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14.オレゴブ蔵。サヨナラ、ルーク。
しおりを挟む「フンッ!」
二つ目の扉を開けた人たちが、次々と本気を出し始める。
扉を開けた状態なら動体視力が強化されるからだ。
こうすれば、じゃんけんで相手が何を出すか、ギリギリの瞬間まで見切る事が出来る。
「俺たちは絶対に負けませんよ」
騎士の格好をしている元孤児のドーガとバッシュを両隣に置いて、燕尾服のルークがニヤリとニヒルな笑みで勝利宣言した。
元孤児たちは、皆が二つ目の扉を開けた猛者だ。
対して騎士たちはまだ一つ目の扉止まりの人が多い。
多くの騎士が不安そうな顔をする中、既に、二つ目の扉を開いた騎士の面々は余裕そうな顔だった。
「お嬢様、じゃんけんは流石に不公平では…」
アーロン騎士団長は、心配そうに私に相談してきた。
「大丈夫です、アーロン騎士団長。私に考えがあります。これを使ってください」
私は予め用意していた細長い布を、いくつかアーロン騎士団長へと渡した。
目隠し用の布である。
目隠し用の布を見て、余裕を見せていた騎士たちと、元孤児たちの表情が固まった。
⭐ ⭐ ⭐ ⭐
「いやだああああ!!ゴブ蔵ぉぉお」
「諦めるんだ。お前も最初はゴブリンかよってバカにしていたじゃないか」
「あああああっ!」
二刻後、俺の待っていた天幕の中では、燕尾服を来ている執事見習いであろう水色の髪の少年が涙を流しながら、騎士たちに押さえつけられていた。
「深部の魔物を倒した武具は、彼の愛剣でしてね。最後にお別れをさせてあげてもよろしいですかな? アイゼン殿」
深部の魔物を倒したというモールド伯爵領の新型兵器の見た目は、ただの数打ちのロングソードだった。
そのロングソードから小さなゴブリンがひょこりと姿を現す。
「ルーク…。戦争回避ノタメ。我慢スル。正シイ事」
なんと小さなゴブリンは、人の言葉で話しだしたではないか。
「俺にはお前が必要なんだああ!」
「ルーク。お別れを」
「お嬢様、アイツは友達…。そう、友達なんだ! 俺、一生給料いらないから…!」
モールド伯爵令嬢は数瞬押し黙り、小さく首を振ると、執事見習いの少年を外へと連れて行かせた。
モールド伯爵令嬢はロングソードに手に置き、魔力を流す。
「ゴブ蔵? 初めまして。ルークの友達のマリアよ。ちゃんとお別れ出来なくて、ごめんなさいね」
「マリア。オ嬢様。コレ、正シイ選択。デモオレ残念。ルーク騎士ニ出来タ」
「ふふふ。執事になっちゃいますからね。でも安心して? ルークは執事だけでなく、騎士としてもモールド伯爵家が責任をもって育てるわ」
「オレイナイ。ルーク、騎士ノ試練ノ受ケラレナイ」
「騎士の試練??なんのことです?」
「マリア。使者殿がお待ちだ。アイゼン殿。このロングソードをロムスタ伯爵へ。武具の精霊をお試しになりますかな?」
俺はモールド伯爵から摩訶不思議なロングソードを受けとる。
ロングソードに魔力を流せば良いのか…?
そしていざ魔力を流せば、ゴブリンは俺に話しかけてきた。
「アイゼン。ロムスタノ言イナリ、良クナイ事。オレ悲シイ」
小さなゴブリンの正論に、俺は苦笑する。
確かにロムスタ伯爵の暴虐に手を貸しているのだ。王国民のためには良くない事なのだろう。
しかし、今の俺には他に道がないのだ。
「アイゼン殿には、騎士の適性があるようですな。このゴブリンの精霊は騎士の適性を持つ相手にだけ反応します」
騎士というが、ゴブリンの精霊はモールド伯爵令嬢にも反応していたぞ。
まぁ、わざわざ声にはすまい。
「モールド伯。精霊の住むこの武具には、精霊の出る他にどのような効果がありますか?」
「より頑丈になり、魔力を加えれば修復しますな。もっとも修復には限界はありますが」
「…それだけですか? 精霊が一緒に戦ってくれたり等は?」
「彼らはあくまで相談にのってくれる、小さな相棒のようなものです」
モールド伯は控え目に答えるが、本音は解らない。
精霊の宿る武具に何か特別な能力はないだろうか。
これは自ら確かめねばなるまい。
「精霊が一緒に戦ってくれる?。夢のような、素晴らしい発想だ…」
モールド伯の隣に立つモールド騎士団の騎士団長が、俺の発言に反応し、なにやら呟いたのが聞こえた。
しかし、仮にモールド伯の言う通りであるならば、このロングソードは少し強力な数打ちの剣と変わらぬ物なのでは…?
俺の脳内に疑問が浮かぶ。
「モールド伯。本当にこの剣で、魔の森深部の魔物を倒したのですか?」
「魔の森深部の魔物をその武器で倒さねば、精霊は得られぬ故に、精霊は何よりの証拠になるのですよ」
「なるほど…。では、ロングソードは確かに受け取りました。」
これがモールド伯爵領の新型兵器…。
モールド伯の言う通りなら、確かに魔の森深部の魔物を倒した武器なのだろうが。
ロムスタ伯は見た目は普通の、このロングソードで納得するのだろうか?
俺は不安な気持ちと共に、ロムスタ伯の待つ天幕へと戻った。
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