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アリナ、ディア・ウラジオスと話す2
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「はっ、こんにちは、ディア様」
初めましてといいそうになり訂正したので、なんだか人を小ばかにしたうな挨拶のになってしまった。
内心焦るアリナ。
「こんにちは、ローラ様」
しかし初めの一言が聞こえなかったのか、聞こえてない振りをしているのか、ディアはいままで振っていた剣を脇に下ろすと、何事もなかったかのように挨拶を返した。
「ご加減はよろしいのですか? リズ嬢からお体が弱いと聞いてますが」
リズは誰とでも親しいのか、いや、きっとディアにも決闘を申し込んだりして付きまとっている途中で、そんなことをいっているのだろう。
ローラの言うようにリズに事情を話していたら今頃、呪いのことは国中にバレていたことだろう。心の中で、仲間に引き入れなくてよかったと心から思った。
「はい、大丈夫です」
「今日はこんなところまで、私に何かごようでしょうか?」
ここは剣術学部の練習場である。魔法学部の生徒である、ローラやアリナとは無縁の場所だった。
「皇太子妃候補について少しお話をしたくて」
ローラや他の令嬢のように遠回しに話を聞きだすのは得意ではない。
「わかりました」
普段そんな笑わないディアが、小さく微笑んだ。きっとファンクラブの子たちが見たら失神ものだろう。
「ここではなんですから、あちらでお話しましょう」
そういうと、稽古場が良く見える席の一つに案内された。
テーブルの上に置かれた鈴を鳴らすと、どこからともなく、メイドが現れ、ディアの指示で暖かい紅茶と、甘い香りのお菓子がすぐに用意された。
「おいしいですわね、これ」
「気に入っていただけてよかったです」
「ディア様は食べないのですか?」
「私は甘いのは苦手で」
ではこのお菓子は私のために用意されたのか。ディアが学園内の女生徒から人気があるのが少しわかった気がした。
剣術部は基本男女一緒に訓練をしてるせいで、リズもそうだが、ディアも綺麗な小麦色の肌をしている。しかしその引き締まったプロポーションと、中世的に整った綺麗な顔立ちが、他の令嬢にはない妖艶さを漂わせていた。
ローラの顔も見ていて飽きない美しさだが、ディアも違う意味で、ドキドキする美しさだった。それに剣を振る所作も、リズの直線的な荒々しい剣さばきとは違って、舞いでも見ているような、剣さばきだった。
それでいて、ちゃんと気遣いもできる。女生徒に人気があるのも頷ける。
「ディア様は皇太子妃になりたいと思っていますか?」
直球過ぎるアリナの言葉に、一瞬紅茶に口をつけかけていたディアの動きが止まった。それから、ニコリと笑みを浮かべると。
「ローラ様はなりたいと思っているのですか?」
と逆に訊き返された。
「私は……」
面倒とは言っていたが、選ばれたら責務を全うするとも言っていた。どう答えてよいか困り口ごもる。
「私は国民の意見に従います」
「それは選ばれたのなら、皇太子妃になるということですよね?」
「みなさんもそうなのではないのですか?」
まあ普通の令嬢なら、皇太子妃になりたくないものなどいないだろう。
アリナだって、ダニーがいなければ、貴族として、政略結婚んなど普通のことだと受け入れただろう。
「騎士には未練はないのですか」
「父は女である私に騎士団を任せるつもりはないと常々言っています
そういって寂しそうに目を伏せた。
「ならば皇太子妃になるのも悪くはないかと、それにミハイルは良い友ですし」
「幼馴染なのですよね」
「はい」
「ミハイル皇太子のこと好きなんですか?」
それに対してディア肯定も否定もせず、小さく微笑んだ。
「ミハイル皇太子は、ディア様のことを」
「ローラ様、この国の王子は自分の感情だけで妃を選べないのですよ」
アリナが口を閉ざす。
そうだ、皇太子は候補者にある程度口は挟めるが、最終判断は国民の支持率なのだ、そして皇太子妃も、国から選ばれた以上辞退などありえな。
それでも絶対嫌ならば、支持率を操ることはできるが、そこまで皇太子妃を嫌がる貴族がいるだろうか。
貴族同士で恋愛結婚の方が本当に稀なのだから。
アリナだって、絶対に選ばれないという確信があるからこそ、最終候補に残った今でも、余裕なのだ。
「ローラ様、何か変わられましたね」
「えっ」
一瞬入れ替わりがバレたのかと内心焦る。
「えぇ、まぁ」
「やはり聖女様に選ばれたからでしょうか」
毎日お昼に教会に祈りを捧げていることは、有名な話である。
「昔はもっと勝ち気で、なんていうか破天荒。皇太子妃も嫌なら嫌と言いそうな方だったのに。それともミハイルを見て気が変わりましたか」
この間のお茶会では、華やかな貴族たちの中で、シックな黒を基調にした生徒会の制服に身を包んでいたが、輝くような金色の髪に、同じく金色の瞳。そこからあふれる気品はどんな装飾品より美しく皇太子を皇太子たらしめていた。
「そういうわけでは、ないのですが」
聖女になりすっかり敬虔な人物になったと思われているのだろう。
呪いのせいで、常に魔力のコントロールをしているので、他に気を回す余裕がないだけだとは、思ってもいまい。
とりあえず、笑ってごまかす。
「ディアお嬢様」
その時ディアが呼ばれた。
