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三章
16. クリスマスデートと返答の花束①
12月25日、クリスマス当日の正午。
白タートルにゼニスブルーのコーデュロイジャケットとトラウザーズを纏い、ネイビーブルーのロングコートを羽織った鳴成は、キャメルのブーツで原宿駅前へとやって来た。
濃茶の手袋、首元には明るいグレージュの大判カシミヤマフラーがぐるりと巻かれている。
マフラーは年下の恋人からのクリスマスプレゼントだ。
今日は一日外出するからと贈ってくれたもので、体温調節の上手くない自分には打ってつけのアイテムだ。
原宿駅西口横の奥まった場所で待っていると、到着した電車から降りたであろう人波に紛れて、一際背の高いその人が姿を現した。
「先生、お待たせしました。寒かったですね、すみません」
「いいえ、私も今ちょうど来たところです」
「本当に?」
「本当に」
白シャツ、クロップド丈の黒ジャケットと黒のフレアテーラードパンツ、ダークグレーのフェルトウールコートを颯爽と着こなした月落は、鳴成を見つけると大股で近づいた。
「でも、耳が赤くなってる気がします」
そう言うと月落は、鳴成の耳に両手を当てて蓋をする。
ひんやりとした温度を伝えてくる白い肌に、月落は自分の熱を移すように些かぎゅっと押しつけた。
耳は意外と急所の多く集まる箇所であるし、日常生活で他人に触られることは滅多にない。
そんな場所への無遠慮な接触は恋人ならではのような気がして、鳴成は目尻をやんわりと細める。
しばらくされるがままだったが、いつまでもこうしている訳にはいかない。
鳴成は月落の手首を持って、ヘッドフォンを外す時のように左右に引っ張って外した。
「耳が赤いのは、歩いてきたので仕方ありません。でも、このマフラーのおかげで首元がとても暖かくて、寒さが苦ではありませんでした」
「すごく似合ってます、先生。めちゃくちゃ可愛いです。似合うのは確信してたので、何なら全色買えばよかったと絶賛大後悔中です。緑とかオレンジのもアクセントになってそれはそれで使いやすかったなと思ったりして……え、今から買いに行きますか?」
「ひとつで十分ですから、正気に戻りましょうね?今日の私たちは、あそこで遊ばないといけませんから」
鳴成が指さす先には、東京23区で五番目の敷地面積を誇る公園。
平日にも関わらずそこへと向かう大量に流れる人の群れに混ざって、鳴成と月落も歩みを進める。
徐々に見えてくるのは、プロペラの回るクリスマスピラミッドに巨大なツリー、クリスマス仕様に装飾されたヨーロッパ式の小屋であるヒュッテの数々、人人人。
今日ここではイベント最終日となる、クリスマスマーケットが開催されている。
「大盛況ですね」
「ライトアップされる夜を避けたんですが、それでも賑わってますね」
「何だか、イギリスにいた頃を思い出します。空気感というのはその国その国で特異なものなので全く同じではないんですが、この雰囲気はほぼ一緒ですね」
「在英時代にクリスマスマーケットにはよく行かれてました?日本では今もまだそこまで浸透してないですよね」
「大学時代は、リバプールかマンチェスターのクリスマスマーケットに行ってました。ランカスターから車で1時間の距離で行きやすかったので」
事前購入したチケットでゲートをくぐる。
冬休みに入っている小学校もあるようで、ちびっこの数も多い。
「本場のドイツにも行かれたり?」
「確か、二度ですね。雪が降る中でお店を巡るのは身体的に年々つらくなったというのもあって、20代限定の思い出ですが」
「先生、今日は凍えそうになったらすぐに退散しましょう」
「クリスマスマーケットに来るのは久しぶりでテンションも上がってますし、マフラーもあるので大丈夫です。もし駄目そうだったら、グリューワインとホットチョコレートを交互に飲んで内側から燃やすこととします」
「あはは。先生、それは強硬手段ですね」
「消費が間に合わなくて血中カロリー濃度が急上昇しても、それはそれで覚悟の上です」
鳴成らしくない物の言い方に、月落はそのテンションの高さを垣間見る。
この後に行く予定の場所を考慮して、クリスマスマーケットでは飲酒はしない予定だ。
