【本編完結済】未来樹 -Mirage-

詠月初香

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1章

0歳 -水の陽月4-

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『昔々……
 地の神、水の神、火の神が力を合わせて世界を作り上げました。

 神々は様々なモノを作り上げた後、
 自らの力を無数の精霊へと変化させて世界へと放ちました。

 その神の力の欠片である精霊によってあらゆるものが順調に巡り始めた頃、
 三柱の神は自分こそが一番素晴らしい働きをしたと、
 誰が“主神”となるかで揉めだしました。

 何時しかそれは戦いとなり、
 堅牢なはずの地は脆く崩れ去り
 清涼なはずの水は濁り腐り
 煌めき暖かなはずの炎は禍々しい呪いをまき散らしました。

 終わりの見えない神々の争いの舞台となった大地は
 何時しか崩壊寸前になっていました。

 それに気づいた神は無垢な子供とその世話係としての男女数人を船に乗せ
 未だ恵みの残る大地へと送り出しました。
 次の船には数多の動物や植物、そしてその世話をする男女……。
 その次の船には……と様々な命を船にのせ、別の大地へと向かわせたのです。

 咎人だけを残して……。』

         創世神話(子供向け)より抜粋


******


精霊ってどういった存在なのですか?という私の問への答え……。

それには聞き覚えがありました、ありすぎました。
三精霊が歌うようにして話す内容に私は思わず目を見開いて思考が停止してしまいます。それは

「未来樹……。」

思わず呟いたそのタイトルを持つ作品群の主幹となる世界観の一部。というか私の感覚でいえば、ほんの数時間前にバスの中で読んでいた作品の一部です。

(……まてまてまって、転生したと思ったけど……
 実は今、長大かつ壮大な走馬燈を見ている最中なんてオチ?
 でも走馬燈ってそれまでの人生を振り返るんだよね?
 走馬燈で見るモノが自分の人生じゃなくてはまったラノベって情けなくない?)

思わず頭を抱えそうになる私を、三精霊は不思議そうに見ています。
いや、目がどこかは解らないけれど……。

「あの、ちょっとお尋ねしたいのですが……。風の精霊っています?」

恐る恐る確認をしてみます。ファンタジー好きやゲーム好きにはなじみのある四大精霊。でもこの世界には……

「何を言っているのです? 今の私達の話を聞いていましたか?
 我らは太古の神の欠片です。風の神なんて居ませんよ」

(ですよねーー)

そう、日本人&ファンタジー好きな私の感覚だと精霊というのは自然現象の具現化なのだけども、この世界ではあくまでも神の(力の)欠片として存在している。だから風の精霊は居ない……。ただネット上にある様々な考察サイトでは小説などの伏線から、風の神の存在を推察する人もいたりはするのだけど……。

「では、この世界には「ヤマト」「ミズホ」「ヒノモト」って国はあります?」

「赤ん坊のくせに良く知ってるな! このアマツ大陸にある3国家だぜ」

(やっぱり……)

そう、アマツ大陸の中心にある天都、地の神を信奉するヤマト、水の神を信奉するミズホ、火の神を信奉するヒノモトが作品の主な舞台なのです。

ちなみにアマツと書けば舞台となる大陸の名、天都と漢字で書けば大陸中央にある朝廷兼都市の名。同じようにヤマトは国名で大和は首都名、ミズホは国名で瑞穂は首都名、ヒノモトは国名で火乃本が首都名と小説内では書き分けられていました。何より国名の場合は〇〇国と表記される事が多く、また会話では微妙にアクセントなどが違うらしく、同音でも会話中に混同する事はないようです。

正直紛らわしくないのかなぁ?と思ったけれど、考えてみたら日本でも県名と市名が同じところもあるし、意外と「そういうもの」と思ってしまえば何とでもなってしまうのかも。

そのアマツ大陸は横倒しになった下膨れヒョウタンのような……、或は凸を回転させたような……。なんというか十字の右側が欠けたような形をしています。
勿論詳細に描写をすれば色々と違うんですけど大雑把に言えばそんな形。

