家族である義務はまた

森内ゆい

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家族である義務はまた

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娘のかえでが6年生のとき、私は事故で命を落とした。
中学校入学を控えていた娘。
夫は実家に移り住み、義父母が娘の面倒をみてくれる、ゆらゆら彷徨う魂のまま、私はそれを見ていた。
娘が成長していくのが楽しみで怖い。
人としての生き方を覚えて成長してほしい。
でも、あの日のままで中学校生活を送り、私にしたことと同じようなことを、気に入らない誰かにしてしまう、そのまま大人になってしまったら?
そう。私が命を落としたのは事故じゃない。
後ろにいたかえでが、赤信号の横断歩道に、私を突き飛ばした。
犯罪者にしたいわけじゃない。だから二度とそんなことをしないでほしいと願うしかない。
考えてみると幼稚園のときから、あの子の周りでは事故が多かった。
私にはもう一人娘がいた。
かえでより4つ年上で、なるみというその子は、かえでを連れて買い物に行った先で、屋上から落ちて命を落とした。11歳だった。

まだ7歳だったかえでが無事であることにホッとしていたけど、違うのだ。
5年生のときに、近所で4才になったばかりの女の子が川に落ちて亡くなったときも、かえではその近くにいた。
あの子はいたずらするから嫌い、といつも言っていたのをあとで思いだす。

中学入学の祝いに、義父母はかえでに子猫を与えた。
喜ぶかえでに、義父母は満足そうだ。
しかし猫を部屋に連れていったかえでは、それを蹴飛ばした。
「世話しなきゃいけないじゃない。面倒だから早くママのところに行きなさいね」
猫はじっとかえでを見ていた。
そして猫は言葉を発した。
「また会えてうれしいな」
かえでは目を見開く。
私も知っている女の子の声だ。
「なるみ…おねえちゃん」
「何もしなくて、人にひどいことしないなら、あたしを殺したことは許そうと思ったのに。近所の子を殺して、あと一回だよと夢で伝えた最後のチャンスを、ママを死なせることで棒に振ったね」

かえでは怯えて猫の首をつかみ、壁になげつけた。
その勢いで窓を開け、小さな猫の体を屋外に投げようとする。
その体のバランスが崩れた。
「最後のチャンスだったのにね」
なるみの声が耳に残る。

かえでの体はさかさまに、庭の花壇に首から突き刺さっていた。

こちらに来ないで、と命絶えた娘に願う。
魂となってまで怯えたくはないから。
「じゃあね、ママ」
猫の中にいるなるみが、私のほうを見て言った。
「あたしたち三人、来世でももう一回親子よ」

怖い。
どちらの娘とも二度と家族になりたくはない。
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