けれど、もし寒さに耐えきれない場合は、プランを変更して飲んでしまってもいいと月落は思っている。
もし万が一ほろ酔いになっても自分が運ぶので何も問題はない。
日本酒以外のアルコール全般における分解能力に長けた年上の恋人に、その助太刀が必要な時はきっと訪れないだろうとは思うけれど。
気持ちの赴くまま沢山飲んで美味しく食べて身体を温めてもらえるなら、それが最善だ。
「先生。とりあえず、近場から腹ごしらえをしますか?」
「はい、そうします。あのニュルンベルガーは絶対に食べたいです」
イベント広場に入ってさほど経っていないのだが、年上の恋人はもう既にお目当てを見つけていたらしい。
月落は笑顔で頷きながら、鳴成と食事の調達をした。
細くて短いサイズが特徴のニュルンベルガーが数本挟まったソーセージドッグ
ドイツのシンプルなピザであるフラムクーヘン
ショートパスタをチーズで和えたケーゼシュペッツレ
マッシュルームを炒めたシャンピニオンプファンネ
白いソーセージのヴァイスブルスト盛り合わせと大量のザワークラウト
真っ白な粉糖で飾られたシュトレンも購入して、鳴成と月落は会場のど真ん中に設置されたイートインスペースに席を取った。
横並びで座る。
天幕が張られた下、何基も設置されたパラソルヒーターを囲う形で席の作られたその場所は存外に温かく、鳴成は手袋とマフラーを外した。
「寒くないですか?」
「ええ、大丈夫です。汚すのは嫌なので、食べ終わったらまた巻きます」
「汚しても気にならないように、スペアを買えば……」
「渉くん、食べましょうね?」
林檎とシナモンのグリューワインが入ったカップを鳴成が軽く持ち上げ、柚子と生姜のグリューワインが入ったカップを月落が持ち上げることで食事の開始となる。
どちらもノンアルコールだ。
一口飲むと、その何ともほっとする味わいが身体の芯に沁み渡る。
白く湯気の立ち昇る、スパイスの効いた濃い赤に息を吹きかけながら飲むのは、冬の醍醐味だ。
じわじわと温まる胃袋が刺激されて、食欲が湧く。
月落がコートのポケットから取り出したウェットティッシュで、両者共に手を拭いた。
「このショートパスタとチーズを合わせたケーゼシュペッツレ、懐かしい味がします。こっちのほうがパスタが太めですけど、マッケンチーズの親戚な気がします」
「ああ、確かに似てますね。気軽な家庭料理という区分も同じですし」
「ザワークラウトをこんなに食べるのは人生で初めてです。日本もそうですけど、屋台の食事は野菜不足になりがちですよね。脂質や炭水化物のオンパレードは非常に美味しいので、否やは全くないんですけど」
「ええ、美味しいです。ソーセージもピザも、私にとっては懐かしい味の大集合です。でも、ドイツは日本のような感覚で野菜を食べることが少ないと聞いたことがあるので、もしかしたら屋台に限ったことではないかもしれません」
マッシュルームを食べていたフォークを置いて透明なパッケージを開けた鳴成は、シュトレンを食べ始める。
甘いとしょっぱいを行き来する食事のスタイルは、料理の国籍に左右されない。
「確かに、ドイツ料理で真っ先に思い浮かぶのはとにかく肉料理ですね。魚のイメージもあまりないような……ニシンの酢漬けくらいですか?」
「海に面している地域が少ないというのと極寒の冬が長いので、お肉の加工品や発酵食品が料理の基本だとドイツ人の友人に教えてもらったことがあります。生野菜や魚介類が食卓に上がる頻度は日本ほど多くないようです」
「それは残念ですけど、種類豊富なソーセージとビールさえあれば後悔なく生きていけそうな気もします」
「それはきっと、間違いないです」
ナッツとドライフルーツがぎっしりと詰まったシュトレンを、ちぎりながら食べていた鳴成。
その手が最後の欠片を手放したのを見た月落は、新しいウェットティッシュを一枚取り出した。
粉糖で白く染まった指先をそっと拭う。
「ありがとうございます」
「ふたりきりだったら舐めて綺麗にするんですが、外なので我慢します」
「っ………」
心構えなく受けた口撃に、鳴成の動作が一時停止した。
そして次の瞬間、きょろきょろと見渡して恋人の爆弾発言を聞いた人がいないか確認するが、周囲は食事と会話に夢中なようだ。
屋外の騒がしさも功を奏したのか、心配したような事態にはなっていないようである。
