2 / 4
中編
しおりを挟む
「蔑ろ……私の態度が招いた……」
「えぇ、そうです。お茶会どころかエスコートすらされない婚約者は不要だと言われて階段から突き落とされましたわ」
自分の態度の何が悪かったのか理解する前に、彼女から続けられた言葉は衝撃的だった。
『突き落とされた?エスコートしていない?』
頭の中で整理出来ずに茫然としている私に、彼女は遠慮なく言葉を続けた。
「最初の怪我は半年前ですわよ?怪我をしたと連絡しても返事もなく見舞いにも来ない婚約者。私は皆の笑い者でしたわ」
「そんな手紙は……」
「私が直接、お届けに伺ったので間違いなく届いております」
届いていないと否定しようとした私の言葉は、彼女の横に寄り添う侍女に遮られる。普段なら礼儀知らずと叱る所だろう。しかし、私は読んだ記憶がない。
「読んでいないのですから記憶になくて当然で御座います。侍女が渡した手紙を机の上に投げて、後で読むとお答えしたのですから」
淡々と呆れも混ざるその声は、婚約者のものとは思えずどこか他人事に聞こえた。そうだ。親しみも優しさもなくただ説明するだけの声だ。
「直接渡された手紙を読まない。そんなマナー違反は一度では御座いませんわ。貴方のご両親が放置されている手紙を複数確認した事が証拠ですわ」
両親が確認したのなら自宅にも寮にも未開封の手紙があると言う事か?現実の酷さに何も言えずにいると、彼女は大きなため息を吐き出した。
「そのご様子ではご両親から届いた書類だけご覧になって、こちらに来られたのでは?」
「あぁ、すまない」
「今更、謝罪など結構です。謝られても怪我が治る訳ではありませんもの」
謝罪を拒否され改めて彼女の姿を確認すると、左足を引きずり左頬には大きなガーゼ。そして、遠目でも分かる濃い色の眼鏡。
「その眼鏡は……なぜ……」
「はぁ……三ヶ月前に階段から落ちた時、顔を怪我しましたの。当然、目にも傷が出来ました」
自分の頭の中にあった婚約者との対面の図式はガラガラと音を立てて崩れ、目の当たりにした現実に理解が追い付かず返事も返せない愚か者の姿しかない。侍女が睨みながら彼女は歩く事も辛いのだと言った。
「ターナ、もう良いわよ。そんな事も気付かない人だから、入院して学園にいなかった事にも気付かないのよ」
「あ……」
「卒業後は隣国にて治療に専念したく思いますので、早急のご対応をお願い致します……もう貴方の顔も思い出せませので宜しいですか?」
自分が何も言えずにいる中、彼女は用はないと頭を下げると侍女と共に迎えの馬車に乗り込んだ。その馬車が見えなくなるまで見送ると、急いで寮の部屋へと戻り手紙を探す。机の下の大きな引き出しの中には未開封の手紙の山が現れた。ザッと見ただけで二十通。
震える手で一枚取れば綺麗な字で自分の名前が書いてある。自分がした事の重大さに気付いて膝から崩れ落ちていた。
「えぇ、そうです。お茶会どころかエスコートすらされない婚約者は不要だと言われて階段から突き落とされましたわ」
自分の態度の何が悪かったのか理解する前に、彼女から続けられた言葉は衝撃的だった。
『突き落とされた?エスコートしていない?』
頭の中で整理出来ずに茫然としている私に、彼女は遠慮なく言葉を続けた。
「最初の怪我は半年前ですわよ?怪我をしたと連絡しても返事もなく見舞いにも来ない婚約者。私は皆の笑い者でしたわ」
「そんな手紙は……」
「私が直接、お届けに伺ったので間違いなく届いております」
届いていないと否定しようとした私の言葉は、彼女の横に寄り添う侍女に遮られる。普段なら礼儀知らずと叱る所だろう。しかし、私は読んだ記憶がない。
「読んでいないのですから記憶になくて当然で御座います。侍女が渡した手紙を机の上に投げて、後で読むとお答えしたのですから」
淡々と呆れも混ざるその声は、婚約者のものとは思えずどこか他人事に聞こえた。そうだ。親しみも優しさもなくただ説明するだけの声だ。
「直接渡された手紙を読まない。そんなマナー違反は一度では御座いませんわ。貴方のご両親が放置されている手紙を複数確認した事が証拠ですわ」
両親が確認したのなら自宅にも寮にも未開封の手紙があると言う事か?現実の酷さに何も言えずにいると、彼女は大きなため息を吐き出した。
「そのご様子ではご両親から届いた書類だけご覧になって、こちらに来られたのでは?」
「あぁ、すまない」
「今更、謝罪など結構です。謝られても怪我が治る訳ではありませんもの」
謝罪を拒否され改めて彼女の姿を確認すると、左足を引きずり左頬には大きなガーゼ。そして、遠目でも分かる濃い色の眼鏡。
「その眼鏡は……なぜ……」
「はぁ……三ヶ月前に階段から落ちた時、顔を怪我しましたの。当然、目にも傷が出来ました」
自分の頭の中にあった婚約者との対面の図式はガラガラと音を立てて崩れ、目の当たりにした現実に理解が追い付かず返事も返せない愚か者の姿しかない。侍女が睨みながら彼女は歩く事も辛いのだと言った。
「ターナ、もう良いわよ。そんな事も気付かない人だから、入院して学園にいなかった事にも気付かないのよ」
「あ……」
「卒業後は隣国にて治療に専念したく思いますので、早急のご対応をお願い致します……もう貴方の顔も思い出せませので宜しいですか?」
自分が何も言えずにいる中、彼女は用はないと頭を下げると侍女と共に迎えの馬車に乗り込んだ。その馬車が見えなくなるまで見送ると、急いで寮の部屋へと戻り手紙を探す。机の下の大きな引き出しの中には未開封の手紙の山が現れた。ザッと見ただけで二十通。
震える手で一枚取れば綺麗な字で自分の名前が書いてある。自分がした事の重大さに気付いて膝から崩れ落ちていた。
3,119
あなたにおすすめの小説
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
白い結婚はそちらが言い出したことですわ
来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!
私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。
鍋
恋愛
男爵令嬢のレオナは王立図書館で働いている。古い本に囲まれて働くことは好きだった。
実家を出てやっと手に入れた静かな日々。
そこへ妹のリリィがやって来て、レオナに助けを求めた。
※このお話は極端なざまぁは無いです。
※最後まで書いてあるので直しながらの投稿になります。←ストーリー修正中です。
※感想欄ネタバレ配慮無くてごめんなさい。
※SSから短編になりました。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。
salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。
6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。
*なろう・pixivにも掲載しています。
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる