王子×悪戯戯曲

開幕 隣の可愛いお姫様

02

　──衝撃的な出会いから一ヶ月経過した頃。

「ねぇ、僕ゆうちゃんのこと大好き！　将来は僕のお嫁さんになってくれるよね‼︎」

　子供ながらに 一世一代の大告白をし、ほっぺにちゅうをすると、ゆうちゃんは照れることもなく無愛想に言った。

「別にいいけど……日本じゃ無理だから、海外で婚姻届出すとか養子縁組とかになっちゃうよ。あと両親とかにも理解してもらわなきゃならない。それでもいいの？」

　目が回るような知らない単語で返事をされ、眉を寄せ首を傾げてしまう。けれど僕はポジティブだ。

「えっ？　難しいの？　でもさ、ＯＫってことだよね！　僕達、今から恋人同士だね！　えへへ♪」



　──そしてさらに月日が流れ、出会ってから一年。

　ゆうちゃんと公園で遊んでいると、急に雨が降ってきた。最近夕方になるとゲリラ豪雨という大雨が降るのだ。急なことに慌て、二人でずぶ濡れになりながらなんとか家に駆け込んだ。
　服がびちょびちょで肌に張り付いていて気持ちが悪い。泥や砂が靴下の中まで入り込んでいる。廊下を水浸しにしながら、急いで部屋に向かい着替えをする。恋人同士なのだ。裸ぐらいなんともない。そう思いながらも、僕の心臓はドキドキが止まらなかった。
　隣で恥じらいなく大胆にストリップを始める未来のお嫁さん。自分よりも男らしいと感心しながら下心満載でチラリと横目で覗き見してしまう。

　男子たるもの欲望のままに！
　ちょっとだけ……ちょっとだけだよ！　ゆうちゃん‼︎

　その素肌は雨に濡れ白い色が余計に際立っている。小粒の乳首は白い肌に映えるように控えめだが、将来はきっと柔らかく豊満になっているだろう。そんな妄想に囚われていると、ゆうちゃんは僕に言ったんだ。

「あーあ……、パンツまでびっちょりだ。瀬菜のパンツ貸してよ」
「パンツって僕のは男の子用……だ……よ？　ゆ……っ、う……ちゃん？　なななぁ、なんでッ！」
「なんでって……なにが？」
「なっなな、なんで～ぇ‼︎　なんで、ちんこ付いているの‼︎」

　裏返った声をあげる僕に、ゆうちゃんは冷静に言う。

「なんでって、男なら誰でも付いているよ。瀬菜は変なこと言うよね」

　大胆に脱いだパンツのその先にあったモノ……。
　それは確かに男なら誰もが持っている立派なゾウさんだ。
　隠しもせずに、片腕を腰に当ててパンツを早く貸してとせがむゆうちゃんに、グラリと眩暈を起こしながら洗濯済みの僕のパンツを震える手で差し出し、お願いだから早く隠してと涙目で訴えた。



　良くあることだ……。
　昔は純粋無垢な天然天使ちゃんだと可愛がられてきた。
　見方を変えれば『馬鹿』という部類なのかもしれない……。

　どうして気付かなかったんだろう。
　なぜ周りは教えてくれなっかったのだろう。
　ゆうちゃんはどうして結婚をＯＫしてくれたのだろう。

　 今となっては謎だらけな幼少期。

　そして俺の初恋は、天から降る激しいゲリラ豪雨により、見事に打ち砕かれたのだった──。