「渉くん」
「はい、秋史さん」
「食事中は私語厳禁にしますよ?」
「申し訳ありませんでした。今後はライトで純情な会話のみを心がけます」
ぴしっと背筋を伸ばした青年は、勢いよく直角に腰を折って謝罪する。
反省しているのかしていないのか、誠意がいまいち伝わってこない。
けれど、すぐさま謝罪をした行動の速さは褒められるものもあるので、鳴成は仕方なく黒髪を指で撫でた。
甘やかされるのが嬉しいのか、注意されているはずなのに顔を上げた青年の唇は、笑みを作りたくて仕方がないという風だった。
その頬を、鳴成はむにむにと抓る。
全然反省していない。
「クリスマスに相応しい会話にしてください」
「承知しました……あ、クリスマスと言えば、昨日のご家族とのパーティーは楽しかったですか?」
「妹の子が1歳4か月になったんですが、歩くのにも慣れてきて結構活発に動き回るので、私は父とほぼ子守に徹していました。日頃子育てに心血を注いでいる妹夫婦を労うというのが、第一目的の会だったので。母は料理担当でした」
「利沙さんがお料理されるんですね。誤解を招く言い方になりそうですが、意外です」
「分かります。母の見た目からするとあまり料理とは結びつかなそうだなと息子の私も思いますが、得意だし上手です。お手伝いさんの協力を仰ぎながらではありますが、お客様を家にお招きする際にもトータルコーディネートをしますし」
「あ、先生。もしかして、赤ちゃんを抱っこしてる写真なんかあったりしませんか?」
「ええ、あります」
見たい、見せて、と差し出した手の平を猛烈に振る月落へ、鳴成は写真を表示させたスマホを渡した。
眠った赤ん坊を抱いた麗人の写真は、それからでしか得られない栄養で満ち満ちていた。
というよりむしろ栄養過多気味で、月落は胸を押さえて唸る。
「先生、この写真ください。欲しい、無理だ。僕にください」
「分かりましたから、こんなことでそんなに鬼気迫る表情をするのは止めましょうね?」
あまりにもひたむきな眼差しに負けて、鳴成は頷いた。
頷きながら、もうすぐで空になりそうなグリューワインを傾ける。
食事をしたおかげで身体が温まり、末端まで熱を取り戻すのを感じる。
「妹さんの子って、確か双子でしたよね?」
「そうです。双子の男の子ですね」
「じゃあ、僕の姪っ子たちと同級生ですね。年明けに産まれたので、半年遅れかな……?」
「きみの姪っ子さんたちも双子なんですか?同級生でどちらも双子なのは、確率的に珍しいですね」
「はい。今までの人生で双子と出会うことってあんまりなかったんですが、こんな奇遇なこともあるんだと僕も驚いてます」
「写真はありませんか?きみも昨日はご家族でパーティーをしたでしょう?」
「しました。写真は……」
スマホを鳴成へと渡す。
そこには、両腕に赤ん坊を抱く『筋肉パワー系男子代表』のような恋人の姿が映し出されていた。
鳴成は、肩を震わせて笑う。
「楽しそうで何よりです。きみも子守の一日でした?」
「はい、ほどほどに。兄の子が四人いるので、ほぼ誰かと遊んでる状態でした。うちの家系は男が総じて長身なので父も兄も弟も同じくらいあるんですが、僕は肩のゴツさが違うので、何かあると抱っこ担当にされて」
「水泳選手ですもんね。ご兄弟はスポーツはやられてないんですか?」
「兄はバドミントン、弟はサッカーを部活でやってました。今も趣味で続けてます。妹は陸上部で、今はもう学生時代のようには走れないって、この前ボヤいてました」
「短距離走ですか?」
「ハードルです。先生はインターナショナルの時の部活は?」
「頑なに帰宅部でした。家に帰って読書に明け暮れました」
「あはは、予想通りで安心しました」
筋肉男子の写真が欲しいと鳴成からリクエストを貰ったので、月落は息つく間もなく送った。
見せていない他の写真も数枚送った。
今度、鳴成を抱っこしながら写真を撮るのも良いな……と言葉に出したら即却下されるだろう願望を心に抱きながら。
「ご馳走さまでした」
「ご馳走さまでした。お店を色々見て回りましょうか」
「ええ、そうします」
昼食はいつもの自分たち比でいうと軽めだ。
夕食とその後にはデザートも控えているため、胃の余白を残しておこうと事前相談した。
