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1章 collect
2話
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「東京の各地で20代から30代の方々が記憶喪失に陥るという現象が発生しており…」
ここ数日間、毎日のようにテレビやネット上で記憶喪失になるという怪奇現象のニュースを見かける。
記憶喪失になった者の所持品には「collect」と書かれた紙が入っているらしい。
「二階堂さんはこのことどう思いますか?」
俺に話しかけてくるこの目の前の女は、大学の後輩の「天空葵」だ。
容姿は俺目線から見て控えめに言っても、美人と呼ばれる領域に達しているだろう。
しかし、少し残念なことに占いとか怪奇現象とかそういうオカルトチックなことに目がない。そのせいかはわからないが彼女の浮いた話とか聞いたことが無い。
「どうって。気の毒だとは思うけど、記憶喪失なら医者がなんとかするしかないんじゃないか?」
「医者の方も原因がわからないから困っているらしいです。それにcollectって書かれた紙があるらしいから、人為的なものだと思っているんですけど…」
「はは。それならまるで人が意図的に相手を記憶喪失にさせれるって言ってるのか?まさにその名の通りに超能力だな」
「そうなんですよね。でも、そういう力があるって考えた方が説明がつくじゃないですか」
馬鹿馬鹿しい。超能力とか異能とかそんなものが存在するのは物語の中の話だ。
記憶喪失に陥ったのだって、実は薬物とか鈍器で頭部を殴られたとかそういうことなんじゃないのか?
「まあ、事実はわからないが最近は物騒なんだから気をつけろよ」
「二階堂さんも気をつけてくださいね」
「はは。格闘技も昔はしてたしお前よりは安全だよ」
くだらない会話をしながら俺達は飯を食った。
「ご飯も食べ終わりましたし、そろそろ帰りましょうか」
「そうだな。一応、お前は可愛い部類の人間なんだから気をつけて帰れよ」
「何かあったら二階堂さんに連絡しますね」
「俺がその時に行けるかどうかわからないけどな」
「その時は恨みますね」
彼女は少し笑って冗談のように言った。
葵と別れてからしばらく経ってから考えてみたが、俺はオカルトとかいった類の話には興味はない。しかし、葵にはああ言ったが今起きているこの記憶喪失の現象はたしかにおかしい。奇妙だ。
まず、他の国はともかく日本の中でも東京でしか発生していない。
加えて「collect」という紙。まるで、挑戦状だ。
「俺を見つけてみろ。俺がこの現象を起こしている張本人だと」
そのように言っているようにも感じ取れる。
しかし、もし仮にだが、記憶喪失が本当に人の手によって意図的に起こされているものだとすると、超能力だとか異能とかそういう力が本当に存在することになる。
ありえない。だが、そう解釈するのが1番しっくりくる。
「二階堂晴人、お前も欲しいか?その力が」
俺の心を読んでいるかのように後方から誰かが声をかけてきた。
いや、違う。正確に言うと後ろではない。声がする方向は俺の…上だ。
「誰だ!」
俺に声をかけてきたのは人では無かった。
山羊の角に猛獣のような顔面、痩せこけた体に漆黒の翼、明らかに人とは異なる存在。悪魔とか死神とかそういう類の存在。
「私はクランプス。お前達人間で言う所の悪魔だ」
「悪魔?それに力ってなんだ?なぜ俺の名前を知っている!」
着いていけない。情報量が多すぎて脳がキャパオーバーしている。
今記憶喪失になっている人達となにか関係あるのか?
「お前が考えている記憶喪失の現象は、おそらくメフィストフェレスが誰かに渡した力のせいだろう」
「俺にそんなことを伝えてどうするつもりだ」
「別にお前でなくてもよかった。ただ、面白そうな人間に声をかけているだけだ」
この悪魔は俺以外にも声をかけたのか?
かけたのならば何らかのSNSに投稿されているはずだ。
だが、ネットにもテレビにもそんなおかしなことを見かけたことは無かった。
まるでその部分の記憶がすっかり消えているかのように。
「私と会話し、力を受け取らなかった人間の記憶は消しているからな」
さっきからなんだ?