先ほどの神話であったように、船はこのアマツという大陸に流れ着くのだけど各王家は自分たちの信じる神こそが勝ち残った主神であり、自分たちこそがその神の手でこの島へと送り込まれた正統な血筋であり、大陸を統べるのは自分の国の正当な権利だと信じ切っているのです。だから昔は争いが絶えなかったのだとか。

ちなみに神々の争いのあった地はマガツ或はマガツチと呼ばれています。
漢字で書くと「禍都(地)」で、その名の通り禍々しいモノ、邪悪なモノのいる地です。咎人だけが残されたという伝承から禍々しい罪人の地という認識なのでしょうね。小説では後々、主人公たちはアマツを出てこのマガツに行く事になるのだけれど、私はまだそこまで読んでないのです。無理を承知でいえば小説を持ったまま転生したかった。


……ふと、今とっても重要な事が頭をよぎりました……。


これが走馬燈ではなく、本当に転生してこの世界で生きていくとなった場合、この世界って……どの作品準拠なんだろう……?

未来樹はゲーム一つとっても、それぞれ難易度がかなり違うのです。
私はやった事がないけれど、天都朝廷内での立身出世モノや各国家で大陸統一を目指す国家運営ゲームなんかだと事あるごとに死亡・滅亡フラグがバンバン立つ程に難しいらしいです。

他にも女性向けの恋愛ゲームですら選択肢一つ間違っただけで、ヒロインは死なないけれど攻略対象及び周囲が死屍累々になる為、非恋愛ゲームとか悲恋哀ゲームとか言われていました。比較的ぬるいゲームしかプレイしたことが無い私にとっては、なかなか衝撃的な難易度です。

他にも避けたいところでは二次創作関係……それも成人指定モノ。
噂程度にしか知らないのだけど、目を覆うような描写があるらしいです。
そんなの絶対に絶対に嫌だ……。 

とにかく死亡フラグが満載な作品と成人指定された作品準拠は勘弁してほしいです。作品によっては主要キャラに近づかなくても被害・死亡フラグが乱立するっぽいので……。




「しかし漸く合点がいった。異世界なぞというものがあるとはな……。
 精霊の守護が無かったのはその所為であろう」

金ぴかの地の精霊が堅苦しい言葉を出しながら転がってます。

精霊たちがこぞって様子を確認しに来た理由が、未来樹という世界ならば理解できます。このアマツで生まれた人は精霊の守護が当たり前な反面、マガツで生まれた人には精霊の守護がありません。恐らく最初は私をマガツ生まれ=混乱をもたらす危険人物として様子を見に来たのでしょう。

「だから常識知らずなんだな!
 ったく、俺様さっき死んだと思ったぜ?」

「死んだ……ですか?」

「あぁ、お前さ。さっき俺様達をまとめて守護にしただろ?
 普通あんなことやったら力の干渉が起こって辺り一面吹き飛ぶぜ??」

「……は?」

今、なんかとんでもなく危険なセリフを聞いた気がします。

「いえ、ですからね。地の精霊はともかく火と水を同時に守護に持つなんて
 ありえないんですよ。未だかつてそのような守護を持った人はおりませんが、
 単純に水と火の精霊力を超至近距離で全力でぶつけたと仮定した場合
 その場に居たものは良くて魂の消滅、下手をすれば辺り一帯の消失ですね」

いやいやいやいや、ちょっと待ってくださいよ、水玉さん。
私は何時お三方を守護精霊にしちゃったんですか?
もしかしてさっきのあの他愛のない一言で決まったなんて言いませんよね?
てっきり“とりあえず今夜一晩”の事だと思ってたんですが……??
しかも私の一言で決まってしまうなんて思わないじゃないですか!!

……って、それよりも!