鳴成が外していた防寒具を装着している間に、月落が空の容器を捨てる。
「ありがとうございます」
「行きましょう」
屋根に雪の降り積もる装飾を施されたヒュッテの長い列を見物する。
それぞれが専門店として品出しをしていて、出店はケヤキ並木の方まで続いているようだ。
多種多様なクリスマスオーナメント、異素材の組み合わせがひとつとして同じものがないクリスマスリース、表情豊かなくるみ割り人形、どれも絵柄の違うキャンドルホルダー。
大小さまざまなスノードームが所狭しと並んでいる店で、ドイツの大聖堂が中に入ったシリーズを発見した鳴成は、手頃なサイズのものを購入した。
来年のクリスマスシーズンに、家に飾るミニツリーの隣に置く予定だ。
月落はガラスのオーナメントを数点手に取った。
色味を揃えて飾り付つをした二人のクリスマスツリーの来年用にと、美しい調和を乱すことのないデザインのものを話し合って購入した。
「来年のクリスマスシーズンが楽しみですね」
「はい。僕たちのクリスマスツリーが本当に綺麗で気に入っていて、あれを明日片付けないとならないと思うと悲しいです」
「また来年、一緒に飾りましょうね」
「是非。あ、先生、ここは紅茶の専門店っぽいですね」
「ドイツの紅茶メーカーですね。以前母に連れられて行ったアフタヌーンティーで飲んだことがあります。母も美味しいと言っていた記憶があるので、何点か実家用にも買って行こうかな」
「先生と利沙さんのお墨付きなら間違いないので、僕も親族用に買って行きます」
ユニークなネーミングのパッケージひしめく中で、一番人気のものや珍しいチェリーフレーバーのもの、季節限定のものなどを選んだ。
紅茶の美味しい淹れ方を説明しながら手際よく包んでくれた店員に礼を言って、その場を後にする。
「何だか沢山買ってしまいましたね」
ふたりの両手には、ロゴが印刷されたいくつもの紙袋。
特に月落は持っている量が凄い。
親族グループチャットで欲しい人を募ったら通知が止まなかったので、ごっそりと買う羽目になってしまった。
大方予想はしていたが。
「茶葉は賞味期限が長いと思うと、ついつい買いすぎちゃいますね」
「ええ、そこが紅茶の罠です」
「僕たちまんまとハマってますね、罠に」
「きみももう、抜け出せないと思います。ようこそ、こちら側へ」
「光栄です。先生と一緒にいられるなら、どんな沼落ちでも大歓迎です」
「あはは、きみといればどんな沼でもサバイバル出来そうで心強いです」
行き交う人にぶつからないようスピードを緩めながら歩を進める。
ホットチョコレートを分け合いながら飲んだり、香辛料の効いた独特な味わいのクッキーをつまんだりしながら店を回って、気がつくとあっという間に2時間ほどが経っていた。
大量の荷物を持ったままこれから先の場所へと移動するのは若干不便だということで、戦利品を一旦鳴成の自宅へと置きに行く。
公園からは20分の距離だ。
ソファに素早く置いて、再度家を出る。
今日の夜はいつものように月落の自宅に泊るつもりだったが、予定は変更になるかもしれない。
白い息を吐きながら、どちらの家に泊るかと他愛のない話をしながら向かった先は、146本のいちょう並木。
15時を過ぎた頃。
一枚残らず葉の無くなった裸木の枝が冬の低い晴天を迷いなく突き刺す様は、とても勇敢で美しい。
フェンシングの優美な剣のようだ。
冬の樹木は彩りを失うけれど、そぎ落とされて剥き出しになったその骨格の美しさに、再び盛りを迎える前の沈黙の強さを感じる。
「見上げきれないほどの高さですね。近くに住んでいるのに冬にはあまり来たことがなかったので、この景色は初めて見たかもしれません」
「秋に立川で見たのもイチョウでしたけど、最盛期の黄葉とはまた違った趣がありますね」
「植物は季節の具現化ですから。こうなると、緑の生い茂る季節も見てみたいですね」
「じゃあ、先生、夏にまた散歩しに来ましょう?」
「ええ、そうしたいです」
道の端で、見上げながら歩く。
あえてモノクロで撮った写真は、木炭で描かれたデッサンのようだ。
その繊細さと荒々しさのコントラストに、心が打たれる。
「ちょうど良い時間ですね。先生、移動しましょう」
並木道とは打って変わって、左右を緑に囲まれた道を進む。
