勿忘草 ~記憶の呪い~

夢華彩音

文字の大きさ
上 下
30 / 32
第十四章 安積織絵

~決意2~

しおりを挟む
織絵の目から涙が溢れた。
溢れて、溢れて止まらなかった。

「ごめん…ごめんね。美南」

ありがとう。


……美南は、やっと救われたんだね。
最悪な形でだけど。


私、自分でちゃんと決めるよ。
今度こそ。



校門を出ると、玲香、重、洋一郎、遥が立っていた。
「お姉ちゃん…」
玲香が駆け寄ってきた。
「……」
織絵は涙を流したままだった。

重は織絵に頭を下げた。
「すまなかった…もう今更遅いだろうが」
「お父様のせいではないです。私のためにしてくれてたんだから。」
「織絵……」
「でも、もうお父様の言うことは聞きません。これからどうするのかは誰にも決めさせない」

そして、織絵は洋一郎を見つめて言った。
「今まで、何も知らない私を育ててくれてありがとう。記憶がなかった私にとって一番大事な人だったよ」
洋一郎は涙目で笑った。
「お前が家に来てくれてよかったよ。本当に娘ができた気分だった」

洋一郎の隣で遥はつんとすましていた。
恥ずかしいのだろうか。
少しおかしくなって織絵は笑ってしまった。
「どうして笑うのよ」
「別に。……お母さんも、ありがとう。」
遥は顔を赤らめてからそっぽを向いた。


悲しくて、辛いけど、なんとも言えない穏やかな時間が流れた。


美南。ありがとう。
私、ちゃんと決めるから見ていてね。
自分がどんなに苦しくても、いつも私を想ってくれていた。


美南と友達になれたこと、
私は一生忘れません。



どこからか、美南が笑いかけてくれているように感じた。



-第十四章 完-

しおりを挟む

処理中です...