「あぁ、私のことはきになさらず」
アリナもそろそろ限界だった。教会に行って少し休みたいと思っていたから丁度良かった。しかしディアは申し訳なさそうに眉を下げながら、去っていった。
初めましてといいそうになり訂正したので、なんだか人を小ばかにしたうな挨拶のになってしまった。
内心焦るアリナ。
「こんにちは、ローラ様」
しかし初めの一言が聞こえなかったのか、聞こえてない振りをしているのか、ディアはいままで振っていた剣を脇に下ろすと、何事もなかったかのように挨拶を返した。
「ご加減はよろしいのですか? リズ嬢からお体が弱いと聞いてますが」
リズは誰とでも親しいのか、いや、きっとディアにも決闘を申し込んだりして付きまとっている途中で、そんなことをいっているのだろう。
ローラの言うようにリズに事情を話していたら今頃、呪いのことは国中にバレていたことだろう。心の中で、仲間に引き入れなくてよかったと心から思った。
「はい、大丈夫です」
「今日はこんなところまで、私に何かごようでしょうか?」
ここは剣術学部の練習場である。魔法学部の生徒である、ローラやアリナとは無縁の場所だった。
「皇太子妃候補について少しお話をしたくて」
ローラや他の令嬢のように遠回しに話を聞きだすのは得意ではない。
「わかりました」
普段そんな笑わないディアが、小さく微笑んだ。きっとファンクラブの子たちが見たら失神ものだろう。
「ここではなんですから、あちらでお話しましょう」
そういうと、稽古場が良く見える席の一つに案内された。
テーブルの上に置かれた鈴を鳴らすと、どこからともなく、メイドが現れ、ディアの指示で暖かい紅茶と、甘い香りのお菓子がすぐに用意された。
「おいしいですわね、これ」
「気に入っていただけてよかったです」
「ディア様は食べないのですか?」
「私は甘いのは苦手で」
ではこのお菓子は私のために用意されたのか。ディアが学園内の女生徒から人気があるのが少しわかった気がした。
剣術部は基本男女一緒に訓練をしてるせいで、リズもそうだが、ディアも綺麗な小麦色の肌をしている。しかしその引き締まったプロポーションと、中世的に整った綺麗な顔立ちが、他の令嬢にはない妖艶さを漂わせていた。
ローラの顔も見ていて飽きない美しさだが、ディアも違う意味で、ドキドキする美しさだった。それに剣を振る所作も、リズの直線的な荒々しい剣さばきとは違って、舞いでも見ているような、剣さばきだった。
それでいて、ちゃんと気遣いもできる。女生徒に人気があるのも頷ける。
「ディア様は皇太子妃になりたいと思っていますか?」
直球過ぎるアリナの言葉に、一瞬紅茶に口をつけかけていたディアの動きが止まった。それから、ニコリと笑みを浮かべると。
「ローラ様はなりたいと思っているのですか?」
と逆に訊き返された。
「私は……」
面倒とは言っていたが、選ばれたら責務を全うするとも言っていた。どう答えてよいか困り口ごもる。
「私は国民の意見に従います」
「それは選ばれたのなら、皇太子妃になるということですよね?」
「みなさんもそうなのではないのですか?」
まあ普通の令嬢なら、皇太子妃になりたくないものなどいないだろう。
アリナだって、ダニーがいなければ、貴族として、政略結婚んなど普通のことだと受け入れただろう。
「騎士には未練はないのですか」
「父は女である私に騎士団を任せるつもりはないと常々言っています
そういって寂しそうに目を伏せた。
「ならば皇太子妃になるのも悪くはないかと、それにミハイルは良い友ですし」
「幼馴染なのですよね」
「はい」
「ミハイル皇太子のこと好きなんですか?」
それに対してディア肯定も否定もせず、小さく微笑んだ。
「ミハイル皇太子は、ディア様のことを」
「ローラ様、この国の王子は自分の感情だけで妃を選べないのですよ」
アリナが口を閉ざす。
そうだ、皇太子は候補者にある程度口は挟めるが、最終判断は国民の支持率なのだ、そして皇太子妃も、国から選ばれた以上辞退などありえな。
それでも絶対嫌ならば、支持率を操ることはできるが、そこまで皇太子妃を嫌がる貴族がいるだろうか。
貴族同士で恋愛結婚の方が本当に稀なのだから。
アリナだって、絶対に選ばれないという確信があるからこそ、最終候補に残った今でも、余裕なのだ。
「ローラ様、何か変わられましたね」
「えっ」
一瞬入れ替わりがバレたのかと内心焦る。
「えぇ、まぁ」
「やはり聖女様に選ばれたからでしょうか」
毎日お昼に教会に祈りを捧げていることは、有名な話である。
「昔はもっと勝ち気で、なんていうか破天荒。皇太子妃も嫌なら嫌と言いそうな方だったのに。それともミハイルを見て気が変わりましたか」
この間のお茶会では、華やかな貴族たちの中で、シックな黒を基調にした生徒会の制服に身を包んでいたが、輝くような金色の髪に、同じく金色の瞳。そこからあふれる気品はどんな装飾品より美しく皇太子を皇太子たらしめていた。
「そういうわけでは、ないのですが」
聖女になりすっかり敬虔な人物になったと思われているのだろう。
呪いのせいで、常に魔力のコントロールをしているので、他に気を回す余裕がないだけだとは、思ってもいまい。
とりあえず、笑ってごまかす。
「ディアお嬢様」
その時ディアが呼ばれた。
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