15分ほど歩いた先にあるのは、氷を連想させる外観のスケート場だ。
白タートルにゼニスブルーのコーデュロイジャケットとトラウザーズを纏い、ネイビーブルーのロングコートを羽織った鳴成は、キャメルのブーツで原宿駅前へとやって来た。
濃茶の手袋、首元には明るいグレージュの大判カシミヤマフラーがぐるりと巻かれている。
マフラーは年下の恋人からのクリスマスプレゼントだ。
今日は一日外出するからと贈ってくれたもので、体温調節の上手くない自分には打ってつけのアイテムだ。
原宿駅西口横の奥まった場所で待っていると、到着した電車から降りたであろう人波に紛れて、一際背の高いその人が姿を現した。
「先生、お待たせしました。寒かったですね、すみません」
「いいえ、私も今ちょうど来たところです」
「本当に?」
「本当に」
白シャツ、クロップド丈の黒ジャケットと黒のフレアテーラードパンツ、ダークグレーのフェルトウールコートを颯爽と着こなした月落は、鳴成を見つけると大股で近づいた。
「でも、耳が赤くなってる気がします」
そう言うと月落は、鳴成の耳に両手を当てて蓋をする。
ひんやりとした温度を伝えてくる白い肌に、月落は自分の熱を移すように些かぎゅっと押しつけた。
耳は意外と急所の多く集まる箇所であるし、日常生活で他人に触られることは滅多にない。
そんな場所への無遠慮な接触は恋人ならではのような気がして、鳴成は目尻をやんわりと細める。
しばらくされるがままだったが、いつまでもこうしている訳にはいかない。
鳴成は月落の手首を持って、ヘッドフォンを外す時のように左右に引っ張って外した。
「耳が赤いのは、歩いてきたので仕方ありません。でも、このマフラーのおかげで首元がとても暖かくて、寒さが苦ではありませんでした」
「すごく似合ってます、先生。めちゃくちゃ可愛いです。似合うのは確信してたので、何なら全色買えばよかったと絶賛大後悔中です。緑とかオレンジのもアクセントになってそれはそれで使いやすかったなと思ったりして……え、今から買いに行きますか?」
「ひとつで十分ですから、正気に戻りましょうね?今日の私たちは、あそこで遊ばないといけませんから」
鳴成が指さす先には、東京23区で五番目の敷地面積を誇る公園。
平日にも関わらずそこへと向かう大量に流れる人の群れに混ざって、鳴成と月落も歩みを進める。
徐々に見えてくるのは、プロペラの回るクリスマスピラミッドに巨大なツリー、クリスマス仕様に装飾されたヨーロッパ式の小屋であるヒュッテの数々、人人人。
今日ここではイベント最終日となる、クリスマスマーケットが開催されている。
「大盛況ですね」
「ライトアップされる夜を避けたんですが、それでも賑わってますね」
「何だか、イギリスにいた頃を思い出します。空気感というのはその国その国で特異なものなので全く同じではないんですが、この雰囲気はほぼ一緒ですね」
「在英時代にクリスマスマーケットにはよく行かれてました?日本では今もまだそこまで浸透してないですよね」
「大学時代は、リバプールかマンチェスターのクリスマスマーケットに行ってました。ランカスターから車で1時間の距離で行きやすかったので」
事前購入したチケットでゲートをくぐる。
冬休みに入っている小学校もあるようで、ちびっこの数も多い。
「本場のドイツにも行かれたり?」
「確か、二度ですね。雪が降る中でお店を巡るのは身体的に年々つらくなったというのもあって、20代限定の思い出ですが」
「先生、今日は凍えそうになったらすぐに退散しましょう」
「クリスマスマーケットに来るのは久しぶりでテンションも上がってますし、マフラーもあるので大丈夫です。もし駄目そうだったら、グリューワインとホットチョコレートを交互に飲んで内側から燃やすこととします」
「あはは。先生、それは強硬手段ですね」
「消費が間に合わなくて血中カロリー濃度が急上昇しても、それはそれで覚悟の上です」
鳴成らしくない物の言い方に、月落はそのテンションの高さを垣間見る。
この後に行く予定の場所を考慮して、クリスマスマーケットでは飲酒はしない予定だ。
けれど、もし寒さに耐えきれない場合は、プランを変更して飲んでしまってもいいと月落は思っている。
もし万が一ほろ酔いになっても自分が運ぶので何も問題はない。
