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第14幕 季節外れの天使ちゃん
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「なんで電話出ないんだ!」
「目の前に居るのに出る必要ないじゃん! それに構ってる暇ないって言ってたのは環樹でしょ」
「妙な噂を聞きつけたんだ。二人組の他校の女子に男どもは大騒ぎだ。やっぱりお前達だったか」
「約束通り問題は起こしていない」
「目立つなとも言ったはずだが?」
「控えめじゃん。普通に女子高生だし。ねぇ~瀬菜」
「ははは……こんにちは先輩。今日も笑顔が素敵ですね」
先日実千流からお願いされたのは、文化祭で一緒に女装して欲しいという内容だった。どうやら先輩に女装禁止令を出されていたようだ。
文化祭の日に女装をする条件として、俺と一緒で問題を起こさなければしてもいいと言われたらしく、実千流は数日間暇さえあれば俺に猛アタックだった。悠斗には安請け合いと言われたが、全くその通りだ。最初は断って逃げていたが、クラスでコスプレをすることになり逃げ場を失った。
「姫乃ちゃんは相変わらず可愛いね~♪ 誰かさんにも見習って欲しいもんだ」
「う~~! どうせ可愛くないし! 小言は十分でしょ」
「いや……十分ではないな~。お前にはほかにもやることもあるだろ! 遊びは終わりだ。さっさと来い!」
「やぁだ~~! まだチラシしか配っていないのにぃ~~‼︎」
「ははは……行ってらっしゃい……」
回収される実千流に手を振り送り出しながら、なんだかんだ仲良いじゃんと、微笑ましくて心がポカポカする。先輩も実千流がトラブルに巻き込まれるのが心配なのだろう。
さてと……実千流も先輩のところに行ったし、俺は着替えよ。
役目は終わり、チラシ配りも終了した俺は、このミニすぎるスースーするスカートを脱ぎ捨てたくて堪らなかった。悠斗には見せてはいないが、披露したらまぁ……うん。多くは語らないことにしよう。
「噂の可愛い子発見~♡ ひとりみたいだけど……まぁ、好都合」
立ち上がろうとする目の前に、馴れ馴れしい言葉と共に黒い影が差し込んだ。
不意打ちの声に目を見開くと、いつぞや見た人物が俺をにやけた顔で見下ろしていた。
……こいつ……由良りんが「逃げろ」って言ってた。
名前は……歩く下半身男‼︎
俯き視線を合わせないように横にスライドし逃げる準備をすると、勘違いしたのか隣に腰掛けてくる。実千流なら軽く叩きのめせるが俺では無理だ。男と説明したところで、バイらしいので意味はない。文化祭はどうやら俺をトラブルに巻き込みたいらしい。
幸いここは人通りも多く、なにかされる心配はなさそうだが、逃げるにも骨が折れそうだ。どうしたものかと思案している間に、肩に男の手のひらが触れ引き寄せられた。
「君、マジ可愛いね。名前は? その制服お嬢学校のM女だよね? 友達と逸れたの? 一緒に探そうか?」
「…………」
……手慣れてらっしゃる。
連れ込むき満々じゃん。
遠くを見ながら無視を決め込むが、矢継ぎ早に質問攻めにあってしまう。実千流の鉄拳と回し蹴りで懲りたと思っていたが、全然懲りていないらしい。実千流に叩きのめされ、伸び切っていることを少しでも心配して損した気分だ。
「なになに~もしかして恥ずかしがり屋? 清楚な感じもいいね~。俺とどっか行く? 退屈させないよ?」
太ももにするりと手のひらが添えられ、地肌に男のぬくもりが伝わってくる。気持ち悪さに引きつった笑顔で嫌がる素振りを見せると、肌をすりすりと摩ってくる。こんな場所でも臆さない男は、歩く下半身男の異名を轟かせる。
「目の前に居るのに出る必要ないじゃん! それに構ってる暇ないって言ってたのは環樹でしょ」
「妙な噂を聞きつけたんだ。二人組の他校の女子に男どもは大騒ぎだ。やっぱりお前達だったか」
「約束通り問題は起こしていない」
「目立つなとも言ったはずだが?」
「控えめじゃん。普通に女子高生だし。ねぇ~瀬菜」
「ははは……こんにちは先輩。今日も笑顔が素敵ですね」
先日実千流からお願いされたのは、文化祭で一緒に女装して欲しいという内容だった。どうやら先輩に女装禁止令を出されていたようだ。
文化祭の日に女装をする条件として、俺と一緒で問題を起こさなければしてもいいと言われたらしく、実千流は数日間暇さえあれば俺に猛アタックだった。悠斗には安請け合いと言われたが、全くその通りだ。最初は断って逃げていたが、クラスでコスプレをすることになり逃げ場を失った。
「姫乃ちゃんは相変わらず可愛いね~♪ 誰かさんにも見習って欲しいもんだ」
「う~~! どうせ可愛くないし! 小言は十分でしょ」
「いや……十分ではないな~。お前にはほかにもやることもあるだろ! 遊びは終わりだ。さっさと来い!」
「やぁだ~~! まだチラシしか配っていないのにぃ~~‼︎」
「ははは……行ってらっしゃい……」
回収される実千流に手を振り送り出しながら、なんだかんだ仲良いじゃんと、微笑ましくて心がポカポカする。先輩も実千流がトラブルに巻き込まれるのが心配なのだろう。
さてと……実千流も先輩のところに行ったし、俺は着替えよ。
役目は終わり、チラシ配りも終了した俺は、このミニすぎるスースーするスカートを脱ぎ捨てたくて堪らなかった。悠斗には見せてはいないが、披露したらまぁ……うん。多くは語らないことにしよう。
「噂の可愛い子発見~♡ ひとりみたいだけど……まぁ、好都合」
立ち上がろうとする目の前に、馴れ馴れしい言葉と共に黒い影が差し込んだ。
不意打ちの声に目を見開くと、いつぞや見た人物が俺をにやけた顔で見下ろしていた。
……こいつ……由良りんが「逃げろ」って言ってた。
名前は……歩く下半身男‼︎
俯き視線を合わせないように横にスライドし逃げる準備をすると、勘違いしたのか隣に腰掛けてくる。実千流なら軽く叩きのめせるが俺では無理だ。男と説明したところで、バイらしいので意味はない。文化祭はどうやら俺をトラブルに巻き込みたいらしい。
幸いここは人通りも多く、なにかされる心配はなさそうだが、逃げるにも骨が折れそうだ。どうしたものかと思案している間に、肩に男の手のひらが触れ引き寄せられた。
「君、マジ可愛いね。名前は? その制服お嬢学校のM女だよね? 友達と逸れたの? 一緒に探そうか?」
「…………」
……手慣れてらっしゃる。
連れ込むき満々じゃん。
遠くを見ながら無視を決め込むが、矢継ぎ早に質問攻めにあってしまう。実千流の鉄拳と回し蹴りで懲りたと思っていたが、全然懲りていないらしい。実千流に叩きのめされ、伸び切っていることを少しでも心配して損した気分だ。
「なになに~もしかして恥ずかしがり屋? 清楚な感じもいいね~。俺とどっか行く? 退屈させないよ?」
太ももにするりと手のひらが添えられ、地肌に男のぬくもりが伝わってくる。気持ち悪さに引きつった笑顔で嫌がる素振りを見せると、肌をすりすりと摩ってくる。こんな場所でも臆さない男は、歩く下半身男の異名を轟かせる。
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