」
「ええ、朝晩と入りました」
「満喫されたようで何よりね。ひょっとして、私には温泉の神様が味方してるって渉ちゃんから聞いてる?」
「伺っています」
「ご自宅のお風呂を温泉にしたい日が来たら連絡をちょうだいね。何とかするから」
いくら何でも無茶なのに、不思議と何とか出来てしまいそうなオーラがあるのが凄い、と鳴成は胸中で思う。
新しく掘った土地ではなく現在既に開発された土地に温泉を出すというのはどう考えても無理難題であるのに、いざという時には夢見てしまいそうだ。
後ろに立つ三田山もそんな実咲を止めずに朗らかに微笑んでいるせいで、異様に現実味が増す。
「ご実家のお風呂でも大丈夫だから、遠慮なく言ってね。残念ながら効能は指定できないけれど」
「はい、その際はよろしくお願いいたします」
笑みを嚙みながら鳴成は返事をする。
月落の愉快な親戚は自然体で突拍子がなくて、そのオリジナリティの高さには好感度しかない。
「これから大学は後期授業の始まりでしょう?翻訳作業も同時並行でされると伺ってるから、お身体に気をつけてね」
「ありがとうございます。沖縄で英気を養えましたので、今後の活力にしながら元気に過ごせそうです」
「何か困ったことがあったら、渉ちゃんに投げちゃうのよ。この子が何とかするから」
そう言われて鳴成が視線を移すと、黒髪の青年はうんうんと大きく首を振りかぶっている。
「はい。渉さんは頼り甲斐のある方なので、一番に相談しようと思います」
「あら、渉ちゃん、聞いた?三田山も聞いた?頼り甲斐のあるなんて極上の褒め言葉じゃない?」
「聞いた。嬉しすぎて今ならドーバー海峡も横断できそう」
「幼い頃から成長を見守ってきた渉様への愛あるお言葉に、涙がちょちょ切れる三田山でございます。ほんっとうにお幸せそうで胸いっぱいでございます」
「私も胸が糖分いっぱいでブラックコーヒーで中和したい気分ね。さて、私たちはそろそろ行くわ。チェックアウトは終わったんでしょう?」
脇に控えていた男性スタッフが慇懃に目だけで返事をする。
それを合図に、座っていた三名が立ち上がる。
「渉ちゃん、気をつけてね」
「うん、ありがとう」
「鳴成准教授、またお会いできるのを楽しみにしてるわね」
「ありがとうございます。またご挨拶できる日を願っています」
実咲、三田山、そして数人のスタッフに見送られながらヴィラを後にする。
相変わらず快晴の空の下、灼熱の光を跳ね返すレーシングイエローは、沖縄自動車道を通って一気に南下した。
見納めだとでもいうように、相変わらず助手席で茶色のサングラスを外そうとする鳴成を宥めながら、月落も流れていく景色を堪能する。
1時間10分ほどで到着した国際通りでパーキングに駐車したあと、目的の沖縄料理屋へと向かう。
県庁前の交差点を渡って4つ目の角を曲がったところにある店の前には、開店前だというのに既に何組か並んでいた。
年季と清潔感が同居する外観と、平日だというのに列を成す客入りの良さが期待を増幅させる。
「先生、暑いですか?」
「何とか大丈夫です。あの、1台はきみが使った方が良いのでは……?」
実咲に宣言した通り、持ってきたハンディファンで鳴成の顔を左右に挟みながら風を送る月落。
両側から最強の風量で冷やされる鳴成は、まるで自分は熱暴走を起こしたパソコンのようだという感想を抱く。
道路側に立っている年下の男は背中の部分が日向に出ており、自分よりも間違いなく暑そうだ。
「涼んでる先生を見てると僕も涼しくなるので、お構いなく」
「それはたぶん妄想かなと思うんですが……それかきみの方が暑さにやられて、思考回路がショートしている可能性があります」