日本酒以外のアルコール全般における分解能力に長けた年上の恋人に、その助太刀が必要な時はきっと訪れないだろうとは思うけれど。
気持ちの赴くまま沢山飲んで美味しく食べて身体を温めてもらえるなら、それが最善だ。
「先生。とりあえず、近場から腹ごしらえをしますか?」
「はい、そうします。あのニュルンベルガーは絶対に食べたいです」
イベント広場に入ってさほど経っていないのだが、年上の恋人はもう既にお目当てを見つけていたらしい。
月落は笑顔で頷きながら、鳴成と食事の調達をした。
細くて短いサイズが特徴のニュルンベルガーが数本挟まったソーセージドッグ
ドイツのシンプルなピザであるフラムクーヘン
ショートパスタをチーズで和えたケーゼシュペッツレ
マッシュルームを炒めたシャンピニオンプファンネ
白いソーセージのヴァイスブルスト盛り合わせと大量のザワークラウト
真っ白な粉糖で飾られたシュトレンも購入して、鳴成と月落は会場のど真ん中に設置されたイートインスペースに席を取った。
横並びで座る。
天幕が張られた下、何基も設置されたパラソルヒーターを囲う形で席の作られたその場所は存外に温かく、鳴成は手袋とマフラーを外した。
「寒くないですか?」
「ええ、大丈夫です。汚すのは嫌なので、食べ終わったらまた巻きます」
「汚しても気にならないように、スペアを買えば……」
「渉くん、食べましょうね?」
林檎とシナモンのグリューワインが入ったカップを鳴成が軽く持ち上げ、柚子と生姜のグリューワインが入ったカップを月落が持ち上げることで食事の開始となる。
どちらもノンアルコールだ。
一口飲むと、その何ともほっとする味わいが身体の芯に沁み渡る。
白く湯気の立ち昇る、スパイスの効いた濃い赤に息を吹きかけながら飲むのは、冬の醍醐味だ。
じわじわと温まる胃袋が刺激されて、食欲が湧く。
月落がコートのポケットから取り出したウェットティッシュで、両者共に手を拭いた。
「このショートパスタとチーズを合わせたケーゼシュペッツレ、懐かしい味がします。こっちのほうがパスタが太めですけど、マッケンチーズの親戚な気がします」
「ああ、確かに似てますね。気軽な家庭料理という区分も同じですし」
「ザワークラウトをこんなに食べるのは人生で初めてです。日本もそうですけど、屋台の食事は野菜不足になりがちですよね。脂質や炭水化物のオンパレードは非常に美味しいので、否やは全くないんですけど」
「ええ、美味しいです。ソーセージもピザも、私にとっては懐かしい味の大集合です。でも、ドイツは日本のような感覚で野菜を食べることが少ないと聞いたことがあるので、もしかしたら屋台に限ったことではないかもしれません」
マッシュルームを食べていたフォークを置いて透明なパッケージを開けた鳴成は、シュトレンを食べ始める。
甘いとしょっぱいを行き来する食事のスタイルは、料理の国籍に左右されない。
「確かに、ドイツ料理で真っ先に思い浮かぶのはとにかく肉料理ですね。魚のイメージもあまりないような……ニシンの酢漬けくらいですか?」
「海に面している地域が少ないというのと極寒の冬が長いので、お肉の加工品や発酵食品が料理の基本だとドイツ人の友人に教えてもらったことがあります。生野菜や魚介類が食卓に上がる頻度は日本ほど多くないようです」
「それは残念ですけど、種類豊富なソーセージとビールさえあれば後悔なく生きていけそうな気もします」
「それはきっと、間違いないです」
ナッツとドライフルーツがぎっしりと詰まったシュトレンを、ちぎりながら食べていた鳴成。
その手が最後の欠片を手放したのを見た月落は、新しいウェットティッシュを一枚取り出した。
粉糖で白く染まった指先をそっと拭う。
「ありがとうございます」
「ふたりきりだったら舐めて綺麗にするんですが、外なので我慢します」
「っ………」
心構えなく受けた口撃に、鳴成の動作が一時停止した。
そして次の瞬間、きょろきょろと見渡して恋人の爆弾発言を聞いた人がいないか確認するが、周囲は食事と会話に夢中なようだ。
屋外の騒がしさも功を奏したのか、心配したような事態にはなっていないようである。
「渉くん」
「はい、秋史さん」
「食事中は私語厳禁にしますよ?」
「申し訳ありませんでした。今後はライトで純情な会話のみを心がけます」