ここが未来樹の世界なら、複数の守護持ちってキャラが少数ながらいるんですよ。

まずは主人公の母親の沙羅さら
彼女は確か水と地の複数守護持ちです。だから精霊たちがいう相性的には問題はないです。

そして主人公の兄のえんじゅ
最初は地の単属性守護だったのが、試練を乗り越えて後天的な地と火の二属性持ちとなります。

でも主人公のさくらは先天的な三属性持ちのはずなのです。
私の知っている未来樹とは微妙に世界が違うのでしょうか?
何かわかりやすい判断基準はないかな?と小説のストーリーを思い返します。

(下手に未来の事を喋る訳にもいかないし……。
 私の知っている情報をもう一度整理して、対処を考えないと……)

主人公と一緒の三属性持ちになってしまった訳ですが、万が一にも自分が主人公だなんて事態は避けたいところです。いっそ悪役令嬢とかのほうが助かるとすら思います。

だって悪役令嬢って、家柄だったり容姿だったり才能だったりが高レベルにも拘らず、それらが吹っ飛ぶぐらいの、これぞ悪役!といったとんでもない性格をしている事が多い訳です。

この性格ってのが前世の記憶を持っていれば、そして現代日本で普通に育っていれば、ありえない程の性格な事が多い訳です。勿論覚醒するのが遅ければ色々と難しいこともあるんだろうけれど、こんな幼児を通り越して乳児の時点で覚醒していれば、軌道修正は楽にできそうです。

ところが主人公の場合、性格込みで高スペックを要求されるわけで……。
前世において「残念系」と言われていた私では無理です! 死亡フラグが乱立しちゃいます!

小説内で主人公は精霊と会話しているような描写は無かったように思うので大丈夫だと思いたい。念の為、精霊たちを相手に色々な知識の確認をしていきましょう。




この世界には精霊が居る。

そしてアマツに生まれた人は「精霊の守護」を得る。

守護というのは生まれた時から死ぬまで……例外はあるものの……一生を通じて持つもの。基本的には一人につき一精霊が守護を与えて守ってはいるけれど、常にその人の側に精霊がいるという訳ではない。

精霊は対象に守りの力を纏わせといて、自分は心地よいと感じる場所に行っている事の方が多いらしい。なにその放任主義……。

対し「精霊の加護」というのもある。
これは一時的な精霊の守り。いうなれば精霊の守りのブースト。

例えばある程度以上の規模の船着き場には水の加護を与える為の水の神社かむやしろがあって、船旅をする人に一時的な加護を与えたりしている。

そして精霊の守護はアマツ人なら全員があるけれど、精霊を見る事が出来るかどうかは別で、多くの人は自分の守りがどの精霊の力か判別する事が出来ず、十三詣りという成人の儀式で教えてもらう事になる。教える事が出来る人は、能力によっていくつかの階級があって

 霊 士:精霊の存在・属性をうっすらと感じ、或は見える人  (村に数人)
 霊術士:自分を守護する精霊の力を借りられる人 (町に数人)
 霊道士:自分を守護する精霊の力を行使できる人 (都市に十人前後)

ここまでは比較的見かける人たち。
ちなみに霊術士と霊道士の差は激しく、霊術士は精霊の同意を得ないと力を発動できないのに対し、霊道士はある程度までなら強制的に力を発動させることができるんだとか。で、更にこの上に

 霊導師:自分の守護する精霊の力を行使+相性の良い精霊の力を借りられる人

一般的には「れいどうし」という発音が下位の霊道士とかぶるので「導師」と呼ばれる人たちがいる。ただ、この人たちも複数の守護を持っている訳ではなく、守護+加護で違う精霊の力を扱えるというだけ。このレベルになると国に数人しかおらず、天都や各国の有力者のお抱えとなっている場合がほとんど。有能な導師を手元に置いておきたいのは施政者の常らしい。

そして最後に

 天人(天女):複数の守護属性もち

という……主人公規格がある。ちなみに男性の場合が天人、女性なら天女です。
以前、漫画化を手掛けた作家さんがブログでちょっとだけ情報公開をしていて、
何でも未来樹作品でキャラを作る際には注意事項があるらしく

 ・試練を経て得る後天的な複数守護は要相談(易)
 ・先天的な複数守護は要相談(難)
 ・三属性守護は不許可
 ・聖・闇属性は存在しない

という事になっているらしいです。
不許可とされている三属性守護持ちが、この世界の作品群の大元となっている小説の主人公の櫻な訳で。つまり櫻以外に三属性持ちは居ないってことになるのだけども……避けたい、めちゃくちゃ避けたい……。

私はそればかりに気を取られていて、うっかりな一言をぽろりと漏らしてしまったのです。

碧宮家みどりのみやけって……今、どうなってます?」

と。
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