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1章
未来樹とMirage :櫻
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衣食足りて礼節を知る。
これは前世にあったことわざですが、元々は大昔の中国の政治家の言葉だったと記憶しています。意味は確か「生活にゆとりがあってこそ、人は礼儀や道徳といったものを意識できるようになる」という感じだったかな?
それ、こちらの世界でもバッチリ当てはまります。
まぁ、私としてはそこに住も足して「衣食住足りて~」の方が正しいと思います!と全力で主張したいところです。絶対に清潔で快適な住環境や質の高い睡眠は、人格形成に影響があると思うんですよね。岩屋から拠点に住み替えた以降、みんなの顔色が良くなって笑顔も圧倒的に増えましたし。
そういう衣食住に余裕のある生活を続ける事で、日々の生活に追われることがなくなり、やっと様々な事を考える余裕が出来ました。2年かけて三太郎さんや母上たちと一緒に、あーでもないこーでもないと知恵を出し合って頑張ってきた甲斐があったというものです。
そこで改めて、前世で知ったこの世界の事を思い出してみました。
これに関しては三太郎さんにも説明しづらい部分もあるので、一人脳内会議です。
前世で「未来樹」という小説を読んだ事がありました。というより、死んだ前日の夜も朝方まで読んでいました。私はその小説全3部の内、1部と2部の最初の部分までしか読めていません。此方の世界に来てしまったので……。
その第1部。主人公は碧宮家姫沙羅でした。そう、母上です。没落寸前どころか没落が確定していた宮家に生まれた特殊加護持ち「天女」で、波乱万丈な人生を歩むことになります。
未来樹は根幹といわれる正史扱いの小説とは別に、葉生と呼ばれる「もしも〇〇だったら」的なIFルート扱った作品が多い事が特徴で、その葉生をMirageと呼んでいました。
たとえば葉生の一つに恋愛ゲーム、いわゆる乙女ゲーがあり姫沙羅はそのゲームでも主人公でした。
乙女ゲーと言っても巷で良く聞く悪役令嬢なんて役どころの人は存在しないゲームでした。東宮が18歳の時の事。天都にある通称「天学」と呼ばれる学び舎を卒業した後、正式に東宮となる為の「机並べの儀」と呼ばれる特殊な教育を受け始めるところからゲームスタートでした。15歳だった姫沙羅はその儀に強制参加させられる事になります。この儀は東宮と東宮妃予定の女性との顔合わせ兼お試し期間で、東宮と一緒に勉強しながら親密度を上げていくというものでした。
例えば……
ヒノモト出身の緋の妃予定の牡丹は東宮と一緒に軍の指揮や武術を。
ミズホ出身の蒼の妃予定の菖蒲は東宮と一緒に神事や文学を。
ヤマト出身の黄の妃予定の金蓮は東宮と一緒に様々な技術や数学を共に学ぶのです。
そうやって元々は特に劣るところも無いけれど秀でるところもなかった東宮を、一人前の東宮に育て上げるゲームでした。乙女ゲームなのに攻略対象が一人なの?!と驚いてしまった事を覚えています。もっとも、すぐに勘違いであることに気付きましたが。
本来、碧宮家は東宮に妃を出しません。なぜなら碧宮家の跡取りに、東宮の姉妹のうち一番釣り合いが取れた女性が嫁ぐという形で帝の血脈の保護をしていたので、アマツ三国とのバランスの関係で妃を出す事は無いのです。
ではどうやって乙女ゲーにしたかといえば、東宮の周りの人が攻略対象でした。ざっと思い出せたところでは年上枠・ヤンデレ枠・年下枠の3名ですが、確かセクシー枠とかインテリ枠の攻略対象も居たはずです。
例えば東宮の護衛として常に付き従っていた武人の海棠。年上枠の彼は何があっても表情を変えない生粋の武人でしたが実は甘党で、こっそり隠れて甘いものを食べて嬉しそうに笑う顔が良いと人気でした。
他には東宮と学び舎で同級生だったミズホの王族で菖蒲の弟の紫苑。彼は超がつくレベルのシスコンのヤンデレでした。彼のルートはかなり難易度が高いと評判でしたが、恋愛エンドのスチルの美麗さは全ルート1だと言われていました。
姫沙羅の弟の令法の友人で、ヤマト国の双子の王子の片割れの茴香も攻略対象でした。彼はまだ10歳と幼いので、恋愛対象というよりは守ってあげたい弟という感じでした。エンディングでは10年かけて気持ちを育てていくといった感じだったはずです。