ぴしっと背筋を伸ばした青年は、勢いよく直角に腰を折って謝罪する。
反省しているのかしていないのか、誠意がいまいち伝わってこない。
けれど、すぐさま謝罪をした行動の速さは褒められるものもあるので、鳴成は仕方なく黒髪を指で撫でた。
甘やかされるのが嬉しいのか、注意されているはずなのに顔を上げた青年の唇は、笑みを作りたくて仕方がないという風だった。
その頬を、鳴成はむにむにと抓る。
全然反省していない。
「クリスマスに相応しい会話にしてください」
「承知しました……あ、クリスマスと言えば、昨日のご家族とのパーティーは楽しかったですか?」
「妹の子が1歳4か月になったんですが、歩くのにも慣れてきて結構活発に動き回るので、私は父とほぼ子守に徹していました。日頃子育てに心血を注いでいる妹夫婦を労うというのが、第一目的の会だったので。母は料理担当でした」
「利沙さんがお料理されるんですね。誤解を招く言い方になりそうですが、意外です」
「分かります。母の見た目からするとあまり料理とは結びつかなそうだなと息子の私も思いますが、得意だし上手です。お手伝いさんの協力を仰ぎながらではありますが、お客様を家にお招きする際にもトータルコーディネートをしますし」
「あ、先生。もしかして、赤ちゃんを抱っこしてる写真なんかあったりしませんか?」
「ええ、あります」
見たい、見せて、と差し出した手の平を猛烈に振る月落へ、鳴成は写真を表示させたスマホを渡した。
眠った赤ん坊を抱いた麗人の写真は、それからでしか得られない栄養で満ち満ちていた。
というよりむしろ栄養過多気味で、月落は胸を押さえて唸る。
「先生、この写真ください。欲しい、無理だ。僕にください」
「分かりましたから、こんなことでそんなに鬼気迫る表情をするのは止めましょうね?」
あまりにもひたむきな眼差しに負けて、鳴成は頷いた。
頷きながら、もうすぐで空になりそうなグリューワインを傾ける。
食事をしたおかげで身体が温まり、末端まで熱を取り戻すのを感じる。
「妹さんの子って、確か双子でしたよね?」
「そうです。双子の男の子ですね」
「じゃあ、僕の姪っ子たちと同級生ですね。年明けに産まれたので、半年遅れかな……?」
「きみの姪っ子さんたちも双子なんですか?同級生でどちらも双子なのは、確率的に珍しいですね」
「はい。今までの人生で双子と出会うことってあんまりなかったんですが、こんな奇遇なこともあるんだと僕も驚いてます」
「写真はありませんか?きみも昨日はご家族でパーティーをしたでしょう?」
「しました。写真は……」
スマホを鳴成へと渡す。
そこには、両腕に赤ん坊を抱く『筋肉パワー系男子代表』のような恋人の姿が映し出されていた。
鳴成は、肩を震わせて笑う。
「楽しそうで何よりです。きみも子守の一日でした?」
「はい、ほどほどに。兄の子が四人いるので、ほぼ誰かと遊んでる状態でした。うちの家系は男が総じて長身なので父も兄も弟も同じくらいあるんですが、僕は肩のゴツさが違うので、何かあると抱っこ担当にされて」
「水泳選手ですもんね。ご兄弟はスポーツはやられてないんですか?」
「兄はバドミントン、弟はサッカーを部活でやってました。今も趣味で続けてます。妹は陸上部で、今はもう学生時代のようには走れないって、この前ボヤいてました」
「短距離走ですか?」
「ハードルです。先生はインターナショナルの時の部活は?」
「頑なに帰宅部でした。家に帰って読書に明け暮れました」
「あはは、予想通りで安心しました」
筋肉男子の写真が欲しいと鳴成からリクエストを貰ったので、月落は息つく間もなく送った。
見せていない他の写真も数枚送った。
今度、鳴成を抱っこしながら写真を撮るのも良いな……と言葉に出したら即却下されるだろう願望を心に抱きながら。
「ご馳走さまでした」
「ご馳走さまでした。お店を色々見て回りましょうか」
「ええ、そうします」
昼食はいつもの自分たち比でいうと軽めだ。
夕食とその後にはデザートも控えているため、胃の余白を残しておこうと事前相談した。
鳴成が外していた防寒具を装着している間に、月落が空の容器を捨てる。
「ありがとうございます」
「行きましょう」
屋根に雪の降り積もる装飾を施されたヒュッテの長い列を見物する。
