転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう

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ヘンリーとエドワード

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私は軽いカテーシーでアルビン殿下に返事をする。
アルビン殿下の雰囲気は、私の持っていたやんちゃなイメージは鳴りを潜めて、大人の雰囲気に変わって来ていた。

「紹介しよう。右にいるのがヘンリー。ハワード公爵の次男だ。ヘンリー、彼女はモールド伯爵令嬢のマリア嬢」

深緑の髪をしている、細身で眼鏡の美男子が一歩前に出る。

「ヘンリー・ド・ラ・ハワードです。身内には風使いのヘンリーと言われています。最近人気のモールド伯爵の噂は聞き及んでいますが、モールド伯爵の令嬢ですか。マリア嬢、以後よろしくお願いします」

含みを持たせて自己紹介を終えるヘンリー様。
風使いとなると、得意な魔法は風属性、それも国内で上位の使い手にならなければ、何々使いとは呼ばれない。
身内贔屓で風使いと呼ばれているのか、それとも、実力が伴った呼び名なのか、私には判断がつかなかった。

「マリアと申します。得意な事は、(えぇと、肉体言語はダメよね)…恋愛小説を読む事ですわ。よろしくお願いします、ヘンリー様」

「左にいるのが、ミッドラント伯爵の長男でエドワード」

アルビン様とヘンリー様より少しだけ身長の低い、燃えるような赤髪の筋肉イケメンが、私ににかっと笑いかけてくる。
ミッドラント伯爵はその名の通り中央貴族で、うちと同じ武門の家だ。
中央貴族の武門の要と呼ばれている。

「エドワードだ。同学年だがアルビン殿下の護衛役を仰せつかっている。学園内で殿下の側を離れる事は少ないだろう。マリア嬢とはあまり関わる事はないかもしれないが、よろしく頼む」

エドワード様は、…武力の気配がまだまだ足らないと思うけれど、周囲の注意はきちんと出来ているように思う。
将来は近衛騎士を目指すのだろうか?
ミッドラント伯爵は、代々近衛騎士を輩出する家だし、トレーニングは近衛騎士にしてもらってるのかしら。

「アルビン殿下の護衛ですの。頼もしい方なのですね。私、騎士の訓練にも興味がありますの。機会があれば、お話を伺いたいですわ。よろしくお願いします、エドワード様」

「ああ、訓練の話なら出来るな。時間が合えば付き合おう」

そう言ってエドワード様はウインクした。
護衛のイメージとは離れるけれど、気安い人柄なのだろう。

「ロムスタ伯爵とのいさかいは大変だったね。…ああ。学園ではチェルシーが君の後ろ楯になるのか」

アルビン殿下は私のストールから、ケニー公爵家の紋章を見つけたのだろう。
アルビン殿下はチェルシー様に、うちのモールド伯爵家とロムスタ伯爵のいざこざに関わらないで欲しいようだ。
複雑な顔をしている。

「はい。父からも、ロムスタ伯爵様とのいさかいが終わるまで、学園では静かにしているよう言われております」

「そうか。ロムスタ伯爵の息子は、我々の一つ上の年齢だったな。十分に気をつけてくれ」

アルビン殿下の言うとおり、王立学園にはロムスタ伯爵の三男がいる。
年は一つ上で私たちの先輩だ。
学園では何事もなければいいのだけれど。

「学年が違うので幸いでしたわ。私からは近づかないようにいたします」

「それならば良い。王家としても、これ以上のロムスタ伯爵とモールド伯爵の争いを歓迎してないからな」 

「アルビン殿下の仰せのままにいたします」

モールド伯爵家の一員として、異論はないので、深く私は頷いた。

「チェルシー。モールド伯爵令嬢のストールの模様は君の考案した意匠だね?」

私への用は済んだのだろう。軽く頷くとアルビン殿下はチェルシー様に話かけた。

「流石アルビン様。お気づきになられましたのね」

「君の事なら当たり前だ、チェルシー。風林火山…。風のように速く、林のように静かに、火のように激しく、山のように動かない、だよね? 私にも同じ意匠で何かつくってくれないのかい?」

「あら、そうしたら師…、マリアとお揃いになってしまいますわね」

じとっとした目で、私を見るチェルシー様。
師は巻き込まれてるだけの立場です、我が弟子よ。
私は涼しい顔でチェルシー様の視線をスルーする。

「私服の時は、モールド伯爵令嬢に遠慮して貰えば良いさ。チェルシーの服には同じ意匠の物がたくさんあったろう。私とチェルシー、同じ意匠で、服を揃えてみたいとは思わないかい?」

アルビン殿下、まさかのペアルックの提案である。
そんなに良いのだろうか、風林火山の文字。
こちらの世界は文字が違うので、メッセージ性はなく、デザインの好みだけになるんだけれど。

「まぁ、アルビン様と同じ意匠の服を! 私もしてみたい、ですけれど。王家に連なるアルビン様に私の意匠を揃えさせるなんて、恐れ多いですわ」

そう言いながら、嬉しそうに顔を赤く染めるチェルシー様。

「そうか、君も賛同してくれるか、チェルシー」

嬉しそうなアルビン殿下。
いや、チェルシー様は賛同なんかしてなくて、問題ありと反対してるよと心の中で突っ込む私。
お供の二人も顔を固まらせて見守っている。

「細かい所はお互いの職人を呼んで決めよう。チェルシーの所の職人はどんな事が得意なんだい?」

「殿下、もうそろそろ時間になるかと」

暴走するアルビン殿下に、ヘンリー様が入学式の時間が迫っていると告げる。
私たちは大聖堂の中へと向かった。


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