心配だ、と顔の右側を陣取っているハンディファンを奪うと、鳴成はそれを月落の顔のすぐ近くで固定した。
「あ、これ結構涼しいですね」
「ええ、十分パワフルなので2台の豪華版じゃなくて大丈夫です」
「でも、先生。これじゃ先生の顔が全然見えません。はっきり言って寂しいです」
「私の顔を見ることよりもきみの体調管理の方が重要なので、不満はしばらく見て見ぬ振りをしてください」
「うーん、それはだいぶ難しそうです。暑さと引き換えに先生を眺められるなら、一生そっちを選びます」
「きみが倒れてしまうと私が悲しいので、我慢してください」
「先生……!感動して卒倒しそうです」
「倒れないでと言った私の話をきちんと聴いていましたか?」
言葉でじゃれ合いのラリーを続けながら互いの顔にハンディファンを翳す男性二人組を、周囲の人々はチラチラと横目で観察している。
そんな状況には一切我関せずで、スマホでメニューを見ながら相談していると開店の時間となった。
振り返ると、いつの間にか後ろにも長い行列が伸びていて驚く。
第一陣で案内され奥のテーブル席に通されると、すぐさまおしぼりと水が出された。
「先生は定番定食にしますか?」
「ええ、そうします。あと、海ぶどうをシェアしたいです」
「是非」
「きみはきっと、全部盛り定食ですね?」
「はい、ご推察の通りです。先生、もずくの天ぷらもシェアしましょう?」
「ええ、そうしましょう」
注文を終えて、昼でも少し薄暗い渋い趣きの店内を見渡しながら会話を重ねる。
続々と入ってくる食事客でカウンター席も座敷も埋まり、厨房は火を噴く忙しさのようだ。
エプロン姿の店員が行き来するのを楽しく見ていると、注文したシークヮーサージュースと氷の入ったグラスがテーブルに置かれた。
「缶だ。ジュース飲むのも久しぶりなんですが、缶はもしかして小学生以来かもしれないです」
「ヴィラにも缶のジュースは置いてなかったので、私も久しぶりに見た気がします」
「子供の頃よく行ってた下町の焼肉屋さんで、いつも缶のサイダーを飲んでたのを急に思い出しました。懐かしいです」
「月落家と下町の焼肉屋さんが、あまり上手く結びつかないんですが?」
「母の実家が江戸川区だったので、母方の祖父母に会いに行くといつも連れて行ってもらったんです。父方の祖父母も結構な頻度で参加したりして、わいわい食事してました。座敷のあるお店だったので、貸し切りで食べるのが特別感があって楽しかったですね」
「畳は私も好きです。我が家は母の趣味で洋風を全面に主張した内装なので、子供の頃は日本家屋や畳にとても憧れがありました」
「お父様のご実家には和室はなかったんですか?」
「残念ながら。父方の祖母も洋風が好きだったので、アールヌーボー調の家具が揃っている家でした」
「お母様と気が合いそうですね?」
「ええ、まるで血の繋がった娘かと思うほどに意気投合していました」
ローカルさが滲む缶の蓋を開けて、黄色い中身をグラスに注ぐ。
すっきりとした酸味で喉を潤す。
未だ体内のどこかに残るカレーの濃ささえ、洗い流すよう。
「何だかカロリーを摂りすぎな気もしますが、それは東京の地を踏むまで忘却の彼方へ放り投げておこうと思います」
「先生、ご安心を。沖縄で摂取したカロリーは、羽田上空で綺麗に消えてなくなる予定です」
「きみはプールでカロリー消費に勤しんでいましたが、私は露天風呂で休んでいただけなので、たとえ羽田上空でカロリーが消滅しようともそれでは到底間に合わない気がします」
「先生の過剰分は僕が発散するので、ご心配には及びません」
「それは無理です。いくら頼り甲斐はあると言っても、きみは魔法使いではないでしょう?」