乙女ゲーの中の姫沙羅は、東宮のステータスを元に授業スケジュールを組んで、東宮の能力バランスと三国の勢力バランスをとる役目を担っていました。その合間に様々なイベントをこなして攻略対象との親密度を上げていく訳です。なので他の宮家の妃予定の方々は悪役どころかライバルですらなく、むしろ一緒に東宮を能力アップさせる戦友なのです。
ただ様々なフラグ管理をする事で、姫沙羅も東宮妃になれるルートがありました。それはもう無茶苦茶厳しい親密度管理が必要で、例えばシスコンヤンデレの彼は親密度がなかなか上がらないのですが、隠しルートに入るには攻略対象全員の親密度を友人以上にしなくてはならず、かといって上げ過ぎて恋人確定ラインに入ってしまっても駄目なのです。シスコンヤンデレ君の場合、それが親密度85%以上90%未満という厳しいものでした。
まぁ、それぐらい厳しいフラグ管理が必要なルートが東宮妃ルートでした。
根幹の小説でも葉生と同じく机並べの儀は行われました。そして姫沙羅も妃予定の三人と一緒に参加しています。ちなみに妃候補ではなく予定なのは、「ほぼ確定だけど相性が合う合わないの問題はあるだろうから、どうしても駄目なら言ってね」という最後の配慮らしいです。現に極めて稀にですが、机並べの儀の途中で妃予定の女性が変わった事が過去にはあったそうです。
その儀において姫沙羅は上手に三妃(予定)とアマツ三国のバランスを取った事、なにより天女であった事が決め手となって、帝に強く東宮妃になるよう望まれました。そして東宮も「ぜひ側で支えてほしい」と何度も熱意を見せたのです。ただ碧宮家の女性が東宮妃になった前例はなく、姫沙羅自身も断り続けていました。
まず最初に明言しますが、私は母上が大好きです。
えぇ、母上は大好きですが「姫沙羅さん」となった場合は少しだけ事情が変わります。嫌いではありませんが、友人だったらちょっと頭が痛い思いをするだろうなぁという気がするのです。彼女は基本的に人が良く、そして頼まれたら嫌とは言えない性格です。頼られることに喜びを見出している感もあります。あと、自分が我慢すれば丸く収まるという場合、間違いなく自分が我慢する事を選びます。それが自分にとってどれだけ不本意であってもです。もし友人だったら、「そんなんじゃ利用されて、あなたが大変な思いをするだけじゃない!」と言ってしまうと思います。
実際、姫沙羅は東宮妃になる事を断り続けていたものの、僅かな時間の合間を縫っては訪れる東宮に何度も頼み込まれ……。また、帝の強い要望に抗って日に日にげっそりとしていく両親を見て、自分が頷けば全て丸く収まると思って折れたような描写が小説にはありました。その結果、「姫沙羅の気持ちが最優先だ」と言っていた碧宮家当主も、渋々ではあったものの娘が東宮妃となる事を受け入れました。なので碧宮家襲撃事件さえなければ姫沙羅は東宮妃となって、槐は次代の東宮となっていた事でしょう。
ですが、現実は姫沙羅は東宮妃どころか姫を捨ててただの沙羅となり、槐が東宮になる事もありません。
また沙羅は母親になった事、そして襲撃事件を受けた事で、自分を犠牲にして平穏を得る性格は我が子に悪影響を及ぼすと思ったようです。その事件後は少し性格が変わって今のように優しくも芯がある母親になりました。
そういう意味では結果オーライというやつなのでしょうね。
死亡者が出ているので、心からそうは思えませんけど……。
常々思っていた事がありましす。
この世界は根幹なのだろうか、葉生なのだろうか……と。
ただ、根幹ならば私は私であってはならないのです。
前世の知識を使って色々やってしまう「櫻」はありえないのです。ならば葉生かと言われると、あまりにも根幹に近い気がして仕方がないのです。背中がゾワゾワとする嫌な感じが止まりません。何だかスッキリしないのです。
そして第2部が始まるのは槐が13歳、櫻が10歳の時。
つまり私からすれば、関与できる……変える事の出来る未来であり、変えなくちゃならない未来です。私がこの世界に来た時には第1部は既に終わっていたので、全く関与できませんでしたが、これからは違います。
第2部の開始は衝撃的で、沙羅と橡が事切れるところから始まりました。
そんな事、絶対に阻止して見せますけどね!!
