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「冬馬イブもシフト入っているよね?」
「もちろん。なに? パーティーの誘い?」
「雪ちゃんは構ってくれなそうだしパーティーもいいかもね。あとで連絡するよ」
「ちょっ、ちょい待ち! 冬馬はバイト休みとかなしよ!」
ただでさえ忙しいというのに、冬馬まで休むなど言い出したら人員確保が大変になる。
「休まないよ。そんなことしたらクビになりそうだし。終わったあとに行くつもりだよ」
「……なんだ、それなら別に問題ないけど……」
ホッとするものの妙に落ち着かないのはなぜなのだろうか。
ぷすっと頬を膨らまし口を尖らせていると、森永が機嫌を取るような甘い囁きで問いかけてきた。
「ふふっ、尚君もパーティー来るでしょ?」
「いや……俺は……行かないってこの前から……」
「さっきまでしょげた顔していたのにどの口が言うんだか」
「別にそんな顔していないわよ? 蒼海君ってばやーね♡」
ベーっと舌を出し努めて明るく振る舞う。蒼海は「可愛くないね」と呆れながら、冬馬にちゃっかり「雪ちゃん逃げないように捕獲よろしく」と頼み込んでいた。冬馬も冬馬で「了解」と親指を立てパチンとウインクをかます始末だ。
類は友を呼ぶとはこのことだ。俺の言葉を無視しどんどん結託していく三人。新人バイト冬馬は俺の助っ人から、すっかり双子の助っ人に成り下がってしまった。
絶対逃げてやる! そうひとり意気込みその日はそのままファミレスで解散した。
***
すっかり冷え込んだ外の空気をシャットアウトするようにモッズコートのチャックを上げ口元まで覆い、ポケットに手を突っ込み早足で周りに目を配る。
イブの今日は世間は熱々ムード真っ只中。バイト先に向かうまでに何組ものイチャイチャカップルが通り過ぎていく。皆楽しそうに頬を緩ませなんとも幸せそうだ。はぁ……っとため息を漏らし自分の寂しさに落ち込むが、お金は裏切らないと無理矢理励ました。
「お疲れ様ですー」
従業員の出入り口からスタッフルームに向かい声を掛けると、いつもよりもスタッフの数が多いことに驚く。初めて見かける顔もあるということは、不測の事態に備え店長がヘルプをどこかに頼んだのかもしれない。そこまでホールは広くはないとはいえ、クリスマス限定のメニューを揃えた店は十二月に入るなり話題にもなっていた。そのせいかプチパーティーの予約も数件入っているらしく、働く前から忙しいのだと窺えた。
「厳戒態勢だな……」
店の雰囲気に圧倒されていると、冬馬が声をかけてきた。
「尚雪お疲れ様。外すごく寒くなかった? 雪でも降りそうだよね」
「だな。積もったら帰れなくなりそうだ」
「帰る必要ないんじゃない?」
「いや、俺は帰って家でゆっくり寝たいよ」
そう言いながら鼻歌混じりに着替えをする。今日はいつもの制服にサンタの帽子を被ることになっている。
「ミニスカサンタじゃないの?」
「するかよ。それをして喜ぶ女子がいるかっての」
「需要あると思うんだけど。働くサンタさんにこれ……あとでゆっくり見て。あっ、できれば人がいないところのほうがいいかも」
頭に帽子をセットし髪を整えていると、胸の中になにかを投げられた。
「もちろん。なに? パーティーの誘い?」
「雪ちゃんは構ってくれなそうだしパーティーもいいかもね。あとで連絡するよ」
「ちょっ、ちょい待ち! 冬馬はバイト休みとかなしよ!」
ただでさえ忙しいというのに、冬馬まで休むなど言い出したら人員確保が大変になる。
「休まないよ。そんなことしたらクビになりそうだし。終わったあとに行くつもりだよ」
「……なんだ、それなら別に問題ないけど……」
ホッとするものの妙に落ち着かないのはなぜなのだろうか。
ぷすっと頬を膨らまし口を尖らせていると、森永が機嫌を取るような甘い囁きで問いかけてきた。
「ふふっ、尚君もパーティー来るでしょ?」
「いや……俺は……行かないってこの前から……」
「さっきまでしょげた顔していたのにどの口が言うんだか」
「別にそんな顔していないわよ? 蒼海君ってばやーね♡」
ベーっと舌を出し努めて明るく振る舞う。蒼海は「可愛くないね」と呆れながら、冬馬にちゃっかり「雪ちゃん逃げないように捕獲よろしく」と頼み込んでいた。冬馬も冬馬で「了解」と親指を立てパチンとウインクをかます始末だ。
類は友を呼ぶとはこのことだ。俺の言葉を無視しどんどん結託していく三人。新人バイト冬馬は俺の助っ人から、すっかり双子の助っ人に成り下がってしまった。
絶対逃げてやる! そうひとり意気込みその日はそのままファミレスで解散した。
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すっかり冷え込んだ外の空気をシャットアウトするようにモッズコートのチャックを上げ口元まで覆い、ポケットに手を突っ込み早足で周りに目を配る。
イブの今日は世間は熱々ムード真っ只中。バイト先に向かうまでに何組ものイチャイチャカップルが通り過ぎていく。皆楽しそうに頬を緩ませなんとも幸せそうだ。はぁ……っとため息を漏らし自分の寂しさに落ち込むが、お金は裏切らないと無理矢理励ました。
「お疲れ様ですー」
従業員の出入り口からスタッフルームに向かい声を掛けると、いつもよりもスタッフの数が多いことに驚く。初めて見かける顔もあるということは、不測の事態に備え店長がヘルプをどこかに頼んだのかもしれない。そこまでホールは広くはないとはいえ、クリスマス限定のメニューを揃えた店は十二月に入るなり話題にもなっていた。そのせいかプチパーティーの予約も数件入っているらしく、働く前から忙しいのだと窺えた。
「厳戒態勢だな……」
店の雰囲気に圧倒されていると、冬馬が声をかけてきた。
「尚雪お疲れ様。外すごく寒くなかった? 雪でも降りそうだよね」
「だな。積もったら帰れなくなりそうだ」
「帰る必要ないんじゃない?」
「いや、俺は帰って家でゆっくり寝たいよ」
そう言いながら鼻歌混じりに着替えをする。今日はいつもの制服にサンタの帽子を被ることになっている。
「ミニスカサンタじゃないの?」
「するかよ。それをして喜ぶ女子がいるかっての」
「需要あると思うんだけど。働くサンタさんにこれ……あとでゆっくり見て。あっ、できれば人がいないところのほうがいいかも」
頭に帽子をセットし髪を整えていると、胸の中になにかを投げられた。
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