心が読めているとしか思えない言動だ。
「私は相手の思考が全て把握出来る」
「ほんとにフィクションの世界みたいだな」
ここまで言うのなら本当に力を授けることができるのだろう。
だが、悪魔との契約といえば副作用はつきものだ。
「力を望んだら、なにか俺に不利益はあるのか?」
「力を受け取るだけなら不利益はない。強いていえば、私が力を与えたことは他の悪魔にすぐに伝わる」
「それと力を受け取ることになんの関係がある」
「伝わるということは、他の悪魔が力を与えた者にも伝わるということだ。」
「力を持ったもの同士は戦うということか?」
「そうだ。私はお前が力を受け取ることを強要しない。力が欲しいなら私に血を捧げよ。そうでないなら拒否すればいい」
力があれば今起きている出来事を止められるかもしれない。
だが、力を持っているものは引かれ合う。
下手をすれば俺が殺されるかもしれない。
赤の他人のために自分の身を犠牲にする覚悟は俺にはあるのか?
いや、俺は無理だ。俺にはそこまでの正義感はない。しかし、止められる可能性があって止めないのも寝覚めが悪い。
どうするべきだ。
「待ってくれ。1日だけ考えさせてくれ」
「いいだろう。明日、6月20日の24時までは待ってやる。それまでに力が欲しくなったら私の名前を呼ぶがいい」
そう言ってクランプスは闇の中に消えていった。
状況を整理しながら家への帰路を歩いていると
ピロリン♪
俺の携帯に葵からひとつのメッセージが入ってきた。
「変な人達に絡まれました。助けてください。場所は新宿駅の近くの「のぼん」っていう居酒屋です」
気づいたうちには俺は駆け出していた。嫌な予感がする。
collectとか悪魔とかどうでもいい。俺の身内に手を出す奴だけは許さない。
葵の無事を願いながら新宿まで俺は急いで向かった。
ここ数日間、毎日のようにテレビやネット上で記憶喪失になるという怪奇現象のニュースを見かける。
記憶喪失になった者の所持品には「collect」と書かれた紙が入っているらしい。
「二階堂さんはこのことどう思いますか?」
俺に話しかけてくるこの目の前の女は、大学の後輩の「天空葵」だ。
容姿は俺目線から見て控えめに言っても、美人と呼ばれる領域に達しているだろう。
しかし、少し残念なことに占いとか怪奇現象とかそういうオカルトチックなことに目がない。そのせいかはわからないが彼女の浮いた話とか聞いたことが無い。
「どうって。気の毒だとは思うけど、記憶喪失なら医者がなんとかするしかないんじゃないか?」
「医者の方も原因がわからないから困っているらしいです。それにcollectって書かれた紙があるらしいから、人為的なものだと思っているんですけど…」
「はは。それならまるで人が意図的に相手を記憶喪失にさせれるって言ってるのか?まさにその名の通りに超能力だな」
「そうなんですよね。でも、そういう力があるって考えた方が説明がつくじゃないですか」
馬鹿馬鹿しい。超能力とか異能とかそんなものが存在するのは物語の中の話だ。
記憶喪失に陥ったのだって、実は薬物とか鈍器で頭部を殴られたとかそういうことなんじゃないのか?