「先生がお望みとあらば、使えるように修行します」
「あはは、真面目な顔で言うのはやめてください」
就職の面接に臨むような面差しで見つめてくるのは反則だ。
冗談に不可解な説得力が加わって、得体の知れない真実味が生まれてしまう。
「お待たせしました、定番定食と全部盛り定食です」
中身のない会話を続ける二人の前に、幾つもの皿がテーブルいっぱいに並べられていく。
ラフテー
沖縄おでん
島豆腐チャンプルー
ミミガー
ジーマーミ豆腐
パパイヤイリチー
グルクンの唐揚げ
海ぶどう
天ぷら
いなむるち
ご飯
沖縄おでんが入った鳴成の皿は、年下の男によって回収された。
煮崩れを起こす一歩手前まで煮込まれたテビチの骨、それを月落が器用に外していく。
その過保護な振る舞いを凝視していると、「恋人は骨抜きにしろっていう大伯母の遺言です」とトーンを落とした声で囁かれて、鳴成は眉根を寄せて苦笑いするしかなかった。
戻ってきた皿を礼と共に貰い、気を取り直して食事を始める。
沖縄式豚汁のいなむるちを飲んでミミガーの食感を楽しみ、ご飯が進む味付けのチャンプルーを頬張り、ジーマーミ豆腐の喉越しに癒される。
どれも絶品だが、両者が思わず顔を合わせたのが。
「ラフテーが……!味噌……!」
「珍しい色合いだと思ってましたが、味噌味も美味しいですね」
店内の灯りを吸収した上で倍量跳ね返しているのでは、と疑いたくなるほどにてらてらと光り輝く三枚肉の角煮は、とろとろの口溶けもさることながら、その味は唯一無二の美味しさだ。
脂身の多さも気にならないほどに、絶妙な加減で煮込まれている。
ご飯が進みすぎて、月落は白米をおかわりした。
「全部盛り定食は量が多いっていつも言われるんだけど、お兄さんは沢山食べてくれるから見てて気持ち良いわ」
すぐに茶碗いっぱいのご飯を持ってきた花柄エプロンのお母さんが、そう言い残して去って行く。
「……もうすぐ31になろうというれっきとした大人が、高校生男子に対するかのような褒め言葉を頂戴してしまいました」
「名誉なことですね。誇らしいです」
恥ずかしさのあまり、箸を置いてテーブルに突っ伏しそうになる月落。
それを、笑いながら励ます鳴成。
楽しい昼食は、それからしばし続いた。
しっかりと腹を満たした二人はそのまま国際通りを突っ切って、壺屋やちむん通りへと出た。
アメリカンビレッジでも沖縄の焼き物を手に取ってみたが、車移動で破損することを懸念して購入を断念していた。
この旅で揃いのTシャツを買ったりペアのシーサーを作ったりしたが、何なら揃いの食器も欲しいと気分が盛り上がって最終日に時間を作って店を訪れることにした。
土産物屋や工房、併設されたカフェなどを眺めながら歩き、気になった店に入る。
沖縄の海を固めて砕いて釉薬にしたようなエメラルドブルーの大皿を月落の自宅用に、唐草文様のマグカップを鳴成の自宅用に購入した。
「先生、これで秋からの翻訳作業も捗りそうですね」
「ええ、存分に書斎に籠れそうです。容量の大きいサイズがあって良かったです」
やちむん通りを戻り、来た時とは反対側の国際通りを通って県庁前へと帰る。
夏休み期間のベストシーズンを抜けた9月の平日は、人通りも落ち着いて歩きやすい。
沖縄県内唯一のデパートに入店すると2階へと上がる。
「クラシックティー、ハイビスカスブレンド、月桃ブレンド……悩みますね」
「5包入りですし、せっかくなので全部買いますか?」
「そうします。きみも一緒に飲んでくれたら、在庫過多も避けられそうですし」
「はい、是非、ご一緒させてください」
