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あり得ない人が来ました
午後の授業は特に何も無く授業が終わり、友人達と他愛ない会話をしながら、帰宅するため片付けをしていると廊下が何時もより騒がしかった。
「何だか賑やかね?」
「今日、何かあったかしら?」
友人達と首を傾げながら教室を出ると、校舎を出る為に通る廊下に人集りが出来ていて通れなくなっている。
困ったわ。これじゃ帰れない。そう思っていたら、生徒達を掻き分けて歩いてくる長身の男性に気付いた。
鍛え上げた長身に、ダークブラウンの短い髪と切れ長のエメラルドグリーンの瞳。その人は王国の獣騎団団長で王弟、アレク・リーベル大公だった。
「あぁ、間に合ったね。ロゼッタ、迎えに来たよ」
私の目の前で止まった彼は、目を細めて嬉しそう。私の手を取っただけで回りから、悲鳴の様な女子生徒達の声が上がる。
「え?私ですか?」
「シェリーが、逢いたがっていてね」
シェリーと聞いて足元に視線を向けると、狼の様なピンと立つ耳と銀色の毛並みを持つ彼女が、私に身体を擦り寄ってきた。
「まぁ、シェリー久しぶりね。あら、ここを撫でて欲しいの?」
彼女の目線に合わせてしゃがむと、頭を差し出した。撫でると気持ち良さそうに目を細めた。そんな姿に思わず笑みが溢れる。
「さあ、ここでは皆の邪魔になるからね。ロゼッタ、家まで送るよ」
私の横で固まっている友人達に、一言断わって彼に手を引かれて校舎を歩いた。回りの視線が痛いけど、彼の背中を見て懐かしい気持ちになった。
小さな頃からよく我が家に来て、一緒に魔獣の世話をした格好いいお兄さん。魔獣を怯えず、手伝いをする私を馬鹿にする事も無く、ずっと側にいてくれた初恋の人。無理矢理とはいえ、婚約者が決まった時にこの気持ちに蓋をしたはずだったのに今にも溢れそうになった。
「急に来て驚かせて済まなかったね」
馬車に乗り込みドアが閉まると、ゆっくりと走り出した。
「いえ……でも急に何故?」
「シェリーの事もあるが……最近、良くない噂を聞いたのでね」
団長として兵士の前に立つ時とは違い、優しく語りかける彼は城内で聞くという噂を教えてくれた。
それは、マリウス閣下が強引に結婚を進めようとしている話しと、婚約破棄した時の後釜を狙う質の悪い人々の話しだった。
「結婚の事は強引過ぎると陛下が反対したが、後釜を狙う連中が問題だな」
連中って大公様、言葉が乱れ過ぎですよ?婚約者の態度を考えると、当然の話だし身を守る術と考えながら魔法や護身術を習っている。本当に迷惑な人だわ。彼の行動でこんなにも多くの人が振り回されている。思わずため息をつくと、向かい側に座っていた大公様が私の横に移動した。驚いて顔を上げた瞬間、私は彼に抱き締められていた。
「君は一人で頑張り過ぎだ。もっと回りを……私を頼りなさい」
そう言った彼は、あやす様に背中をトントンと軽く叩く。子供じゃないと言いたかった。だけど昼間の言葉を思い出してしまい、彼のその優しさに甘えて腕の中で泣いた。足元では、ネロとシェリーが心配そうに私に鼻先を擦り寄せている。
心配してくれる人達の存在が、私の冷えた心を温めてくれた。
「何だか賑やかね?」
「今日、何かあったかしら?」
友人達と首を傾げながら教室を出ると、校舎を出る為に通る廊下に人集りが出来ていて通れなくなっている。
困ったわ。これじゃ帰れない。そう思っていたら、生徒達を掻き分けて歩いてくる長身の男性に気付いた。
鍛え上げた長身に、ダークブラウンの短い髪と切れ長のエメラルドグリーンの瞳。その人は王国の獣騎団団長で王弟、アレク・リーベル大公だった。
「あぁ、間に合ったね。ロゼッタ、迎えに来たよ」
私の目の前で止まった彼は、目を細めて嬉しそう。私の手を取っただけで回りから、悲鳴の様な女子生徒達の声が上がる。
「え?私ですか?」
「シェリーが、逢いたがっていてね」
シェリーと聞いて足元に視線を向けると、狼の様なピンと立つ耳と銀色の毛並みを持つ彼女が、私に身体を擦り寄ってきた。
「まぁ、シェリー久しぶりね。あら、ここを撫でて欲しいの?」
彼女の目線に合わせてしゃがむと、頭を差し出した。撫でると気持ち良さそうに目を細めた。そんな姿に思わず笑みが溢れる。
「さあ、ここでは皆の邪魔になるからね。ロゼッタ、家まで送るよ」
私の横で固まっている友人達に、一言断わって彼に手を引かれて校舎を歩いた。回りの視線が痛いけど、彼の背中を見て懐かしい気持ちになった。
小さな頃からよく我が家に来て、一緒に魔獣の世話をした格好いいお兄さん。魔獣を怯えず、手伝いをする私を馬鹿にする事も無く、ずっと側にいてくれた初恋の人。無理矢理とはいえ、婚約者が決まった時にこの気持ちに蓋をしたはずだったのに今にも溢れそうになった。
「急に来て驚かせて済まなかったね」
馬車に乗り込みドアが閉まると、ゆっくりと走り出した。
「いえ……でも急に何故?」
「シェリーの事もあるが……最近、良くない噂を聞いたのでね」
団長として兵士の前に立つ時とは違い、優しく語りかける彼は城内で聞くという噂を教えてくれた。
それは、マリウス閣下が強引に結婚を進めようとしている話しと、婚約破棄した時の後釜を狙う質の悪い人々の話しだった。
「結婚の事は強引過ぎると陛下が反対したが、後釜を狙う連中が問題だな」
連中って大公様、言葉が乱れ過ぎですよ?婚約者の態度を考えると、当然の話だし身を守る術と考えながら魔法や護身術を習っている。本当に迷惑な人だわ。彼の行動でこんなにも多くの人が振り回されている。思わずため息をつくと、向かい側に座っていた大公様が私の横に移動した。驚いて顔を上げた瞬間、私は彼に抱き締められていた。
「君は一人で頑張り過ぎだ。もっと回りを……私を頼りなさい」
そう言った彼は、あやす様に背中をトントンと軽く叩く。子供じゃないと言いたかった。だけど昼間の言葉を思い出してしまい、彼のその優しさに甘えて腕の中で泣いた。足元では、ネロとシェリーが心配そうに私に鼻先を擦り寄せている。
心配してくれる人達の存在が、私の冷えた心を温めてくれた。
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