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第一章
僕の理由
しおりを挟むオアシスで3日過ごした。
そしてイシャバームに来てからもう2日目。おじさんは何でまだこの国で過ごすんだろう?
「おい」
「何?」
「…何ですか。だろう」
「!」
僕の言葉遣いが悪いって、おじさんは何度も言葉を言い直させるから僕は少し言葉遣いを覚えた。でも、頑張ってるのにまだまだって言われるとムカついちゃうよ。
「お前はなんで自分を〈僕〉と言う」
「母さんが」
「母親に言われたのか」
「僕のいた村はさ」
僕のいた村の女の子はみんな〈僕〉っていっていた。じゃないと仕事が貰えなかったし、レークイスやヒルバルも近くてたまに人攫いが出てた。男より女の子が攫われる事が多くて、村の近くの川に良く攫われた子が流れてきた。だからみんな男の子みたいな格好をして、〈僕〉や〈俺〉って言ってた。
「女児が攫われる?」
「悪戯されて殺されるって」
おじさんは、人買いが男の子を買い付ける理由は労働力になるからだって言った。女は力仕事が出来ないし、トラブルを起こすから人買いは平民の女を買わない。だから人攫いは
女に飢えた逃亡兵や犯罪者だろうってぼそって教えてくれた。
「…おじさん」
「何だ」
「人を売る時ってどんな気分になる?」
思ってた。
おじさんにも親がいるだろ?なのに父さんや母さんと変わらない年上の人や、小さな子供を売る時、どんな気持ちで手を離すんだろうって。
「…何も思わない」
本当にそう思ってるのかな?
無表情のまま足元に視線を落としたおじさんに、僕は何だか悪い事を聞いた気がした。
「…そう…ですか」
「野菜を収穫して売るのと何ら変わらん」
前言撤回!僕は野菜なのか?
僕にも感情があるのに。
僕が望んで売られるわけじゃないのに。
「なぜ悲観する」
「当たり前だろ!僕は僕の物だ!」
売られて喜ぶ訳ないだろ?
このおっさん、頭がおかしいよ!
「どちらが良い」
「え?」
「家もなく、食い物もなく、いつ襲われるか分からず…大人になれぬかもしれない自由な人生と、雇い主の元で飯が食えて、安心して眠れて…金を貯めれば証文を買い戻す事もできる人生」
「い、意味が分かんないよ…」
「売られると聞けばいい気がせんのは分かる」
わ、分かるんだ。
「売られなければ生きていけるのか?1人で」
「生きては行けるだろ?」
「どうやって飯にあり着く。お前の年で従業員として通常雇用する所は無いぞ…家に住むとて納税せねばならん。ロレントなら一律領地銀貨150レークイスなら12才以下は銅50…どう稼ぐ」
そう言われると何にも言えない。
家族のいない家で僕1人。
飯は畑や山に入って何とかなってもお金は稼げない。
「は、畑の野菜!売ればっ」
「何の伝手も無く卸せはしない。店は商業組合に入り、そこと契約している農村や農家からしか買い付け出来ないし、露店とて許可制。花売りの子も、大店と雇用契約をしている」
僕は何も知らない。
でも、お店の人に何とか頼み込んで…年齢を誤魔化して何とかならないかな。
「商売は信用無くして成立せん」
「ちゃんと、ちゃんと言われた物を持っていく!」
「お前は野菜がどう育てられるか知っているか」
「それ位知ってるよ!」
「ならば分からないか」
な、何が分からないってんだ。
野菜なんて土に種蒔いて水を与えりゃ収穫できるだろ?
「ただ土に種を蒔けば野菜が実る訳じゃ無い」
「え?」
お前は無知だとおじさんは言った。
その意味も分からない僕は不安になって、野菜が実るまでに母さん達がしていた事を知って更に不安が僕を締め付けた。
「毎日決まった野菜を一箱納品すると契約すれば、必ず納品せねばならない。不作の時、農家が行うのは補填だ。契約数に達しない場合、その野菜の代わりになる物を契約数の倍納品する。何故倍なのか、それは補償だからだ」
補填、補償。
分からない事だらけだった。
そもそも母さんが育てていた野菜だけでもちゃんと育てられるかのか。育てられない場合の補償となる他の作物を…僕は育てられるのかな?何とかなるだろう、なんて思っていた僕は間違っていたのかな…どうしよう。
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