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第14幕 季節外れの天使ちゃん
06
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会長室に向かうと、環樹先輩と斎賀さんそれに悠斗がソファーに座り会話をしていた。悠斗の腕に腕を絡ませ寄り添っている姿に、またイライラと黒い感情が込み上げてくる。
怒りを鎮めようとしても無理な訳で、お盆ごとテーブルの上にバンっと叩きつけてしまう。
「クク……姫乃ちゃんありがとう。君も座って」
環樹先輩は自分の隣をパンパンと叩くと、おいでと促してくる。悠斗を見れば苦笑いで、いつものように呼びつけてくれない。しゅんとしながら環樹先輩の隣に腰掛けると、斎賀さんにクスッと馬鹿にしたように笑われる。
「……あら、安いお茶だと思ったけど意外と飲めるじゃない」
「瀬菜の淹れてくれるお茶は、高級じゃなくても美味しいんだよ?」
「姫乃ちゃんの愛情が注がれてるんだ。当たり前だ」
褒めてるの? 汚してるの?
さっきまで泣きそうだったのに……なんなんだよ……。
「……とにかく戻らないから! いまさら前の学校に戻れないもん」
「お前が転校して来ると、俺の計画が全て白紙に戻るんだ」
「まぁ、先輩。実千流ちゃんだって、手続きも終わってる訳だし、そう上から言わなくても……」
どうやら環樹先輩は斎賀さんの転校に反対のようだ。
「ふふっ、やっぱり悠斗さん優しいしいから好き♡」
「俺もサポートはちゃんとしますから」
「……王子も安くなったもんだね。だからって責任なくなった訳じゃない」
「ええ、分かっています」
「はぁ~悠斗さんとお見合いして良かった♪ 最初は乗り気じゃなかったけど……ますます気に入っちゃった♡」
サーっと血の気が引いていく。なんの話をしているのかすぐには理解できなかった。
悠斗からひと言もそんな話は聞いていない。
「……あっ、そっか瀬菜ちゃんは……知らなかったんだ。ごめんなさい? 気が利かなくて……」
「実千流ちゃん! 瀬菜を心配させないで」
「……本当にお前、相変わらず最低だよね。姫乃ちゃん、王子なんてやっぱりやめたほうがいい。僕は不安になんてさせないよ? 付き合っちゃおうか?」
「…………えっ、あっ……はい……」
あまりのショックに考えなしに頷いてしまう。
「──瀬菜ッ! 待って! 瀬菜は勘違いしてる。実千流ちゃんは違くて……この間、食事会で会っただけだから」
「どんな食事会なんだか。爺様方の計らいでしょ。あの二人もなにがしたいのかね」
「環樹会長は黙っててくださいよ。話がややこしくなってるじゃないですか!」
「でも、大爺様のおかげで、悠斗さんとこうして会えて私は嬉しいわ」
これはなんなのだろうか……。口々に紡がれていく言葉が、右から左へと抜けていく。浮気でもされたのかもと、一瞬どん底へ突き落とされた気分だ。ただ悠斗が違うと言うのなら違うのだろう。
ではそれはなんなのだ……。グッと唇を噛み締めると、悠斗達にボソリと呟いた。
「俺、今のお前の行動を見て、どうやって信じればいいんだ?」
相変わらず悠斗の腕に寄り添う斎賀さん。悠斗も振り解こうともしない。それはどういうことなのか。俺には全く理解できない。無感情のまま言葉が溢れそう言っていた。
俺の言葉に息を詰める悠斗は、俺から視線を逸らすと「ごめん……」とひと言謝罪をし、それ以上なにも言わなかった。
怒りを鎮めようとしても無理な訳で、お盆ごとテーブルの上にバンっと叩きつけてしまう。
「クク……姫乃ちゃんありがとう。君も座って」
環樹先輩は自分の隣をパンパンと叩くと、おいでと促してくる。悠斗を見れば苦笑いで、いつものように呼びつけてくれない。しゅんとしながら環樹先輩の隣に腰掛けると、斎賀さんにクスッと馬鹿にしたように笑われる。
「……あら、安いお茶だと思ったけど意外と飲めるじゃない」
「瀬菜の淹れてくれるお茶は、高級じゃなくても美味しいんだよ?」
「姫乃ちゃんの愛情が注がれてるんだ。当たり前だ」
褒めてるの? 汚してるの?
さっきまで泣きそうだったのに……なんなんだよ……。
「……とにかく戻らないから! いまさら前の学校に戻れないもん」
「お前が転校して来ると、俺の計画が全て白紙に戻るんだ」
「まぁ、先輩。実千流ちゃんだって、手続きも終わってる訳だし、そう上から言わなくても……」
どうやら環樹先輩は斎賀さんの転校に反対のようだ。
「ふふっ、やっぱり悠斗さん優しいしいから好き♡」
「俺もサポートはちゃんとしますから」
「……王子も安くなったもんだね。だからって責任なくなった訳じゃない」
「ええ、分かっています」
「はぁ~悠斗さんとお見合いして良かった♪ 最初は乗り気じゃなかったけど……ますます気に入っちゃった♡」
サーっと血の気が引いていく。なんの話をしているのかすぐには理解できなかった。
悠斗からひと言もそんな話は聞いていない。
「……あっ、そっか瀬菜ちゃんは……知らなかったんだ。ごめんなさい? 気が利かなくて……」
「実千流ちゃん! 瀬菜を心配させないで」
「……本当にお前、相変わらず最低だよね。姫乃ちゃん、王子なんてやっぱりやめたほうがいい。僕は不安になんてさせないよ? 付き合っちゃおうか?」
「…………えっ、あっ……はい……」
あまりのショックに考えなしに頷いてしまう。
「──瀬菜ッ! 待って! 瀬菜は勘違いしてる。実千流ちゃんは違くて……この間、食事会で会っただけだから」
「どんな食事会なんだか。爺様方の計らいでしょ。あの二人もなにがしたいのかね」
「環樹会長は黙っててくださいよ。話がややこしくなってるじゃないですか!」
「でも、大爺様のおかげで、悠斗さんとこうして会えて私は嬉しいわ」
これはなんなのだろうか……。口々に紡がれていく言葉が、右から左へと抜けていく。浮気でもされたのかもと、一瞬どん底へ突き落とされた気分だ。ただ悠斗が違うと言うのなら違うのだろう。
ではそれはなんなのだ……。グッと唇を噛み締めると、悠斗達にボソリと呟いた。
「俺、今のお前の行動を見て、どうやって信じればいいんだ?」
相変わらず悠斗の腕に寄り添う斎賀さん。悠斗も振り解こうともしない。それはどういうことなのか。俺には全く理解できない。無感情のまま言葉が溢れそう言っていた。
俺の言葉に息を詰める悠斗は、俺から視線を逸らすと「ごめん……」とひと言謝罪をし、それ以上なにも言わなかった。
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