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「君は私の従者になれ」「死んでもお断りです」①
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人生の楽しみは小説を読むことだけだった。片時も本とはなれたことはない。仕事と睡眠時間以外はずっと本を読んでいた。もちろん退勤をしている途中でも本を読みながら電車に揺られ、文字を目で追いながら歩いた。
その時に読んでいた本は、つい先刻に職場近くの古本屋で買ったものだった。タイトルは装填がボロボロで読めない。とある国の王子が殺され、6人の姫に殺人の疑いがかけられてしまうという、ミステリーとも悲劇の恋愛譚ともつかない小説だった。くだらない小説だと思った。こんな時はどんな本でも読み始めたら最後まで読み続けてしまう自分の悪癖に辟易する。だけどたった一つだけ気にいった要素があった。それは主人公(?)のひとり、耽溺王子のキャラクターである。王子はきもちのいいほどの人間の屑だからだった。女癖は悪く、国庫から持ち出した税金で放蕩の限りを尽くし、戦争好きで残酷極まりないバカ王子。一度夢中になると見境のない行動をしてしまう彼を人々は耽溺王子と呼んでいた。こんな奴が殺される様子はわるくなかった。だから、くだらないといいつつ楽しんでいたのかもしれない。自分が轢かれるまで車が近づいてきていることに気が付きもしなかったんだから。
音が消えた。縦になった地面は私の右顔面を押しつぶしてくる。死ぬときはあっけないものだった。本以外何もない人生だったからか、走馬灯すら駆け寄ってこない。大きな喜びもなければ後悔もない人生だったなと思う。いや、それは違った。喜びも悲しさも何もかもを本にはもらってきたんだ。深い満足と共にある死というのはこういうものなのかもしれない。
ふと、目にさっきまでよんでいた本が目に映った。私と同じく地面に投げ出され血まみれになった分厚い茶色のハードカバーはさっきにもましてボロボロだ。
その本を見つけた瞬間、急激に私は怖くなった。この本の結末を読まずに死んでしまうのか。たった一つの喜びが、最大の恐怖として目の前に立ちふさがった。自分を最も知る人間が最悪の敵となるように。友に裏切られた独裁官が今わの際に述べた「ブルータス、おまえもか」というセリフは心の奥底からでた真実の言葉だったと思う。そして私の最期の言葉も紛れもない本心だ。
「あぁ、読みおわっでがら死にでっけな」
東北訛りのおかげででカエサルみたいにかっこよくはならなかったけども。
その時に読んでいた本は、つい先刻に職場近くの古本屋で買ったものだった。タイトルは装填がボロボロで読めない。とある国の王子が殺され、6人の姫に殺人の疑いがかけられてしまうという、ミステリーとも悲劇の恋愛譚ともつかない小説だった。くだらない小説だと思った。こんな時はどんな本でも読み始めたら最後まで読み続けてしまう自分の悪癖に辟易する。だけどたった一つだけ気にいった要素があった。それは主人公(?)のひとり、耽溺王子のキャラクターである。王子はきもちのいいほどの人間の屑だからだった。女癖は悪く、国庫から持ち出した税金で放蕩の限りを尽くし、戦争好きで残酷極まりないバカ王子。一度夢中になると見境のない行動をしてしまう彼を人々は耽溺王子と呼んでいた。こんな奴が殺される様子はわるくなかった。だから、くだらないといいつつ楽しんでいたのかもしれない。自分が轢かれるまで車が近づいてきていることに気が付きもしなかったんだから。
音が消えた。縦になった地面は私の右顔面を押しつぶしてくる。死ぬときはあっけないものだった。本以外何もない人生だったからか、走馬灯すら駆け寄ってこない。大きな喜びもなければ後悔もない人生だったなと思う。いや、それは違った。喜びも悲しさも何もかもを本にはもらってきたんだ。深い満足と共にある死というのはこういうものなのかもしれない。
ふと、目にさっきまでよんでいた本が目に映った。私と同じく地面に投げ出され血まみれになった分厚い茶色のハードカバーはさっきにもましてボロボロだ。
その本を見つけた瞬間、急激に私は怖くなった。この本の結末を読まずに死んでしまうのか。たった一つの喜びが、最大の恐怖として目の前に立ちふさがった。自分を最も知る人間が最悪の敵となるように。友に裏切られた独裁官が今わの際に述べた「ブルータス、おまえもか」というセリフは心の奥底からでた真実の言葉だったと思う。そして私の最期の言葉も紛れもない本心だ。
「あぁ、読みおわっでがら死にでっけな」
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