勿忘草 ~記憶の呪い~

夢華彩音

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第七章 朝比奈玲香

~両親2~

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翌日、玲香は志帆の部屋に入った。
あまり来たことはなかった母の部屋。

引き出しを全部開けて何かないかと探していると、1冊のノートを見つけた。

表紙には“日記”とだけ書かれていた。
日付は、お姉ちゃんが亡くなる1年ほど前から始まっている。


“20✕✕年 8月12日

久しぶりに重さんの仕事が休み
だったから、4人で出掛けた。
怪我をして泣き出す玲香を織絵
が慰めていた。いいお姉ちゃん
になったね”


“20✕✕年 9月20日

玲香が熱を出した。
何か食べたいかと聞いたけど、
首を振っていた。幼いながら
気を遣ってくれたのかもしれない”



楽しかった頃の思い出が蘇り、自然と笑顔になる。
パラパラと飛ばしながら軽く見ていると、ふいに手が止まった。


“20✕✕年 11月3日

初めて知った。織絵の命が
限られていることを。織絵は
あまり驚いていなかった。直感的
に気づいていたのかも”


“20✕✕年 2月11日

織絵が変わっていく。
笑いかけてくれない。
笑顔にはなるけど、目が笑ってない
どうしたらいい?私は何をしたら
いいの?玲香に何て言えばいい?”


“20✕✕年 5月28日

近づいてきた。
私は何もできない。”


“20✕✕年 8月13日

もう少し先の予定だった。
なのに、重さんは私達から
織絵を奪ってしまった。
彼にはもう感情はない。
重さんまで変わってしまった。
織絵はもう、この世にいない”


読み進めていると、日記に挟まっていた紙が床に落ちた。



“玲香へ

ごめんね。私はいきます。
私までいなくなることを
許してください。
あなたに何も教えてあげられ
ないことが悲しいです。
玲香、あなたは生きることを
やめないで。私のようには
ならないでください。

一つだけ。書いておきます。
織絵は呪われていた。
全てを知りたいのなら、
「鍵」を探して。

「鍵」は、織絵の
形見です。

志帆”


「お姉ちゃんが、呪われていた…??」



-第七章 完-
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