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第5幕 噂の姫乃ちゃん
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トイレのあとはお風呂に入り、至れり尽くせりだ。甲斐甲斐しく悠斗は俺の身体や髪を荒い、湯船に浸かりイチャイチャする。お風呂から上がるとリビングで寛ぐ。
時間の感覚が全くない。時計を見ると、学校を出てからすでに日付が変わり、もうすぐ朝が明けるところだった。
「お腹減ったでしょ? 朝ごはん用意してくれたから食べよ」
「うん、悠斗も食べてない? てかお前休んだのか?」
「瀬菜と一緒に寝たよ? 昨日のお昼から全然食べていないし食べよ」
黙り込む俺に、悠斗は心配そうな面差しを向けてくる。
昨日のことを考えていた。
薬でおかしくなった自分がどれだけ悠斗に、みんなに迷惑を掛けたか。謝罪だけでは済まないことだ。自分の一生が今までと百八十度変わっていたかもしれない。きっと学校に通うことだって叶わなくなっていただろう。
──いや、もしかしたら自分が犯罪者か、この世から消えたくなっていた可能性もある。それでも、今は謝りたかった。感謝したかった。
「……瀬菜? どうしたの?」
「あ、あのさ悠斗……その……昨日は助かった。悠斗達が来なかったら俺、あいつらにレイプされて、こうして悠斗と一緒にいることもできなかったと思う。だから、その……ありがとう……ございます……」
ソファーの上に正座をし、ペコリとお辞儀をする。
「瀬菜……ううん。もっと早く助けに行きたかったけど、遅くなってごめんね? けどね、もし瀬菜が強姦されても、俺は今と変わらず瀬菜と向き合うよ? 瀬菜が心を閉ざしても、ずっと側で見ているから。だから一緒にいられないとか、悲しいこと言わないでよ」
「うん……ごめんなさい。あのときは強がっていたけどさ、本当は怖くて堪らなかった。何度も悠斗に助けを求めて、自分の非力さに打ちのめされた。同じ男に負けるなんて思っていなかったんだ」
「瀬菜は瀬菜が思っているより魅力的だから。俺だけが好意を持ってるとは限らないし、同じ男でも力の差はどうしても出るものだよ? 怖い思いいっぱいさせちゃったよね。俺がもっとしっかりしてたら……こんな傷も付けずに済んだのに」
悠斗は俺の手のひらに視線を向ける。そこには所々に抉ったような小さな傷ができていた。
悠斗がくれたブレスレットを強く握ってできたものだ。さっと手を引くと背中に隠す。
「ち、違う、違うよ‼︎ この傷も、俺が襲われたのも悠斗のせいなんかじゃない!」
そうだ、あれは悠斗のせいではない。
俺の責任だ。
みんなの言いつけを、気遣いを無視した俺への罰だ。
怖い……そう確かに思った。
犯罪した加害者が一番悪いことはもちろんだが、未然に防げたことも否めない。
「俺、悠斗のブレスレットに励まされたし、助けられた。あれがなかったら俺の正気なんてあっという間に……だから、悠斗のせいなんかじゃないんだ。本当なんだ……」
今回の事件を自分のせいと言う悠斗に、胸が押し潰されそうなほど痛くなる。悠斗のことだ、ブレスレットを贈らなければ、俺に傷も付けずに済んだとそう言いたいのだろう。
悠斗は眉間に皺を寄せ息を噛み殺し、行き場のない怒りを溜め込んでいる。俺よりも悠斗のほうが痛そうだ。そんな悠斗を見ているのが強姦されたことよりも辛い。
時間の感覚が全くない。時計を見ると、学校を出てからすでに日付が変わり、もうすぐ朝が明けるところだった。
「お腹減ったでしょ? 朝ごはん用意してくれたから食べよ」
「うん、悠斗も食べてない? てかお前休んだのか?」
「瀬菜と一緒に寝たよ? 昨日のお昼から全然食べていないし食べよ」
黙り込む俺に、悠斗は心配そうな面差しを向けてくる。
昨日のことを考えていた。
薬でおかしくなった自分がどれだけ悠斗に、みんなに迷惑を掛けたか。謝罪だけでは済まないことだ。自分の一生が今までと百八十度変わっていたかもしれない。きっと学校に通うことだって叶わなくなっていただろう。
──いや、もしかしたら自分が犯罪者か、この世から消えたくなっていた可能性もある。それでも、今は謝りたかった。感謝したかった。
「……瀬菜? どうしたの?」
「あ、あのさ悠斗……その……昨日は助かった。悠斗達が来なかったら俺、あいつらにレイプされて、こうして悠斗と一緒にいることもできなかったと思う。だから、その……ありがとう……ございます……」
ソファーの上に正座をし、ペコリとお辞儀をする。
「瀬菜……ううん。もっと早く助けに行きたかったけど、遅くなってごめんね? けどね、もし瀬菜が強姦されても、俺は今と変わらず瀬菜と向き合うよ? 瀬菜が心を閉ざしても、ずっと側で見ているから。だから一緒にいられないとか、悲しいこと言わないでよ」
「うん……ごめんなさい。あのときは強がっていたけどさ、本当は怖くて堪らなかった。何度も悠斗に助けを求めて、自分の非力さに打ちのめされた。同じ男に負けるなんて思っていなかったんだ」
「瀬菜は瀬菜が思っているより魅力的だから。俺だけが好意を持ってるとは限らないし、同じ男でも力の差はどうしても出るものだよ? 怖い思いいっぱいさせちゃったよね。俺がもっとしっかりしてたら……こんな傷も付けずに済んだのに」
悠斗は俺の手のひらに視線を向ける。そこには所々に抉ったような小さな傷ができていた。
悠斗がくれたブレスレットを強く握ってできたものだ。さっと手を引くと背中に隠す。
「ち、違う、違うよ‼︎ この傷も、俺が襲われたのも悠斗のせいなんかじゃない!」
そうだ、あれは悠斗のせいではない。
俺の責任だ。
みんなの言いつけを、気遣いを無視した俺への罰だ。
怖い……そう確かに思った。
犯罪した加害者が一番悪いことはもちろんだが、未然に防げたことも否めない。
「俺、悠斗のブレスレットに励まされたし、助けられた。あれがなかったら俺の正気なんてあっという間に……だから、悠斗のせいなんかじゃないんだ。本当なんだ……」
今回の事件を自分のせいと言う悠斗に、胸が押し潰されそうなほど痛くなる。悠斗のことだ、ブレスレットを贈らなければ、俺に傷も付けずに済んだとそう言いたいのだろう。
悠斗は眉間に皺を寄せ息を噛み殺し、行き場のない怒りを溜め込んでいる。俺よりも悠斗のほうが痛そうだ。そんな悠斗を見ているのが強姦されたことよりも辛い。
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