転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう

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その頃王都の別邸では

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私は王都の平民街の邸宅にある訓練場で、執事ロッゾの珍しい拾い物が、ロッゾ相手に頑張っている姿を見ていた。

「…!! 二人同時で行く!」

「はっ! ラグ様」

微動だにせず、拾い物二人の攻撃を待ち構えるロッゾ。
拾い物二人が手に持つ獲物は、アロンソさんに注文して売ってもらった特注の木剣だ。
硬化の付与魔法がかけてあり、モールド伯爵家の強力な騎士の力でも耐えられる逸品である。

「…ッッッ」

「ああっ、ラグ様ーっ」

訓練場の端まで吹っ飛んで行く拾い物の片割れ。
彼らは先日、モールド伯爵家の平民街の別邸を襲って来た連中の内の一組である。
話を聞くとどうやら二人は、教会の武力部門を担う組織の構成員であり、今吹っ飛んでいったラグは強さで言えば、聖園七騎士と呼ばれる幹部の末席で、相当上位の人物らしい。
王都のダンジョンで私を襲って来たミカと言う人物と同じ立場の人間だ。
何故、モールド伯爵家別邸を襲撃した彼らがここに居るのかというと、結論から言えばロッゾが二人をスカウトしたからだ。
たくさんいた襲撃者たちはロッゾとアロンソさんファミリーの守りに敵わず、最期には別邸への襲撃を諦め撤退したんだけれど、襲撃の事情を知るために捕虜をとった。
捕虜の尋問の際に活躍したのが、悪者特攻の私特製の秘薬である。
清く正しく生きた人には良質のポーションになるのだけれど、悪者が飲むと苦しみ、飲み過ぎれば死ぬ秘薬だ。
襲撃者の多くが気持ちよく情報をゲロった中で、ケロりと平気な顔だったのが、目の前でロッゾにボコボコにされている拾い物二人組である。
彼らが言うには、モールド伯爵家別邸への襲撃はどうにもきな臭いが、王都の教会からの正式な命令だったらしく、生真面目な彼らは逆らえなかったそうだ。
教会の武力部門では、最近不穏な命令が蔓延っており、任務に失敗した彼らは、教会に戻ればきっと幹部と言えども降格され、とても危険な任務につかされるそうだ。
しかもその危険は任務は、凶悪な犯罪をも厭わない物なのだ。
裏技とも言える秘薬の効果で、根は善良だと判明した彼らに、ロッゾは助け船をだした。
月に金貨5枚、昇給あり、モールド式トレーニング付きで密かにモールド伯爵家に雇われないかと。
人手不足のモールド伯爵家は、王都で人手を絶賛募集中なのである。
もちろん、教会所属の彼らを引き抜くのは、教会に喧嘩を売る行為であるから表立って彼らを雇う訳にはいかない。
教会の監視のある王都で堂々と使える人材ではないだろう。
しかし、どんな事情があるにしろ、先にモールド伯爵家に喧嘩を売ってきたのは教会である。
モールド伯爵家は部門の家。
貴族のメンツの問題もある、正当な理由もなく売られた喧嘩は買うのみである。

「彼らは使えそう?」

「戦力としては少々教育が必要でございます」

休憩中のロッゾに問いかければ、教会の強者と聞いたけれど少し不満があるみたいだ。

「戦力としては、ね。出来れば直ぐに情報収集の部隊が欲しいの。部隊の名前はもう考えてあるわ。トレーニングO N M I T Uに特化した部隊SHINOBIよ。彼らはそこにどうかしら?」

「SHINOBI…。部隊とするなら、訓練の時間と、もう少し人数が欲しいかと」

ロッゾはそう答えると、気配鋭くニヤリと笑った。
私もニヤリと答え返す。

「…そうね。期待の新人が捕らえられれば良いのだけれど。ダンジョンではもったいない事をしたわ。不審な人物を連れてダンジョンから外には出れないもの。でも、幸いラグは教会内では人望があったみたいだから、きっと、彼を取り返しにくるわ。出来ればたくさん釣れると良いわね」

「暫く別邸は忙しくなりそうです」

「頼むわね、ロッゾ」

空から精霊の小鳥がロッゾの肩に降りて来た、どうやら手紙を届けてくれたようだ。
ロッゾは小鳥の精霊から防水のための小瓶を受け取ると、中の手紙を取り出し読み上げる。
重量制限のために内容は極力少なくなっている。

「戦には完勝。モールド伯爵の愛剣が喪失した。愛剣を精霊の墓標にしたため伯爵は使い物にならず。方針決まらず、執事長は至急戻られたし。東部貴族は回復魔法を使うトレントを中心にまとまっている模様。…ふむ?」

「…どうにかして、精霊の運べる重量を増やすべきね」

速度重視で内容を少なくしているのだけれど、情報量が多い時は機能しているとは言い難い。

「何故、旦那様は愛剣を墓標に…? たとえ住処を失えど精霊は死なないのでは。縁起でもありませんな。そして、トレントですか」

「そうね、愛剣を墓標にしたのはパニック。かしら? というか、みんなには武器を大切に使わせたいから、精霊がどうなるのかの、その辺は情報を制限してるのよね。お父様も武器の喪失については詳しく知らないのかも。アーロン騎士団長は知っているのだけれど」

「そうでしたか。同じ精霊を再び召喚する方法はあるのでしょうか?」

「…ラテ? 聞いていたでしょう? どうなの? 失った精霊は再び取り戻せる?」

私はロッゾにも聞こえるよう、自分の精霊を実体化させて問いかける。
石の姿をした精霊ラテは、コロリコロリと行ったり来たりを繰り返す。
ラテはモールド伯爵家の中では最も古い精霊で物知りなのだ。

「若イ精霊、気ママ。コッチノ世界ト繋ガリナイナラ、戻ッテ来ルカ解ラナイ」

「そう。世界を繋ぐ目印のような物が必要なのかしら?」

「物デハ無理。…世界ヲ繋グ特別ナチカラアル。精霊使イ持ッテル」

「ありがとうラテ。精霊使いね。ロッゾは精霊使いの話を聞いた事はある? 私はないわ」

「寡聞にして存じ上げませんな」

「今、ロッゾは王都から動かせません。…何とかして探す必要があるわね、精霊使いとやらを。それか、トータスを引き当てるまで、お父様は魔の森深部に籠もり、精霊ガチャを続けるしかないわ」

手紙に書いてあるトレントは、多分シアとクロエの育ててるトネリコだと思うけれど、仮に回復魔法を使えても、あんな魔物紛いの物で、東部はまとまらないと思う。
どう考えても、お父様の復活は急務だった。
精霊ガチャ…。
確率は何%で、救済の天井はあるのだろうか。

「お嬢様。このロッゾ、何としてでも精霊使いの情報を見つけてまいります」
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