その為にやらなくてはならない事をリストアップして、確実にこなしていかなくてはなりません。
そう……。
私はようやくスタートラインに立てたのです。
……と思ったけどスタートラインは10歳だから……。
スタートラインに立つ準備を始めることが出来るのです!が正解かな。
もぅ、せっかく一人脳内会議を格好良く締めようと思ったのに、格好悪いなぁ……。
これは前世にあったことわざですが、元々は大昔の中国の政治家の言葉だったと記憶しています。意味は確か「生活にゆとりがあってこそ、人は礼儀や道徳といったものを意識できるようになる」という感じだったかな?
それ、こちらの世界でもバッチリ当てはまります。
まぁ、私としてはそこに住も足して「衣食住足りて~」の方が正しいと思います!と全力で主張したいところです。絶対に清潔で快適な住環境や質の高い睡眠は、人格形成に影響があると思うんですよね。岩屋から拠点に住み替えた以降、みんなの顔色が良くなって笑顔も圧倒的に増えましたし。
そういう衣食住に余裕のある生活を続ける事で、日々の生活に追われることがなくなり、やっと様々な事を考える余裕が出来ました。2年かけて三太郎さんや母上たちと一緒に、あーでもないこーでもないと知恵を出し合って頑張ってきた甲斐があったというものです。
そこで改めて、前世で知ったこの世界の事を思い出してみました。
これに関しては三太郎さんにも説明しづらい部分もあるので、一人脳内会議です。
前世で「未来樹」という小説を読んだ事がありました。というより、死んだ前日の夜も朝方まで読んでいました。私はその小説全3部の内、1部と2部の最初の部分までしか読めていません。此方の世界に来てしまったので……。
その第1部。主人公は碧宮家姫沙羅でした。そう、母上です。没落寸前どころか没落が確定していた宮家に生まれた特殊加護持ち「天女」で、波乱万丈な人生を歩むことになります。
未来樹は根幹といわれる正史扱いの小説とは別に、葉生と呼ばれる「もしも〇〇だったら」的なIFルート扱った作品が多い事が特徴で、その葉生をMirageと呼んでいました。
たとえば葉生の一つに恋愛ゲーム、いわゆる乙女ゲーがあり姫沙羅はそのゲームでも主人公でした。
乙女ゲーと言っても巷で良く聞く悪役令嬢なんて役どころの人は存在しないゲームでした。東宮が18歳の時の事。天都にある通称「天学」と呼ばれる学び舎を卒業した後、正式に東宮となる為の「机並べの儀」と呼ばれる特殊な教育を受け始めるところからゲームスタートでした。15歳だった姫沙羅はその儀に強制参加させられる事になります。この儀は東宮と東宮妃予定の女性との顔合わせ兼お試し期間で、東宮と一緒に勉強しながら親密度を上げていくというものでした。
例えば……
ヒノモト出身の緋の妃予定の牡丹は東宮と一緒に軍の指揮や武術を。
ミズホ出身の蒼の妃予定の菖蒲は東宮と一緒に神事や文学を。
ヤマト出身の黄の妃予定の金蓮は東宮と一緒に様々な技術や数学を共に学ぶのです。
そうやって元々は特に劣るところも無いけれど秀でるところもなかった東宮を、一人前の東宮に育て上げるゲームでした。乙女ゲームなのに攻略対象が一人なの?!と驚いてしまった事を覚えています。もっとも、すぐに勘違いであることに気付きましたが。
本来、碧宮家は東宮に妃を出しません。なぜなら碧宮家の跡取りに、東宮の姉妹のうち一番釣り合いが取れた女性が嫁ぐという形で帝の血脈の保護をしていたので、アマツ三国とのバランスの関係で妃を出す事は無いのです。
ではどうやって乙女ゲーにしたかといえば、東宮の周りの人が攻略対象でした。ざっと思い出せたところでは年上枠・ヤンデレ枠・年下枠の3名ですが、確かセクシー枠とかインテリ枠の攻略対象も居たはずです。
例えば東宮の護衛として常に付き従っていた武人の海棠。年上枠の彼は何があっても表情を変えない生粋の武人でしたが実は甘党で、こっそり隠れて甘いものを食べて嬉しそうに笑う顔が良いと人気でした。
他には東宮と学び舎で同級生だったミズホの王族で菖蒲の弟の紫苑。彼は超がつくレベルのシスコンのヤンデレでした。彼のルートはかなり難易度が高いと評判でしたが、恋愛エンドのスチルの美麗さは全ルート1だと言われていました。
姫沙羅の弟の令法の友人で、ヤマト国の双子の王子の片割れの茴香も攻略対象でした。彼はまだ10歳と幼いので、恋愛対象というよりは守ってあげたい弟という感じでした。エンディングでは10年かけて気持ちを育てていくといった感じだったはずです。
