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20歳からの転機
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「これで俺の人生が決まる」
薄暗い部屋の中で電気もつけずに、俺は震えながら送られてきた封筒を破る。
「今回で56社目!」
その封筒は先日行われた就職試験の結果発表。
【採用を見送らせていただきます】
長々と語られる文章の中で、その一文から全てが分かる。
俺は日高 誠也(20)工業高校から出てすぐに就職をするが、先輩から毎日の様にイビられ、身体が会社に行く時に拒否反応を示し、半年で退職。
その後、他の就職先を探すが、高校の頃に資格を面倒臭くて習得しなかったのが、今になってこの結果を生み出していた。
「俺、世の中に必要とされてないのかな…」
面接に落ちると言うことは、会社からは『あんたは私の会社では要らない』と言われている事と同じである。
就職難と言われているが、俺は数打てばどれかは当たるだろう。と楽観していたが、今では真逆に変わっていた。
その心が益々、自分の行動力を知らず知らずの内に失わせていた。
「誠也!ごはんよ!」
俺の思いを知らずか、母:恵 は台所から声を張り上げてきた。
「そんな気分じゃない」
暗い自分の部屋で蹲り、恵の言葉には何も返さなかった。
俺の頭の中では、いろんな言葉が頭を過る。
〔就職試験を受けても結果はダメ。自分はダメ人間。非社会人。世間知らず。世の中に必要とされない人間〕
「やっぱりアイツの言う通りだ…」
小声で呟いた。
刹那
部屋の扉が勢いよく開けられた。
「あんた何回呼べばいいの?ご飯が冷めるから台所に来なさい!」
そこには怒りに満ちて腕組みをしている恵の姿があった。が、一瞬だけ恵に目線を向けるが再び顔を背けた。
「母さん…これ…」
顔を背けた状態で、恵に不採用通知を渡した。
「あぁ、そうなのね。次、頑張りなさい」
無感情の言葉だけ残して、恵はその場を離れた。
それは特別なことではなく、毎回落ちた事を報告すると必ずこの様になって返ってくる。
初めの頃は俺も気にも留めてなかったが、56回も同じ言葉を無感情で言われると、段々腹が立ってきた。
その時、何かが不意に弾け、その重い腰が持ち上がり、恵の所まで一直線に向かっていった。
「ふざけるな!息子が落ち込んでる時にそんな冷たい言葉しかないのかよ?母親なら少しは元気付ける言葉とか言うものだろ?」
就職試験で落ちた自分が一番悪いと分かってはいたが、どこにぶつけていいか分からない怒りを恵にぶつける。
自業自得。母親を責めるのはおかしいこと。それは頭でも分かっていたが、抑えられない怒りをそのまま言葉に出していた。
しかし、そんな状況でも恵は冷静な表情で俺の話を全て聞いた後に口を開いた。
「あんたが言いたいのは、それで全部?」
目の前にあったコップを手に取り、一口飲み終える。俺は怒りを全てぶつけたと思い、軽く頷いた。
「もし仮に私があんたに優しい言葉をかけたら、その言葉に甘えてあんたは調子に乗るでしょ?それにすぐには就職は決まらないと思っていたから、その度に言葉を考える程、私、暇じゃないの」
その言葉を放った後に、食器棚に身体を向けて食器を取り出し始めた。
『なんだ…俺…。親からも全然期待されてなかったんだ…』
心の中で呟いた。
恵の言葉は見捨てられた様に感じられ、その場から動こうにも動くことができなかった。
社会から見捨てられ、家族にも見捨てられた。俺はやっぱりダメ人間…。
それを察したかの様に、話を終わらせていた恵が再度言葉を開いた。
「でも私は、あんたが落ちてよかったって思ってるのよ」
予測してない言葉に俺は困惑した。
『何故?就職に落ちてよかった?そんな訳がない!』
心の中で突っ込むが、口に出す元気がない。
「だってそうでしょ?面接で落とされるって事は、あんたの良いところを見抜けてないの。そんな会社に仮に受かったとしても、結局苦しい思いするのは目に見えてるわ。あんたが受けた56社には、あんたの良い所を見抜ける人がいなかった。ただ、それだけの事よ…」
今までがあまりにも冷たい反応だけに、俺の母親がそこまで考えていた事に心を打たれ、涙が止まらずにその場で蹲ってしまった。
ただ、言えることは、今までの蹲りとは明らかに違う感情が入っていた。
「ここに行ってみなさいよ」
