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第6幕 計画は入念に、愛情込めて
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ボタンを止めるのもそこそこに鞄を肩に掛けながら洗面所へ向かい、顔を洗いそのまま髪の毛を濡らして寝癖をごまかす。ドライヤーなどする時間はなく顔をタオルで拭うと、玄関で待っている悠斗の元へ駆け足だ。
玄関に腰を下ろした悠斗が、ゼイゼイする俺を見上げてため息を吐くと立ち上がり、シャツのボタンを留めネクタイを締めてくれる。「行くよ」と呆れた様子で言われ「ごめん」と謝りながら学校へと向かう。
「夕べはなにかしていたの?」
「ううん、特には……けどなんだか眠れなくて……。結構待たせたよな。ごめん……」
「待つのは別にいいけど……。それにしても凄い寝癖だね?」
「うそ‼ 濡らしたから平気だと思っていたのに。跳ねてるとこ直っていない?」
手のひらを髪に撫で付ける。悠斗はクスクス笑い、視線をそこへと向けている。
「ふふっ……。歩く度にピコピコしてて可愛いから、そのままでもいいけど」
「えーー嫌だよ! なぁ、ちょっと直して!」
「今はなにも持っていないから無理だよ。学校着いたら雅臣にスタイリング剤借りてくるから我慢して?」
少しでも良く見せようと、髪を手ぐしで整えようとする俺に「そこじゃないよ」と、またクスクス笑い出す悠斗。寝坊はしたものの、いつもより早歩きだったせいか、ホームルームまでに時間がありホッとする。
悠斗のクラスに立ち寄り多澤にスタイリング剤を借りると、悠斗とトイレに向かい髪の毛をセットしてもらう。
「愛嬌あって俺は好きだけどな」
「うっ……アホの子みたいじゃん」
水で濡らしたあとに、スタイリング剤を塗布していく。うしろの見えないところは悠斗が手直ししてくれる。
「これでいいかな。まだ少し跳ねているけど、これが限界」
「うん、ありがとう!」
周りに誰も居ないことを確認すると、悠斗の腕を引いてほっぺにチュッとする。
「へへっ……お礼な!」
ヘラリと照れ笑いすると、悠斗はポカンとして固まっている。なんか不味いことしたか? と首を傾げるが、時間も不味いことになっていた。
悠斗の制服を引っ張り「遅刻するぞ」と、悠斗の教室に向かい呆けている悠斗を多澤に預けると、急いで自分のクラスに駆け込んだ。
***
ここ何日か朝と夕方は悠斗と登下校するが、出入り禁止はまだ続いていた。というか切っ掛けがなさ過ぎて、もう解禁だよと言うことができずにいた。悠斗もしっかりと俺の言い付けを守り、家には上がらないことを徹底していた。
テストもちらほらと返却され、今のところ目標の七十点以上の高成績を維持している。俺にしては凄いことだが、返却される度にドキドキとしているのも事実。ほかの三人も八十五点以上と高成績で、頑張ったのだなと感心してしまう。
今日は一番の難関英語のテストが返却される。最後の審判の時を待つが、いまさら足掻いても結果は変わらない。自分の名前が呼ばれ答案用紙を返されるとき、英語の先生にニコリとされ「柳君は今回結構頑張ったね」と褒めてもらえた。その言葉にクリア間違いなしと思ったが、大きな赤文字は六十八点と記入されていた。
うぉぉぉーーーー‼︎
うん……確かに俺頑張ったよね。いつもは英語、四十点台だからね。
赤らんだ顔がサーっと青くなる。そんな俺に先生は「次はもっと頑張ってね」と優しい笑顔で元気付けてくれた。
「柳ちゃん残念だったねー。あと二点! 去れど二点は大きい代償を与える! だねーはははーー」
「村上はすげーな。なんだかんだ全科目目標点以上って……そんなにいつも良かったっけ?」
「だって罰ゲームは嫌だからね! 超頑張った♪」