沖縄県産の紅茶は研究室用と互いの実家、そして親戚用に購入した。
「先生、買い残しはないですか?」
「ええ、ありません。まさか自分が旅行先でこんなに買い物をするとは思いませんでした」
「僕もです。お土産は比較的買う派ではあったんですが、両手にどっさりは未知なる体験でした」
「きみとお揃いのアイテムが増えて嬉しいです」
パーキングへ戻る道の途中、素直な感想を零した鳴成を月落は思わず脊椎反射で抱き締めそうになる。
手に持っている荷物を全部投げ出して。
危ない。
嬉しそうな鳴成を一瞬にして悲しませるところだった。
危ない、危ない。
大きく深呼吸をして気持ちを鎮める。
少々息が荒いのは、どうか見逃してほしい。
「渉くん、どうしました?」
「秋史さんがあまりにも可愛くて、止まりかけた呼吸を必死に取り戻してました」
「それは……大変ですね?」
月落を甘く苦しめる張本人は分かっているのかいないのか、首を傾げて更なる打撃を与えてくる。
それに命からがら耐えながら、月落はレーシングイエローのドアを開けた。
快適な空の上。
幸せな恋人同士はスマホに収めた沢山の写真を見ながら、尽きぬ思い出話に鮮やかな花を咲かせた。
ちなみに。
月落のスマホで撮影したナイトプールの写真を見合っていたら、不意に手が滑った。
隠し撮りした鳴成の寝顔が表示されてしまい、しばし時が止まる。
「これは何でしょうか?」と、口角を上げているにも関わらず全く笑っていない顔で凄む鳴成に、月落が必死で言い訳を連ねるのは小さな裏話。
昨晩のカレーとチーズナンを大量摂取していた鳴成と月落は、用意された極めて軽めの中華朝食に心なしか安堵した。
運んできたスタッフ曰く、カレーの翌日は朝食を抜くかあまり食べない宿泊客が多いとのことで、ヴィラ側も諸々を察して量を調整しているらしい。
足りなさそうな客には別途追加の皿が出されるようで、鳴成と月落にもその提案はされた。
ネギ、ザーサイ、松の実、パクチー、ゆで卵などを好きにトッピングした帆立貝柱の出汁が効いた中華粥に、サラダと野菜たっぷりの点心で十分に満足した二人は、それを断った。
「忘れ物はないですか?」
「はい、大丈夫だと思います」
「アメリカンビレッジのお土産は?」
「僕のスーツケースの中に入ってます」
「水族館のお土産?」
「それもスーツケースの中に」
「シーサーは、私が大事に持って帰ります」
元々荷物の少ない男旅のため、昨晩の夕食前に大体のパッキングは終わらせていた。
初めて一緒に手作りしたからか、その愛らしい造形からか、いたく気に入られたペアの白黒シーサーは、鳴成がその箱を最後の最後にそっとバッグに仕舞った。
その尊すぎる光景に、月落が気づかれぬようにスマホで写真を撮ったのはここだけの秘密だ。
「何か置き忘れたとしてもすぐ宅配で送ってもらえるので、心配はいりません」
「それは安心です。でも、スタッフの方のお手を煩わせるのは、なるべく避けたいです」
「それはお気遣いをありがとうございます。代表者に変わりまして御礼申し上げます」
「あはは。そういうのも様になりますね?」
「若干バカンス仕様なので、締まりはないですが」
そう言う月落は、彼にしては珍しくアースカラーのボタニカル柄のシャツを羽織っている。
下は黒のパンツと同色のサンダル。
対する鳴成は、ブルーグレーの麻とシルクの混紡サマーニットにベージュのコットンパンツ、白いスニーカーだ。
「きみは柄の入った洋服はあまり着ないですが、得意ではないですか?」
「特別意識したことはないんですが、がちゃがちゃしてる服はそう言えばそれほど持ってないですね。色もモノトーンがほとんどですし。先生も柄物はあまり着ないですよね?」