乙女ゲーの中の姫沙羅は、東宮のステータスを元に授業スケジュールを組んで、東宮の能力バランスと三国の勢力バランスをとる役目を担っていました。その合間に様々なイベントをこなして攻略対象との親密度を上げていく訳です。なので他の宮家の妃予定の方々は悪役どころかライバルですらなく、むしろ一緒に東宮を能力アップさせる戦友なのです。
ただ様々なフラグ管理をする事で、姫沙羅も東宮妃になれるルートがありました。それはもう無茶苦茶厳しい親密度管理が必要で、例えばシスコンヤンデレの彼は親密度がなかなか上がらないのですが、隠しルートに入るには攻略対象全員の親密度を友人以上にしなくてはならず、かといって上げ過ぎて恋人確定ラインに入ってしまっても駄目なのです。シスコンヤンデレ君の場合、それが親密度85%以上90%未満という厳しいものでした。
まぁ、それぐらい厳しいフラグ管理が必要なルートが東宮妃ルートでした。
根幹の小説でも葉生と同じく机並べの儀は行われました。そして姫沙羅も妃予定の三人と一緒に参加しています。ちなみに妃候補ではなく予定なのは、「ほぼ確定だけど相性が合う合わないの問題はあるだろうから、どうしても駄目なら言ってね」という最後の配慮らしいです。現に極めて稀にですが、机並べの儀の途中で妃予定の女性が変わった事が過去にはあったそうです。
その儀において姫沙羅は上手に三妃(予定)とアマツ三国のバランスを取った事、なにより天女であった事が決め手となって、帝に強く東宮妃になるよう望まれました。そして東宮も「ぜひ側で支えてほしい」と何度も熱意を見せたのです。ただ碧宮家の女性が東宮妃になった前例はなく、姫沙羅自身も断り続けていました。
まず最初に明言しますが、私は母上が大好きです。
えぇ、母上は大好きですが「姫沙羅さん」となった場合は少しだけ事情が変わります。嫌いではありませんが、友人だったらちょっと頭が痛い思いをするだろうなぁという気がするのです。彼女は基本的に人が良く、そして頼まれたら嫌とは言えない性格です。頼られることに喜びを見出している感もあります。あと、自分が我慢すれば丸く収まるという場合、間違いなく自分が我慢する事を選びます。それが自分にとってどれだけ不本意であってもです。もし友人だったら、「そんなんじゃ利用されて、あなたが大変な思いをするだけじゃない!」と言ってしまうと思います。
実際、姫沙羅は東宮妃になる事を断り続けていたものの、僅かな時間の合間を縫っては訪れる東宮に何度も頼み込まれ……。また、帝の強い要望に抗って日に日にげっそりとしていく両親を見て、自分が頷けば全て丸く収まると思って折れたような描写が小説にはありました。その結果、「姫沙羅の気持ちが最優先だ」と言っていた碧宮家当主も、渋々ではあったものの娘が東宮妃となる事を受け入れました。なので碧宮家襲撃事件さえなければ姫沙羅は東宮妃となって、槐は次代の東宮となっていた事でしょう。
ですが、現実は姫沙羅は東宮妃どころか姫を捨ててただの沙羅となり、槐が東宮になる事もありません。
また沙羅は母親になった事、そして襲撃事件を受けた事で、自分を犠牲にして平穏を得る性格は我が子に悪影響を及ぼすと思ったようです。その事件後は少し性格が変わって今のように優しくも芯がある母親になりました。
そういう意味では結果オーライというやつなのでしょうね。
死亡者が出ているので、心からそうは思えませんけど……。
常々思っていた事がありましす。
この世界は根幹なのだろうか、葉生なのだろうか……と。
ただ、根幹ならば私は私であってはならないのです。
前世の知識を使って色々やってしまう「櫻」はありえないのです。ならば葉生かと言われると、あまりにも根幹に近い気がして仕方がないのです。背中がゾワゾワとする嫌な感じが止まりません。何だかスッキリしないのです。
そして第2部が始まるのは槐が13歳、櫻が10歳の時。
つまり私からすれば、関与できる……変える事の出来る未来であり、変えなくちゃならない未来です。私がこの世界に来た時には第1部は既に終わっていたので、全く関与できませんでしたが、これからは違います。
第2部の開始は衝撃的で、沙羅と橡が事切れるところから始まりました。
そんな事、絶対に阻止して見せますけどね!!
その為にやらなくてはならない事をリストアップして、確実にこなしていかなくてはなりません。
そう……。
私はようやくスタートラインに立てたのです。
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