「俺だって嫌だよ! 超頑張ったけど……きっと俺だけなんだろうな……あの二人頭いいし」
大きなため息を吐きなにを要求されるのだろうかと、罰ゲームという次の試練を待つこととなった。
玄関に腰を下ろした悠斗が、ゼイゼイする俺を見上げてため息を吐くと立ち上がり、シャツのボタンを留めネクタイを締めてくれる。「行くよ」と呆れた様子で言われ「ごめん」と謝りながら学校へと向かう。
「夕べはなにかしていたの?」
「ううん、特には……けどなんだか眠れなくて……。結構待たせたよな。ごめん……」
「待つのは別にいいけど……。それにしても凄い寝癖だね?」
「うそ‼ 濡らしたから平気だと思っていたのに。跳ねてるとこ直っていない?」
手のひらを髪に撫で付ける。悠斗はクスクス笑い、視線をそこへと向けている。
「ふふっ……。歩く度にピコピコしてて可愛いから、そのままでもいいけど」
「えーー嫌だよ! なぁ、ちょっと直して!」
「今はなにも持っていないから無理だよ。学校着いたら雅臣にスタイリング剤借りてくるから我慢して?」
少しでも良く見せようと、髪を手ぐしで整えようとする俺に「そこじゃないよ」と、またクスクス笑い出す悠斗。寝坊はしたものの、いつもより早歩きだったせいか、ホームルームまでに時間がありホッとする。
悠斗のクラスに立ち寄り多澤にスタイリング剤を借りると、悠斗とトイレに向かい髪の毛をセットしてもらう。
「愛嬌あって俺は好きだけどな」
「うっ……アホの子みたいじゃん」
水で濡らしたあとに、スタイリング剤を塗布していく。うしろの見えないところは悠斗が手直ししてくれる。
「これでいいかな。まだ少し跳ねているけど、これが限界」
「うん、ありがとう!」
周りに誰も居ないことを確認すると、悠斗の腕を引いてほっぺにチュッとする。
「へへっ……お礼な!」
ヘラリと照れ笑いすると、悠斗はポカンとして固まっている。なんか不味いことしたか? と首を傾げるが、時間も不味いことになっていた。
悠斗の制服を引っ張り「遅刻するぞ」と、悠斗の教室に向かい呆けている悠斗を多澤に預けると、急いで自分のクラスに駆け込んだ。
***
ここ何日か朝と夕方は悠斗と登下校するが、出入り禁止はまだ続いていた。というか切っ掛けがなさ過ぎて、もう解禁だよと言うことができずにいた。悠斗もしっかりと俺の言い付けを守り、家には上がらないことを徹底していた。
テストもちらほらと返却され、今のところ目標の七十点以上の高成績を維持している。俺にしては凄いことだが、返却される度にドキドキとしているのも事実。ほかの三人も八十五点以上と高成績で、頑張ったのだなと感心してしまう。
今日は一番の難関英語のテストが返却される。最後の審判の時を待つが、いまさら足掻いても結果は変わらない。自分の名前が呼ばれ答案用紙を返されるとき、英語の先生にニコリとされ「柳君は今回結構頑張ったね」と褒めてもらえた。その言葉にクリア間違いなしと思ったが、大きな赤文字は六十八点と記入されていた。
うぉぉぉーーーー‼︎
うん……確かに俺頑張ったよね。いつもは英語、四十点台だからね。
赤らんだ顔がサーっと青くなる。そんな俺に先生は「次はもっと頑張ってね」と優しい笑顔で元気付けてくれた。
「柳ちゃん残念だったねー。あと二点! 去れど二点は大きい代償を与える! だねーはははーー」
「村上はすげーな。なんだかんだ全科目目標点以上って……そんなにいつも良かったっけ?」
「だって罰ゲームは嫌だからね! 超頑張った♪」
「俺だって嫌だよ! 超頑張ったけど……きっと俺だけなんだろうな……あの二人頭いいし」
大きなため息を吐きなにを要求されるのだろうかと、罰ゲームという次の試練を待つこととなった。
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