[完結]貴方なんか、要りません

シマ

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静かに過ごしたい

 大公様と約束した時間に間に合う様に帰宅準備をしていると、エリック様と何時も一緒にいる生徒達に声を掛けられた。

「なぁ、エリックが来てないか?」

 馬鹿げた質問をしてくる彼等に苛立ちを隠せない。私は形だけの婚約者だと知っている筈なのに、どうして私に聞くのよ。

「今朝、大公様が訓練をすると仰って、御一緒に学園を出られました」

「大公様が何で?」

 私自身、これ以上、知らないので聞かれても答えられない。疲れた私が大きなため息を吐くと、異変を感じたネロが生徒達に威嚇した。

「何だよ!うるさい!!」

 生徒の一人が怒鳴ると、危険と判断したネロが本来の姿に戻り更に威嚇する。

「ひっ!な、な、何だよコイツ」

 ネロの本来の姿は、犬を私と同じ位の体高たいこうにした様な姿だが爪と牙はかなり大きい。魔獣の口から覗く大きな牙を見て、生徒達が震えていた。

「ロゼッタ、ここに居たんだ」

 私の後ろから聞こえた声に振り向くと、そこには第二王子のキャスバル殿下と相棒のタイニーの姿があった。ネロはタイニーに気付くと、元の姿に戻って私の横につく。私の横まで来た殿下が、唖然としている生徒達に顔だけを向ける。

「彼女と話があるから、もう良いかな?」

 青ざめた顔で頷いた彼等は、逃げる様に何処かへ消えた。騒がしい人達が居なくなって、私はやっと肩の力が抜けた。

「大丈夫?何か疲れてない?」

「ありがとうございました」

 お礼を言うとキリッとしていた表情が、崩れて急に子供っぽくなる。普段は、しっかり者の第二王子が、自分と同じ歳だと改めて気付かされた。

「いや、話があるのは本当の事なんだ。タイニーの事で気になる事があって」

 そう言われて改めて、タイニーに視線を向ける。二本の後ろ足で立つウサギの様な姿に焦げ茶色の毛並みの彼は、強力な蹴りで敵を倒す武闘派な魔獣だ。そんなタイニーに視線を合わすと、彼は困った様に長い耳を横に倒した。

「コイツ、最近、食欲が落ちているんだ」

 体調を確認しようと手を伸ばすと、タイニーは耳を揺らしながら頭を横に振った。

「体調は、良いのね?」

 私の質問に、今度は頭を縦に振った。タイニーが原因では無いなら、相棒の殿下が心配なのかしら?

「殿下ご自身に、悩み事や体調不良は御座いませんか?」

 そう質問しながらタイニーから殿下へ視線を動かすと、彼は真っ赤な顔をしていた。顔が赤いけど、やっぱり体調が悪いの?

「私を心配しているのかい?」

 殿下からの質問に私が頷くと、彼は両手で顔を隠して俯いた。体調じゃないのかしら。触れてほしく無い悩み事かしら?どうしましょう……困ったわ。

「ロゼッタ……」

 困惑していた私は、殿下に名前を呼ばれて彼に視線を向けると、真剣な眼差しを返された。

「婚約破棄が近いと聞いてずっと考えていた……私はロゼッタが好きなんだ」

 突然の告白に頭が真っ白になる。……えっと、あの、その……えぇぇ!?好きって、友人としてじゃないなくて!?混乱で次の言葉を考える事すら出来なくなる。

「今は返事をしないで。君の回りが片付いてからで良い。私との事も考えてみてくれない?」

 只、唖然とする私に困った様な表情で、そう言った殿下はタイニーの頭を撫でると先に教室を出て行った。

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