それぞれが専門店として品出しをしていて、出店はケヤキ並木の方まで続いているようだ。
多種多様なクリスマスオーナメント、異素材の組み合わせがひとつとして同じものがないクリスマスリース、表情豊かなくるみ割り人形、どれも絵柄の違うキャンドルホルダー。
大小さまざまなスノードームが所狭しと並んでいる店で、ドイツの大聖堂が中に入ったシリーズを発見した鳴成は、手頃なサイズのものを購入した。
来年のクリスマスシーズンに、家に飾るミニツリーの隣に置く予定だ。
月落はガラスのオーナメントを数点手に取った。
色味を揃えて飾り付つをした二人のクリスマスツリーの来年用にと、美しい調和を乱すことのないデザインのものを話し合って購入した。
「来年のクリスマスシーズンが楽しみですね」
「はい。僕たちのクリスマスツリーが本当に綺麗で気に入っていて、あれを明日片付けないとならないと思うと悲しいです」
「また来年、一緒に飾りましょうね」
「是非。あ、先生、ここは紅茶の専門店っぽいですね」
「ドイツの紅茶メーカーですね。以前母に連れられて行ったアフタヌーンティーで飲んだことがあります。母も美味しいと言っていた記憶があるので、何点か実家用にも買って行こうかな」
「先生と利沙さんのお墨付きなら間違いないので、僕も親族用に買って行きます」
ユニークなネーミングのパッケージひしめく中で、一番人気のものや珍しいチェリーフレーバーのもの、季節限定のものなどを選んだ。
紅茶の美味しい淹れ方を説明しながら手際よく包んでくれた店員に礼を言って、その場を後にする。
「何だか沢山買ってしまいましたね」
ふたりの両手には、ロゴが印刷されたいくつもの紙袋。
特に月落は持っている量が凄い。
親族グループチャットで欲しい人を募ったら通知が止まなかったので、ごっそりと買う羽目になってしまった。
大方予想はしていたが。
「茶葉は賞味期限が長いと思うと、ついつい買いすぎちゃいますね」
「ええ、そこが紅茶の罠です」
「僕たちまんまとハマってますね、罠に」
「きみももう、抜け出せないと思います。ようこそ、こちら側へ」
「光栄です。先生と一緒にいられるなら、どんな沼落ちでも大歓迎です」
「あはは、きみといればどんな沼でもサバイバル出来そうで心強いです」
行き交う人にぶつからないようスピードを緩めながら歩を進める。
ホットチョコレートを分け合いながら飲んだり、香辛料の効いた独特な味わいのクッキーをつまんだりしながら店を回って、気がつくとあっという間に2時間ほどが経っていた。
大量の荷物を持ったままこれから先の場所へと移動するのは若干不便だということで、戦利品を一旦鳴成の自宅へと置きに行く。
公園からは20分の距離だ。
ソファに素早く置いて、再度家を出る。
今日の夜はいつものように月落の自宅に泊るつもりだったが、予定は変更になるかもしれない。
白い息を吐きながら、どちらの家に泊るかと他愛のない話をしながら向かった先は、146本のいちょう並木。
15時を過ぎた頃。
一枚残らず葉の無くなった裸木の枝が冬の低い晴天を迷いなく突き刺す様は、とても勇敢で美しい。
フェンシングの優美な剣のようだ。
冬の樹木は彩りを失うけれど、そぎ落とされて剥き出しになったその骨格の美しさに、再び盛りを迎える前の沈黙の強さを感じる。
「見上げきれないほどの高さですね。近くに住んでいるのに冬にはあまり来たことがなかったので、この景色は初めて見たかもしれません」
「秋に立川で見たのもイチョウでしたけど、最盛期の黄葉とはまた違った趣がありますね」
「植物は季節の具現化ですから。こうなると、緑の生い茂る季節も見てみたいですね」
「じゃあ、先生、夏にまた散歩しに来ましょう?」
「ええ、そうしたいです」
道の端で、見上げながら歩く。
あえてモノクロで撮った写真は、木炭で描かれたデッサンのようだ。
その繊細さと荒々しさのコントラストに、心が打たれる。
「ちょうど良い時間ですね。先生、移動しましょう」
並木道とは打って変わって、左右を緑に囲まれた道を進む。
15分ほど歩いた先にあるのは、氷を連想させる外観のスケート場だ。
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