数日後、恵からいきなりチラシを見せられた。就職試験の内容だと思ったら、そこに書かれていたのは専門学校の内容だった。
「え!?」
薄暗い部屋の中で電気もつけずに、俺は震えながら送られてきた封筒を破る。
「今回で56社目!」
その封筒は先日行われた就職試験の結果発表。
【採用を見送らせていただきます】
長々と語られる文章の中で、その一文から全てが分かる。
俺は日高 誠也(20)工業高校から出てすぐに就職をするが、先輩から毎日の様にイビられ、身体が会社に行く時に拒否反応を示し、半年で退職。
その後、他の就職先を探すが、高校の頃に資格を面倒臭くて習得しなかったのが、今になってこの結果を生み出していた。
「俺、世の中に必要とされてないのかな…」
面接に落ちると言うことは、会社からは『あんたは私の会社では要らない』と言われている事と同じである。
就職難と言われているが、俺は数打てばどれかは当たるだろう。と楽観していたが、今では真逆に変わっていた。
その心が益々、自分の行動力を知らず知らずの内に失わせていた。
「誠也!ごはんよ!」
俺の思いを知らずか、母:恵 は台所から声を張り上げてきた。
「そんな気分じゃない」
暗い自分の部屋で蹲り、恵の言葉には何も返さなかった。
俺の頭の中では、いろんな言葉が頭を過る。
〔就職試験を受けても結果はダメ。自分はダメ人間。非社会人。世間知らず。世の中に必要とされない人間〕
「やっぱりアイツの言う通りだ…」
小声で呟いた。
刹那
部屋の扉が勢いよく開けられた。
「あんた何回呼べばいいの?ご飯が冷めるから台所に来なさい!」
そこには怒りに満ちて腕組みをしている恵の姿があった。が、一瞬だけ恵に目線を向けるが再び顔を背けた。
「母さん…これ…」
顔を背けた状態で、恵に不採用通知を渡した。
「あぁ、そうなのね。次、頑張りなさい」
無感情の言葉だけ残して、恵はその場を離れた。
それは特別なことではなく、毎回落ちた事を報告すると必ずこの様になって返ってくる。
初めの頃は俺も気にも留めてなかったが、56回も同じ言葉を無感情で言われると、段々腹が立ってきた。
その時、何かが不意に弾け、その重い腰が持ち上がり、恵の所まで一直線に向かっていった。
「ふざけるな!息子が落ち込んでる時にそんな冷たい言葉しかないのかよ?母親なら少しは元気付ける言葉とか言うものだろ?」
就職試験で落ちた自分が一番悪いと分かってはいたが、どこにぶつけていいか分からない怒りを恵にぶつける。
自業自得。母親を責めるのはおかしいこと。それは頭でも分かっていたが、抑えられない怒りをそのまま言葉に出していた。
しかし、そんな状況でも恵は冷静な表情で俺の話を全て聞いた後に口を開いた。
「あんたが言いたいのは、それで全部?」
目の前にあったコップを手に取り、一口飲み終える。俺は怒りを全てぶつけたと思い、軽く頷いた。
「もし仮に私があんたに優しい言葉をかけたら、その言葉に甘えてあんたは調子に乗るでしょ?それにすぐには就職は決まらないと思っていたから、その度に言葉を考える程、私、暇じゃないの」
その言葉を放った後に、食器棚に身体を向けて食器を取り出し始めた。
『なんだ…俺…。親からも全然期待されてなかったんだ…』
心の中で呟いた。
恵の言葉は見捨てられた様に感じられ、その場から動こうにも動くことができなかった。
社会から見捨てられ、家族にも見捨てられた。俺はやっぱりダメ人間…。
それを察したかの様に、話を終わらせていた恵が再度言葉を開いた。
「でも私は、あんたが落ちてよかったって思ってるのよ」
予測してない言葉に俺は困惑した。
『何故?就職に落ちてよかった?そんな訳がない!』
心の中で突っ込むが、口に出す元気がない。
「だってそうでしょ?面接で落とされるって事は、あんたの良いところを見抜けてないの。そんな会社に仮に受かったとしても、結局苦しい思いするのは目に見えてるわ。あんたが受けた56社には、あんたの良い所を見抜ける人がいなかった。ただ、それだけの事よ…」
今までがあまりにも冷たい反応だけに、俺の母親がそこまで考えていた事に心を打たれ、涙が止まらずにその場で蹲ってしまった。
ただ、言えることは、今までの蹲りとは明らかに違う感情が入っていた。
「ここに行ってみなさいよ」
数日後、恵からいきなりチラシを見せられた。就職試験の内容だと思ったら、そこに書かれていたのは専門学校の内容だった。
「え!?」
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