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3話

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「お父様!」
屋敷に戻った私は、すぐに父の書斎へと向かった。
「おお、エルーザか。どうした? そんなに慌てて」
父は書類にサインをしていた手を止めた。
「はい。実はお願いがあって参りました」
私は単刀直入に言った。
「ほう。言ってみなさい」
「私、ダンスの練習がしたいんです!」
「ふむ。それはまた急だな」
「ダメでしょうか?」
「いや、構わないぞ。お前がやりたいというなら好きにしなさい」
「ありがとうございます!」
「それで、どこの誰と踊るつもりだね?」
「はい。同じクラスのジジロ君という方なのですが……」
「ああ、あの子か。確かに彼はいい家柄だし、将来有望株だからな。それに確か、うちの娘とも仲が良いはずだ」
「そうなんです!」

彼に婚約破棄されないようにしなくちゃ。

「うーん……でもなぁ」
父が困ったような顔になる。
「どうかしたのですか?」
「いや、なんでもないよ。ただ、あまり無理をしてはいけないよ。少しずつ慣れていけばいいんだ」
「わかりました! 頑張ります!」
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