「普段ネクタイで柄を着ているからかもしれません。あと、春夏よりも秋冬の方が、私服のジャケットやセーターで着る機会が多いですね」
昨年の9月に出会い、付き合い始めたのは今年の5月。
私服を見る機会は、衣替えをした春以降が断然に多かった。
見逃した秋冬仕様の鳴成に心を馳せると共に、月落は固く心に誓った。
「先生、僕と今年の後半も沢山デートしてください」
錬鉄製の玄関扉を開ける前、すこぶる真面目な顔で可愛いことを言う年下の恋人に目を細めながら、鳴成はすぐに了承した。
「ええ、私服で沢山デートしましょうね」
―――――――――――――――
レセプションにてチェックアウトをしていると、初日のデジャヴの如く、従叔母とその秘書が現れた。
ヤンバルクイナ柄の赤いワンピースの後ろに、クマノミが散りばめられたネイビーのかりゆしウェア。
「渉ちゃん!」
チェックアウトの手続きをしていた男性スタッフがすぐさま空けた席に、実咲が座る。
「実咲叔母さん、三田山さん、おはようございます」
「おはよう。思ったよりも早いけど、もう帰るの?」
時刻は10時前。
チェックアウト時間に制限のない特別待遇を受けているにしては早い出立だ。
「うん、お昼で寄りたい店が11時30分開店だから、それに並ぶためにもう行こうかなって」
「暑さ対策は持った?」
「ハンディファン2個持ちで先生を急速冷蔵する予定」
「表現の仕方がいくぶん物騒だけど、熱中症にならないためには効果的ね。水分もきちんと摂りなさい」
「うん、ありがとう」
実咲の後ろに控えていた三田山に、冷えたペットボトルと常温のペットボトルを数本渡される。
礼を言って受け取った。
「それで、羽根は伸ばせた?」
「うん、お陰様で存分に伸ばせた」
「鳴成准教授も、お寛ぎになれた?」
「はい、とても居心地の良いヴィラでした。料理も美味しかったですし、何より温泉は持って帰りたいほどに気に入ってしまって」
「解放感溢れる温泉、気持ち良かったでしょう?」
「ええ、朝晩と入りました」
「満喫されたようで何よりね。ひょっとして、私には温泉の神様が味方してるって渉ちゃんから聞いてる?」
「伺っています」
「ご自宅のお風呂を温泉にしたい日が来たら連絡をちょうだいね。何とかするから」
いくら何でも無茶なのに、不思議と何とか出来てしまいそうなオーラがあるのが凄い、と鳴成は胸中で思う。
新しく掘った土地ではなく現在既に開発された土地に温泉を出すというのはどう考えても無理難題であるのに、いざという時には夢見てしまいそうだ。
後ろに立つ三田山もそんな実咲を止めずに朗らかに微笑んでいるせいで、異様に現実味が増す。
「ご実家のお風呂でも大丈夫だから、遠慮なく言ってね。残念ながら効能は指定できないけれど」
「はい、その際はよろしくお願いいたします」
笑みを嚙みながら鳴成は返事をする。
月落の愉快な親戚は自然体で突拍子がなくて、そのオリジナリティの高さには好感度しかない。
「これから大学は後期授業の始まりでしょう?翻訳作業も同時並行でされると伺ってるから、お身体に気をつけてね」
「ありがとうございます。沖縄で英気を養えましたので、今後の活力にしながら元気に過ごせそうです」
「何か困ったことがあったら、渉ちゃんに投げちゃうのよ。この子が何とかするから」
そう言われて鳴成が視線を移すと、黒髪の青年はうんうんと大きく首を振りかぶっている。
「はい。渉さんは頼り甲斐のある方なので、一番に相談しようと思います」
「あら、渉ちゃん、聞いた?三田山も聞いた?頼り甲斐のあるなんて極上の褒め言葉じゃない?」
「聞いた。嬉しすぎて今ならドーバー海峡も横断できそう」
