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第19幕 鏡に映る心の奥底
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しおりを挟む「悠斗悠斗、俺パンツ買いに行ってくるけど、なにか要るものあるか?」
「……えっ? パンツ?」
「うん、パンツ。コンビニにも売っているだろ?」
「……パンツなら俺、瀬菜用の持ってるよ?」
「……はぁ?」
悠斗の発言にこめかみ辺りをピクピクさせるが、今は悠斗に構っている場合ではない。
今は文化祭準備期間で、受験勉強漬けの俺たちにはちょうどよい骨休みになっている。それでもクラスの出しものと、生徒会の業務は尽きることがない。
そんな中、なぜパンツが必要かというと、話せば長くなるが……簡単に説明しよう。
◇◇◇
クラスの出しものの準備もあったが、先生に提出しなければならない書類を生徒会室に忘れた俺は、ひとり生徒会室に戻ることになった。
誰も居ないと踏んでいたのに、そこには先客が居たのだ。そして俺は開けてはいけない扉を開けてしまったのだと後悔し、その光景に一歩も動けなくなっていた。
『……ひっ、あぁっ、熱いッ……』
『なんだ、だらしない奴だ……』
『うぅ……やめっ……』
『ハッ! どうやったらこんなに濡れるんだ? ドロドロにしやがって。ほら、足を広げろ』
『──熱いって……もっ、触るなッ』
『あー、うるせ……脱がないと余計染みになるぞ。恥ずかしい思いするのはお前だ』
この光景はどういうことなのか。固まる俺の目の前でズボンを脱ぎ捨て、ソファーに膝を立てて座る森山君。その股間の前に膝をつき、下肢辺りを触っている通川君が居た。
森山君のパンツはあっという間に脱がされ、宙を彷徨うクラゲのように投げ捨てられた。ワイシャツの裾をグッと引っ張り、陰部を隠すようにする森山君の姿は、なんというか……卑猥だ。
そういう関係だったことにも驚くが、真っ昼間からいつ人が来るかもしれない場所で性的なことをしている二人に、驚くをとおり越して呆れてしまう。
ははは……自分も人のこと言えない節はあるけど……。
そっと後退し、コッソリ出て行くつもりだったが、そこはいつもの俺だ。焦ってもたつく脚が絡まり、見事に尻もちをついてしまう。
痛むお尻を擦っていると、いつの間にやら目の前に通川君が仁王立ちしていた。しまったと青い顔で見上げると、無表情な面持ちで俺の目の前にしゃがみ込み、メガネを直しながらすっと目を細めた。
『柳先輩……よく転びますね。柔らかいお尻は無事ですか?』
『あっ、うん……その、邪魔するつもりは!』
『邪魔? ……あぁ、森山と俺、そんな風に見えたんですか? 先輩もしかして欲求不満?』
『えっ? そういう関係じゃ……ってぇーー! 欲求不満じゃねぇわ!』
通川君の先に見える森山君は、顔を真っ赤にしながら俺を涙目で見つめ『先輩、違う……違うんです。こんな格好でゴメンナサイ。違うんです……』と、うわ言を呟くように、陰部をシャツで隠しながら首を横にブンブン振っていた。
視線を通川君に移せば、見たことのない笑顔を向けられる。その笑顔になぜか恐怖を覚え、さらに蒼白になると、スッと目の前に紙幣が現れた。
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