「まあ、事実はわからないが最近は物騒なんだから気をつけろよ」
「二階堂さんも気をつけてくださいね」
「はは。格闘技も昔はしてたしお前よりは安全だよ」
くだらない会話をしながら俺達は飯を食った。
「ご飯も食べ終わりましたし、そろそろ帰りましょうか」
「そうだな。一応、お前は可愛い部類の人間なんだから気をつけて帰れよ」
「何かあったら二階堂さんに連絡しますね」
「俺がその時に行けるかどうかわからないけどな」
「その時は恨みますね」
彼女は少し笑って冗談のように言った。
葵と別れてからしばらく経ってから考えてみたが、俺はオカルトとかいった類の話には興味はない。しかし、葵にはああ言ったが今起きているこの記憶喪失の現象はたしかにおかしい。奇妙だ。
まず、他の国はともかく日本の中でも東京でしか発生していない。
加えて「collect」という紙。まるで、挑戦状だ。
「俺を見つけてみろ。俺がこの現象を起こしている張本人だと」
そのように言っているようにも感じ取れる。
しかし、もし仮にだが、記憶喪失が本当に人の手によって意図的に起こされているものだとすると、超能力だとか異能とかそういう力が本当に存在することになる。
ありえない。だが、そう解釈するのが1番しっくりくる。
「二階堂晴人、お前も欲しいか?その力が」
俺の心を読んでいるかのように後方から誰かが声をかけてきた。
いや、違う。正確に言うと後ろではない。声がする方向は俺の…上だ。
「誰だ!」
俺に声をかけてきたのは人では無かった。
山羊の角に猛獣のような顔面、痩せこけた体に漆黒の翼、明らかに人とは異なる存在。悪魔とか死神とかそういう類の存在。
「私はクランプス。お前達人間で言う所の悪魔だ」
「悪魔?それに力ってなんだ?なぜ俺の名前を知っている!」
着いていけない。情報量が多すぎて脳がキャパオーバーしている。
今記憶喪失になっている人達となにか関係あるのか?
「お前が考えている記憶喪失の現象は、おそらくメフィストフェレスが誰かに渡した力のせいだろう」
「俺にそんなことを伝えてどうするつもりだ」
「別にお前でなくてもよかった。ただ、面白そうな人間に声をかけているだけだ」
この悪魔は俺以外にも声をかけたのか?
かけたのならば何らかのSNSに投稿されているはずだ。
だが、ネットにもテレビにもそんなおかしなことを見かけたことは無かった。
まるでその部分の記憶がすっかり消えているかのように。
「私と会話し、力を受け取らなかった人間の記憶は消しているからな」
さっきからなんだ?
心が読めているとしか思えない言動だ。
「私は相手の思考が全て把握出来る」
「ほんとにフィクションの世界みたいだな」
ここまで言うのなら本当に力を授けることができるのだろう。
だが、悪魔との契約といえば副作用はつきものだ。
「力を望んだら、なにか俺に不利益はあるのか?」
「力を受け取るだけなら不利益はない。強いていえば、私が力を与えたことは他の悪魔にすぐに伝わる」
「それと力を受け取ることになんの関係がある」
「伝わるということは、他の悪魔が力を与えた者にも伝わるということだ。」
「力を持ったもの同士は戦うということか?」
「そうだ。私はお前が力を受け取ることを強要しない。力が欲しいなら私に血を捧げよ。そうでないなら拒否すればいい」
力があれば今起きている出来事を止められるかもしれない。
だが、力を持っているものは引かれ合う。
下手をすれば俺が殺されるかもしれない。
赤の他人のために自分の身を犠牲にする覚悟は俺にはあるのか?
いや、俺は無理だ。俺にはそこまでの正義感はない。しかし、止められる可能性があって止めないのも寝覚めが悪い。
どうするべきだ。
「待ってくれ。1日だけ考えさせてくれ」
「いいだろう。明日、6月20日の24時までは待ってやる。それまでに力が欲しくなったら私の名前を呼ぶがいい」
そう言ってクランプスは闇の中に消えていった。
状況を整理しながら家への帰路を歩いていると
ピロリン♪
俺の携帯に葵からひとつのメッセージが入ってきた。
「変な人達に絡まれました。助けてください。場所は新宿駅の近くの「のぼん」っていう居酒屋です」
気づいたうちには俺は駆け出していた。嫌な予感がする。
collectとか悪魔とかどうでもいい。俺の身内に手を出す奴だけは許さない。
葵の無事を願いながら新宿まで俺は急いで向かった。
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