「幼い頃から成長を見守ってきた渉様への愛あるお言葉に、涙がちょちょ切れる三田山でございます。ほんっとうにお幸せそうで胸いっぱいでございます」
「私も胸が糖分いっぱいでブラックコーヒーで中和したい気分ね。さて、私たちはそろそろ行くわ。チェックアウトは終わったんでしょう?」
脇に控えていた男性スタッフが慇懃に目だけで返事をする。
それを合図に、座っていた三名が立ち上がる。
「渉ちゃん、気をつけてね」
「うん、ありがとう」
「鳴成准教授、またお会いできるのを楽しみにしてるわね」
「ありがとうございます。またご挨拶できる日を願っています」
実咲、三田山、そして数人のスタッフに見送られながらヴィラを後にする。
相変わらず快晴の空の下、灼熱の光を跳ね返すレーシングイエローは、沖縄自動車道を通って一気に南下した。
見納めだとでもいうように、相変わらず助手席で茶色のサングラスを外そうとする鳴成を宥めながら、月落も流れていく景色を堪能する。
1時間10分ほどで到着した国際通りでパーキングに駐車したあと、目的の沖縄料理屋へと向かう。
県庁前の交差点を渡って4つ目の角を曲がったところにある店の前には、開店前だというのに既に何組か並んでいた。
年季と清潔感が同居する外観と、平日だというのに列を成す客入りの良さが期待を増幅させる。
「先生、暑いですか?」
「何とか大丈夫です。あの、1台はきみが使った方が良いのでは……?」
実咲に宣言した通り、持ってきたハンディファンで鳴成の顔を左右に挟みながら風を送る月落。
両側から最強の風量で冷やされる鳴成は、まるで自分は熱暴走を起こしたパソコンのようだという感想を抱く。
道路側に立っている年下の男は背中の部分が日向に出ており、自分よりも間違いなく暑そうだ。
「涼んでる先生を見てると僕も涼しくなるので、お構いなく」
「それはたぶん妄想かなと思うんですが……それかきみの方が暑さにやられて、思考回路がショートしている可能性があります」
心配だ、と顔の右側を陣取っているハンディファンを奪うと、鳴成はそれを月落の顔のすぐ近くで固定した。
「あ、これ結構涼しいですね」
「ええ、十分パワフルなので2台の豪華版じゃなくて大丈夫です」
「でも、先生。これじゃ先生の顔が全然見えません。はっきり言って寂しいです」
「私の顔を見ることよりもきみの体調管理の方が重要なので、不満はしばらく見て見ぬ振りをしてください」
「うーん、それはだいぶ難しそうです。暑さと引き換えに先生を眺められるなら、一生そっちを選びます」
「きみが倒れてしまうと私が悲しいので、我慢してください」
「先生……!感動して卒倒しそうです」
「倒れないでと言った私の話をきちんと聴いていましたか?」
言葉でじゃれ合いのラリーを続けながら互いの顔にハンディファンを翳す男性二人組を、周囲の人々はチラチラと横目で観察している。
そんな状況には一切我関せずで、スマホでメニューを見ながら相談していると開店の時間となった。
振り返ると、いつの間にか後ろにも長い行列が伸びていて驚く。
第一陣で案内され奥のテーブル席に通されると、すぐさまおしぼりと水が出された。
「先生は定番定食にしますか?」
「ええ、そうします。あと、海ぶどうをシェアしたいです」
「是非」
「きみはきっと、全部盛り定食ですね?」
「はい、ご推察の通りです。先生、もずくの天ぷらもシェアしましょう?」
「ええ、そうしましょう」
注文を終えて、昼でも少し薄暗い渋い趣きの店内を見渡しながら会話を重ねる。
続々と入ってくる食事客でカウンター席も座敷も埋まり、厨房は火を噴く忙しさのようだ。
