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そら汰★

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 蒼海と友達になってから、週末は結構な頻度で蒼海のマンションに泊まりに来ている。
 ご両親が居ないので気兼ねないのもあるが、帰るときに醸し出す蒼海の寂しそうな空気が、俺をこのマンションに足繁く運ばせていた。

 インドアな蒼海の家には、ゲームや漫画、映画など豊富に揃っている。室内で過ごすには退屈などしなかった。
 外に出ることも殆どなく、食材などいつ来ても豊富に揃えられていた。
 遊びだけではなく学業も怠らない。学年トップとまではいかないが蒼海は頭もいい。平均並みの俺には家庭教師が付いたようで、最近では今までにない高成績を維持している。
 その甲斐あってか、俺の両親も蒼海の家に入り浸ることに目くじらを立てることなく、週末はお世話になって来なさいと、賄賂のようなお土産を持たされ家を追い出される始末だ。
 今回は連休を利用して一週間勉強合宿と母親に伝えると『一週間と言わずに帰って来なくてもいいわよ』と言われ、不貞腐れながら家出してきた。

「これ、母親から。今度うちにも是非遊びにいらっしゃいだと。あと今日から一週間うちの馬鹿息子をよろしくとのことだ」
「ククッ、馬鹿息子って酷い言われようだね。いつもありがとうって伝えておいて? それと、今度お邪魔させて貰いますってことも」
「おぅ。もうさぁ~俺、自分の家出てここんちの子になろうかな」

 何気なく呟いた言葉に、蒼海は「別に構わないよ」と本気なのか冗談なのか分からない返事をする。

「雪ちゃんがうちの子になったら、僕は父親になるのかな」
「同じ年の父親って、すげぇ複雑な家庭環境だな」
「どの道複雑な家庭だし、そうなっても驚かないけどね」

 あまりこういう話はしないようにしていたつもりだが、ついつい無遠慮に口付さんでしまう。
 自分の馬鹿と苦笑いしていると、コーヒーの香りを漂わせながら蒼海が俺の隣に座った。お店で味わうのと遜色ない蒼海特製コーヒーは、俺の好物の一つになっていた。

「あんがと♡ 本当好きだわ~」
「それ僕のこと? コーヒーのこと?」
「ん? 蒼海のコーヒーマジ好き♡ ついでにそれを作ってくれるお前も好きよ?」
「僕はついでって……雪ちゃん魔性の女みたい」

 いやいや俺は女ではない。蒼海好みの微乳ではあるが。

「お前さ、特別な人とか居ないの? 俺結構遊びに来ちゃってるけど、そのせいで相手に怒られるの嫌じゃん?」
「いきなりなにを言い出すと思えば……。これだけ一緒に居ても分からないなんて鈍感過ぎやしない?」
「だってさ、お前秘密主義じゃん」

 互いを探り合うような掛け合い。けれど悪い気はしない。
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