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18.いったい何が起こっているというんだ。
しおりを挟む様々な魔法が、我がモールド伯爵軍に降りかかる。
この冬の環境で最も面倒なのが水魔法だ。
普通の兵がまともに受ければ、すぐに体温を奪われてしまい、動けなくなってしまう。
しかも、我が軍の多くの騎士は魔法への対処方法を持っていない。
騎士と気持ちを同じくするため、私は敢えて防御魔法を使わず、敵の魔法を直接受けた。
如何に鍛え上げた私の肉体でも、一斉に行使された魔法を受ければ、超痛い。
…痛いが、我慢すれば耐えられなくはなかった。
少しマリア式トレーニングを思い出したが、ロムスタ伯爵軍の魔法攻撃の方が、トレーニングより幾分マシなので、問題はないように思えた。
敵の魔法で立ち上る雪煙の中、足を止めずに前進していると、やがて視界は回復する。
「ありがたい。遠くから魔法を撃つ事に拘らず、相手からこちらに向かって来てくれるとは! これは千載一遇の好機!」
気づけば、ロムスタ伯爵軍はこちらに向かって来ていた。
「あの旗の下を目指せ!」
激を飛ばし後ろを見れば、血を流していても、欠けている騎士は誰一人として見えない。
当然だ、我がモールド伯爵軍は、マリア式トレーニングARAGYOUという地獄を乗り越えてきた真の精鋭なのだから。
※大半が乗り越えられていません
私は雄叫びを挙げながら、目の前の敵の騎士へと突貫する。
喰らえ、躍動する我が筋肉の咆哮を。
10メルト、…5メルト、3メルト、1メルト。
両軍は互いに距離を縮めていく。
私は、来るであろう衝撃に対して力を込めた。
ドドーン
そうして、思ったより小さい衝撃と共に、敵のロムスタ軍の騎士たちは天高く翔んだ。
⭐ ⭐ ⭐ ⭐
モールド伯爵軍との決戦で、カームベルト子爵の三男である俺に割り振られた位置は、機動力のある左翼側の部隊だった。
スノーウルフのソリの上に乗り、中央部隊から進軍の合図を待つ。
軽装な歩兵は、ソリで固められた道を後ろから続く予定だ。
俺は中央部隊の後方にある、ロムスタ伯爵家の紋章を意匠としている軍旗に目を凝らし続けた。
中央部隊の掲げる大きな旗の動きによって、命令は全軍へと行き渡るのだ。
「アイゼン隊長、進軍の合図です」
進み始めたモールド伯爵軍が、ロムスタ伯爵軍の魔法の弾幕に呑み込まれた後、一緒に軍旗を確認していた副官から報告を受ける。
「勝負は既に決まっているのではないか…モールド伯」
俺はそう疑問を口に出さずにはいられなかった。
俺は部下に了解の旗を振らせると、スノーウルフに手綱を入れ、モールド伯爵軍の側背を目指し、ソリを前進さる。
ドドーン
中央の部隊の入る所から大きな衝撃音が聞こえた。
慌てて中央の部隊を見ると、豪華な鎧で身を包むロムスタ側の騎士が複数人、3メルト近く真上に吹き飛んでいるのが見える。
一方で、貧相な装備のモールド伯爵軍は無人の荒野を行くが如く速度で、中央部隊のいるハズの場所を進んでいった。
「いったい何が起きている…?」
モールド伯爵軍の狙いは、包囲される前の中央突破しかないだろう。
しかし、それを熟知しているバリー騎士団長は、中央部隊の層を厚くしている。
俺は小さくなった軍旗を目を細め確認する。
新たな指示は出ていない。
「急げ! 中央部隊で何かが起こっている!」
俺は周りのソリに声を大にする。
脳裏にロムスタ伯爵の言った、モールド伯爵軍の新兵器が浮かぶ。
「まさか、モールド伯爵軍の新兵器は携帯出来るほど小さな物なのか…」
⭐ ⭐ ⭐ ⭐
「騎士団のみんなは随分張り切ったみたいですね。行きましょうトール」
「お嬢様。ご当主様の指示はここに残り、モールド伯爵軍の強さを知る事です」
「このままだとロムスタ伯爵軍の死傷者が多くなり過ぎますわ。そんな事はお父様とて望んでいません」
「まさか、死にかけのロムスタ伯爵軍の騎士を助けるのですか?」
遠くから見ても解る。
吹き飛ばされたロムスタ伯爵軍の騎士たちは、少なくとも重傷を避けられないだろう。
普通の人間は3メルトの高さまで吹き飛ばされる衝撃には耐えられない。
「勝負にさえならないんですもの。やり過ぎは、騎士の道としてもいけない事でしょう?」
私は顔さえ見えなければバレないでしょうと、用意してあったフルヘルムを被る。
バレるに決まっているだろと言いたげのジト目のトール。
「我々が行った所で、重傷ならどの道助かりませんよ。どうするつもりですか」
「それはポーションを飲ませながら、どうしようもないなら、私が。ね?」
「光魔法…。ご当主様にバレても知りませんよ」
トレーニングの開発に関わった孤児たちは、私の光魔法を知っている。
グズグズしていると間に合わなくなってしまうかもしれない。
私たちは急いで、ロムスタ伯爵軍が天へと翔んだ場所へ向かった。
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