エプロン姿の店員が行き来するのを楽しく見ていると、注文したシークヮーサージュースと氷の入ったグラスがテーブルに置かれた。
「缶だ。ジュース飲むのも久しぶりなんですが、缶はもしかして小学生以来かもしれないです」
「ヴィラにも缶のジュースは置いてなかったので、私も久しぶりに見た気がします」
「子供の頃よく行ってた下町の焼肉屋さんで、いつも缶のサイダーを飲んでたのを急に思い出しました。懐かしいです」
「月落家と下町の焼肉屋さんが、あまり上手く結びつかないんですが?」
「母の実家が江戸川区だったので、母方の祖父母に会いに行くといつも連れて行ってもらったんです。父方の祖父母も結構な頻度で参加したりして、わいわい食事してました。座敷のあるお店だったので、貸し切りで食べるのが特別感があって楽しかったですね」
「畳は私も好きです。我が家は母の趣味で洋風を全面に主張した内装なので、子供の頃は日本家屋や畳にとても憧れがありました」
「お父様のご実家には和室はなかったんですか?」
「残念ながら。父方の祖母も洋風が好きだったので、アールヌーボー調の家具が揃っている家でした」
「お母様と気が合いそうですね?」
「ええ、まるで血の繋がった娘かと思うほどに意気投合していました」
ローカルさが滲む缶の蓋を開けて、黄色い中身をグラスに注ぐ。
すっきりとした酸味で喉を潤す。
未だ体内のどこかに残るカレーの濃ささえ、洗い流すよう。
「何だかカロリーを摂りすぎな気もしますが、それは東京の地を踏むまで忘却の彼方へ放り投げておこうと思います」
「先生、ご安心を。沖縄で摂取したカロリーは、羽田上空で綺麗に消えてなくなる予定です」
「きみはプールでカロリー消費に勤しんでいましたが、私は露天風呂で休んでいただけなので、たとえ羽田上空でカロリーが消滅しようともそれでは到底間に合わない気がします」
「先生の過剰分は僕が発散するので、ご心配には及びません」
「それは無理です。いくら頼り甲斐はあると言っても、きみは魔法使いではないでしょう?」
「先生がお望みとあらば、使えるように修行します」
「あはは、真面目な顔で言うのはやめてください」
就職の面接に臨むような面差しで見つめてくるのは反則だ。
冗談に不可解な説得力が加わって、得体の知れない真実味が生まれてしまう。
「お待たせしました、定番定食と全部盛り定食です」
中身のない会話を続ける二人の前に、幾つもの皿がテーブルいっぱいに並べられていく。
ラフテー
沖縄おでん
島豆腐チャンプルー
ミミガー
ジーマーミ豆腐
パパイヤイリチー
グルクンの唐揚げ
海ぶどう
天ぷら
いなむるち
ご飯
沖縄おでんが入った鳴成の皿は、年下の男によって回収された。
煮崩れを起こす一歩手前まで煮込まれたテビチの骨、それを月落が器用に外していく。
その過保護な振る舞いを凝視していると、「恋人は骨抜きにしろっていう大伯母の遺言です」とトーンを落とした声で囁かれて、鳴成は眉根を寄せて苦笑いするしかなかった。
戻ってきた皿を礼と共に貰い、気を取り直して食事を始める。
沖縄式豚汁のいなむるちを飲んでミミガーの食感を楽しみ、ご飯が進む味付けのチャンプルーを頬張り、ジーマーミ豆腐の喉越しに癒される。
どれも絶品だが、両者が思わず顔を合わせたのが。
「ラフテーが……!味噌……!」
「珍しい色合いだと思ってましたが、味噌味も美味しいですね」
店内の灯りを吸収した上で倍量跳ね返しているのでは、と疑いたくなるほどにてらてらと光り輝く三枚肉の角煮は、とろとろの口溶けもさることながら、その味は唯一無二の美味しさだ。
脂身の多さも気にならないほどに、絶妙な加減で煮込まれている。
