王子×悪戯戯曲

そら汰★

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第3幕 溢れる疑惑

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 寒さを感じ身体を丸めると徐々に意識が浮上し始める。
 クーラーが効き過ぎているのか、熱を求めて手を彷徨わせる。けれど求めているぬくもりがない。
 ムクリと起き上がり、今一番欲しいぬくもりの名を呼んだ。

「悠斗……」

 少し掠れた小さな声で辺りを見渡す。真剣に机に向かい、ペンを走らせている悠斗が振り向き微笑んだ。

「おはよう、瀬菜。身体痛くない?」
「うん……ハグして……寒い……」

 ぽけーっとしながらそう言うと、悠斗はペンを置き俺のほうへと歩み寄ってきた。

「なにそれ……可愛いね」

 ギューっと悠斗の胸に抱きしめられる。

「んーー、悠斗……今何時? ずっと勉強してたのか?」
「夜の十時だよ。よく眠っていたね。瀬菜が寝てる間に、結構宿題進んだ」
「俺、そんなに寝てた? 寝れなくなりそう」
「ふふっ……夏休み初日から不規則な生活になっちゃうね」
「お前が激しいからだろ……」
「そう? 我慢したけどな。ご飯どうする? 俺は先に軽く食べたけど」
「飯はいいや。この時間に食べたらデブになるし」

 抱きしめられながら話をしているうちに、ホカホカと身体が温まっていく。

 悠斗あったかいなー。
 ぬくぬくが染み込むー。
 ……ん?

「悠斗……風呂入った?」
「うん、シャワー借りた。瀬菜も入って来る?」

 ……気のせい……かな?
 うちのと違う匂いのような……?

「瀬菜? 一緒に入る?」
「──えっ? あ、いや、ひとりで……大丈夫」

 悠斗から離れ立ち上がると、自分が全裸でいることに驚愕する。慌ててタオルケットを身体に巻き付け悠斗を見下ろすと、声を殺して笑っている。

「笑うな! エロ魔神‼︎」
「クククっ……やめてッ、瀬菜! おっ、お腹ッ痛い……。あーあ、可愛いお尻見えなくなっちゃった」

 ジトッと白い目で睨み付け扉を開けると、ムッとしながら扉を叩き付けるように閉め風呂場に向かった。


 浴室に入りシャワーを浴び、頭を洗い身体をボディーソープで泡立てていく。ふんわりと花の香りが充満していく。

 さっきの、やっぱりこの匂いじゃない……。
 俺が寝てる間に家でも戻ったのかな。
 でも、シャワー借りたって……。

 疑問が膨らむが、悠斗が言ったことを疑う自分に嫌悪する。匂いは変わるものだ。自分の勘違いかもしれない。悠斗はずっと宿題をしていたのだと言い聞かせ、身体にまとわり付く泡を洗い流し浴室を出た。


「あ~~、気持ち良かった~♪」
「瀬菜、おじさんみたい。おいで、頭拭いてあげる」

 悠斗の前に座り、シャカシャカとタオルドライしてもらう。

 頭触られるのってなんでこんなに気持ちいいのかねー。
 極楽だ~~♪

 夏なのでタオルドライしただけで、あっという間に乾いてしまう。
 ふとテーブルに目を向ける。開かれたページを見ると、空白は文字で埋められずいぶん進んでいるのが窺える。

「なぁ、これもうここまで進んだの?」
「うん、結構簡単だったよ」

 そう言うが、こんな短時間で進められる分量ではない。悠斗の宿題の進み具合に驚きと羨望の眼差しを向けてしまう。俺も寝ていた分取り戻すぞと、机に向かい唸りながらも真面目に問題と格闘した。
 悠斗が言うように、確かに簡単な問題も多く、いいペースで進めることができ眠くなるまで頑張った。
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