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騎馬突撃。次回…
しおりを挟む謎の魔法で左翼を壊滅され、頼みの火の槍を弾き返され、絶望的な状況にあるにも関わらず、モールド伯爵軍に果敢に突撃していく第5軍。
解き放たれた矢のように突き進む騎兵隊を見つめる第5軍以外のロムスタ連合軍側の兵士たち。
「あの先頭の勇敢な騎兵は誰だ!」
「バリー騎士団長だ!」
「バリー! バリー! バリー!」
第5軍の応援を始めるロムスタ連合軍。
「行けぇ! 進めぇ!」
ロムスタ伯爵も一緒に喉が千切れんばかりに叫んだ。
事情を知らず、出兵を強要された東部貴族に属する農民兵士も思わず叫んだ。
たとえ応援する相手が、東部地域を荒らした張本人のロムスタ騎士団長バリーであっても、この場で戦に負け、故郷に家族を残したまま死ぬよりはマシだからだ。
「頼む! 頼むから、勝ってくれ!」
「あの魔法陣が発動する前に! 早く! 早く!」
「モールド伯爵軍を倒してくれ!」
ロムスタ連合軍の心は最早一つになっていた。
だが、突撃していく第5軍を助けるための肝心の足は動かない。
過去、戦に一度畏れを抱いてしまった多くの兵士たちも同じ行動を取ってきた事だろう。
頼みの綱を応援はするが、率先して動く事は出来ない。
それは、正に負ける寸前の軍の様相だった。
──騎兵の強さとは何か?
人より遥かに大きい500キロを超える巨体が、騎士を背に乗せて人より速い速度で突撃してくる。
騎馬突撃を目の前にして恐怖しない者などいるのだろうか。
騎兵の立場から見れば、騎乗による目線の高さの確保によって、状況把握はより容易になり、指揮は的確になる。
機動力は、それが単にあるだけで軍の連携を高めてくれる。
騎兵は、戦場の主導権を握るための必須の兵科だった。
それは、魔法のあるこの世界でも変わらない。
だが、騎兵はバリーの思うような、歩兵に必ず勝てるような兵科ではない。
歴史上、騎兵は度々、槍さえ持たない歩兵に敗北して来た。
それは何故か?
恐怖を克服した鍛え抜かれた練度の高い歩兵が密集陣形を用いる時、正面からの闘いでも、騎兵と同等の強さを持っていたからだ。
過去、東部地域で、禄に訓練も受けていない農民中心の歩兵を蹴散らして来たバリーは、無敵の兵科である騎兵の弱点に気づかなかった。
騎兵が本当の真価を発揮出来るのは、騎兵への恐怖を克服出来ていない、農民中心の弱兵を相手にした時だということに。
騎兵の強さの本質とは、巨体を誇る動物に強力な騎士が乗り、畏怖をまき散らす事にあるのだから。
対するモールド騎士団はどうだろうか。
魔の森の深部には、バトルホースという1トンを超える6本足の馬の怪物が出る。
一度領地に入られたら、領軍だけでは対処出来ず、王国軍の応援を待たないと倒せない、バトルホースはそんな魔の森深部の魔物の一種だ。
バトルホースは、正に恐怖の権化とも言える。
近年、マリア式トレーニングの導入によって、モールド騎士団は援軍なしの単体で、魔の森深部の魔物に対処出来るようになった。
ARAGYOUを乗り越えた騎士は、たった3人で恐怖の象徴でもあるバトルホース1体を仕留めるのだ。
そうして仕留めたバトルホースの肉は、万が一市場に出れば幻の高級肉としてオークションで売買される事になる。
モールド伯爵騎士団が幻の馬肉を食べるために、度々魔の森深部に訓練に行く事を、ロムスタ騎士団長バリーは知らなかった。
騎兵で突撃して来たロムスタ連合軍第5軍を見て、モールド伯爵その人は、先頭で馬を駆る豪奢な紫の髪をなびかせる大柄な騎士をギロリとひと睨みした。
大柄な騎士の後に続くのは魔法の鎧に身を包む精兵の騎兵達。
カチリ、カチリ、カチリ。
モールド伯爵は普段抑えている強さの扉を開けた。
「身の程知らず、とも言えますな」
モールド伯爵の隣に控える、モールド騎士団長アーロンは冷静な口調で口角を上げた。
マリア親衛隊のドーガは沈黙を守りながら悠然と前へと歩き出す。
もう一人のマリア親衛隊バッシュは立ち止まりながらも気怠そうに頭を搔いた。
─────
次回「城之内死す」デュエルスタンバイ!
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