ご飯が進みすぎて、月落は白米をおかわりした。
「全部盛り定食は量が多いっていつも言われるんだけど、お兄さんは沢山食べてくれるから見てて気持ち良いわ」
すぐに茶碗いっぱいのご飯を持ってきた花柄エプロンのお母さんが、そう言い残して去って行く。
「……もうすぐ31になろうというれっきとした大人が、高校生男子に対するかのような褒め言葉を頂戴してしまいました」
「名誉なことですね。誇らしいです」
恥ずかしさのあまり、箸を置いてテーブルに突っ伏しそうになる月落。
それを、笑いながら励ます鳴成。
楽しい昼食は、それからしばし続いた。
しっかりと腹を満たした二人はそのまま国際通りを突っ切って、壺屋やちむん通りへと出た。
アメリカンビレッジでも沖縄の焼き物を手に取ってみたが、車移動で破損することを懸念して購入を断念していた。
この旅で揃いのTシャツを買ったりペアのシーサーを作ったりしたが、何なら揃いの食器も欲しいと気分が盛り上がって最終日に時間を作って店を訪れることにした。
土産物屋や工房、併設されたカフェなどを眺めながら歩き、気になった店に入る。
沖縄の海を固めて砕いて釉薬にしたようなエメラルドブルーの大皿を月落の自宅用に、唐草文様のマグカップを鳴成の自宅用に購入した。
「先生、これで秋からの翻訳作業も捗りそうですね」
「ええ、存分に書斎に籠れそうです。容量の大きいサイズがあって良かったです」
やちむん通りを戻り、来た時とは反対側の国際通りを通って県庁前へと帰る。
夏休み期間のベストシーズンを抜けた9月の平日は、人通りも落ち着いて歩きやすい。
沖縄県内唯一のデパートに入店すると2階へと上がる。
「クラシックティー、ハイビスカスブレンド、月桃ブレンド……悩みますね」
「5包入りですし、せっかくなので全部買いますか?」
「そうします。きみも一緒に飲んでくれたら、在庫過多も避けられそうですし」
「はい、是非、ご一緒させてください」
沖縄県産の紅茶は研究室用と互いの実家、そして親戚用に購入した。
「先生、買い残しはないですか?」
「ええ、ありません。まさか自分が旅行先でこんなに買い物をするとは思いませんでした」
「僕もです。お土産は比較的買う派ではあったんですが、両手にどっさりは未知なる体験でした」
「きみとお揃いのアイテムが増えて嬉しいです」
パーキングへ戻る道の途中、素直な感想を零した鳴成を月落は思わず脊椎反射で抱き締めそうになる。
手に持っている荷物を全部投げ出して。
危ない。
嬉しそうな鳴成を一瞬にして悲しませるところだった。
危ない、危ない。
大きく深呼吸をして気持ちを鎮める。
少々息が荒いのは、どうか見逃してほしい。
「渉くん、どうしました?」
「秋史さんがあまりにも可愛くて、止まりかけた呼吸を必死に取り戻してました」
「それは……大変ですね?」
月落を甘く苦しめる張本人は分かっているのかいないのか、首を傾げて更なる打撃を与えてくる。
それに命からがら耐えながら、月落はレーシングイエローのドアを開けた。
快適な空の上。
幸せな恋人同士はスマホに収めた沢山の写真を見ながら、尽きぬ思い出話に鮮やかな花を咲かせた。
ちなみに。
月落のスマホで撮影したナイトプールの写真を見合っていたら、不意に手が滑った。
隠し撮りした鳴成の寝顔が表示されてしまい、しばし時が止まる。
「これは何でしょうか?」と、口角を上げているにも関わらず全く笑っていない顔で凄む鳴成に、月落が必死で言い訳を連ねるのは小さな裏話。
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