[完結]貴方なんか、要りません

シマ

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穏便に済ませたい

 自室に戻った私は、急いで制服から着替える。フッと手に取った服を見て、苦笑が漏れた。無意識に掴んでいたのは、よそ行きの綺麗なワンピース。まだ、私の中で初恋は続いていると、改めて気付いて胸が苦しい。だけど、婚約者の言葉でふさいだ気分を少し上向きにしてくれる。どんな話か分からないけど、少しでも前向きに成りたくて、そのワンピースに着替えた。

 応接室に行きノックをすると、直ぐに返事があった。ドアを開けると、お父様が眉間に皺を寄せて難しい表情をしていた。

「大公様から話がある」

 固い声でそう言ったお父様の横に座って背筋を伸ばす。真っ直ぐ顔を上げて大公様に視線を向けると、彼は頷いてから話を始めた。それは馬車の中で聞いていた話だけではなかった。

「エリック様に借金ですか?」

「あぁ、閣下も知らない物だ。部下の話では悪質な金貸しから借りたようだ」

 人前にも関わらず大きなため息を吐いてしまう。一度は、閣下が返済したにも関わらず、再び作った借金、それは私と結婚してから我が家のお金で返済するつもりなのかも知れない。婚約の条件すらクリアしてないのに、更に問題を増やすなんてあり得ません。

「今回の件で陛下は婚約破棄も、やむ無しとお考えだ」

 陛下も婚約破棄は、やむ無しと考える程か。家族以外の評価を改めて聞いた私は、心のどこかで安堵を感じた。良かった……受け入れない私が悪いとエリック様に言われていたが、他の人が見ても可笑しいのね。

「ロゼッタ、どうしたんだ?」

 いつの間にか考え込んでいたようで、お父様が心配そうに私の顔を覗き込む。慌てて顔を上げた私は、エリック様に言われた事を伝えた。婚約者の素行を受け入れられない私が悪く、自分に非はないと言って去ったのは何時だったかしら?黙って聞いていた二人は次第に目付きが悪くなった。

「君は何も悪くない。ロゼッタ、彼との婚約は、どうしたい?」

 大公様からの問いかけを改めて考える。家族以外から婚約の件を、ハッキリ聞かれたのは、初めてかも知れない。どうしたい?そんな事決まってます。

「婚約破棄をしたいです。エリック様は要りません」

 大公様の目を見てハッキリ答えると、彼は楽しそうに微笑んだ。凄く楽しそう?それとも私、変な事言ったかしら?

「ならば私も手伝おう。クズはさっさと切り捨てた方が良い」

「宜しくお願い致します。自分達では限界を感じていたので、お申し出非常に助かります」

 お父様も大公様も二人とも、どこか黒い笑みを浮かべて握手した。どっちが悪役が分からないお顔ですよ。


二人とも、私は穏便な婚約破棄を希望します。

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